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製作に関する報告書

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『みなさんがあまりにも魯鈍で、つまり頭がおかしいからやむにやまれず耳の痛い話をしたのではないか』
 
彼らがおかしな具合に足を引っ張る。で、あるから私も腹を立てる。あまりにも稚拙で愚鈍なやり方であるから私も言いたくないことを言う。むしろ私に言わせれば、
 
『そんなことを私にいちいち言わせるな』
 
といったところだったのです。自分たちが原因の種をまいておきながら、いざこちらがそのことを指摘すると気が狂ったように激昂する。他人に対してはいくらでも高みから批判批評する。だが、他人の批判は激昂して許さない。チーフグラフィックの相澤こたろー氏もそうでしたが、柴田氏、ディレクターの松本氏、さらには輿水氏と、メモオフ製作陣は、狭量、余裕の無さ、心の弱さとさらには他者への攻撃性ということで非常に似通っていました。とにかくチーフグラフィックの相澤氏は、
 
『絶対におまえとは会わないと言い張っている』
 
と、そういうことでした。私はチーフグラフィックの相澤氏に不快感を抱くと同時に、FDJの市川氏にも反感を募らせます。結局、FDJの市川氏は私に、自分の部下の力を削がせようとしている。自分は手を汚さずに利益を得ようとしている。私はそのように捉えました。もっとも、地歩を固めるも何も、あと半年で命脈が切れるかもしれない赤字会社でいったい何が地歩であったのか。私はFDJの市川氏ではないのでそのあたりの考えは分かりません。
 
 
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今になって振り返ってみますが、このとき、チーフグラフィックの相澤氏が私との面談を拒否したのは、いくつかある転機のひとつであったと思います。一つ目の転機は、初顔合わせでの柴田氏の社会人とはとても思えぬ態度。それから、名前の変更。そしてチーフディレクターの相澤、あるいは、輿水氏との面談。さらには、相澤氏の面談拒否。ただ。私は、
 
『本当にFDJの市川和弘氏は電話で、私の面談要求をチーフディレクター殿に取り次いだのか』
 
という疑問も今では抱いているのです。本当は、FDJの市川氏は私の面談要求をチーフディレクターに伝えていなかった、伝えたふりをしていただけなのではないか。そんなことも思います。その時はそうは思っていませんでしたがFDJの市川氏は都合の悪い事実は語らないというだけでなく、虚言もまた多い人物でしたから、ですから、嘘をついてその場を適当にごまかしたのかもしれません。だとすれば、真の問題点は、チーフディレクター殿ではなくFDJの市川氏にある、と、そういうことになります。いずれにせよもはや済んだことであり、私には確認のしようもないことですが。
 
とにかく私の5pb.の人々に対する不信感は強まるばかりでした。しかし、その不信を誰にぶつけたら良いのか、はっきりしない。いったい誰が影で何をやっているのか。事実はどこにあって、誰が不正を働いているのか。誰が、作業の妨害をしているのか。何のためにそんなことをするのか。私には彼らの思惑がまったくわかりませんでしたし(今でもよく分かりません。自分が携わる作品の製作を遅らせて彼らは何が得だったんですかね)、彼らの望みが何であるのか、そこがよく分かりませんでした。あるいは、自分たちの権利を横からさらった(といっても、資金を出して、担保を出していたKIDの社長さんはサイバーフロントに入っていたのです)サイバーフロントへの破壊工作がしたいのか、それとも自分たちを拾ってくれた5pb.に悪意があったのか。単に、スタッフ内部の軋轢、FDJの市川氏への当てこすりか。何の意図もないのに妨害活動にいそしむ。しかも自分たちの会社は半年後には破滅しかねないという状況を彼らは知っていたわけで、ですから、考えれば考えるほどに彼らの思考も行動も不自然でした。
 ただいずれにせよ、私としては誰かが責任を取らなければいけないと思っていました。何かあった時には会社を辞めて責任を取る人物。それははっきりさせなければならない。そこで私は、柴田氏に対して、
 
『何かあったら、あなたが会社を辞めて責任を取ってください』
 
というメールを差し上げました。私は、彼が遅延の中心であると疑っていましたし、おそらくそうであったと今では思っています。彼が、煽動をして、FDJの市川氏にサボタージュをはかった。それにグラフィックのチーフである相澤氏たちが乗った。実情はそういうものだったのではないか。ですから、私は、彼をピンポイントで念押ししたのです。
 
『何もかもあなたが悪いのだから、何かあったときには、あなたが何とかしてください』
 
と。そして、このメールは思いもよらず大きな効果を挙げることになりました。柴田氏は年明けに上司であるFDJの市川氏(こういうときだけは上司を頼るということで、柴田太郎氏は卑怯で愚劣でした)をせっついて、私を社に呼び出したのです。私は、すでにこの時、
 
『このメモオフという作品はならない』
 
と思っていました。半分は下りる覚悟を決めたメールであったわけです。そして、会合に出てきた柴田氏(いつものように重役出勤の遅刻でした。自分で呼び出しておいていつでも遅刻。潰れた会社の人間がどれだけ偉大であったのか私には分かりかねますし、私は今に至るまで柴田氏に対しては非常にネガティブな印象しかありません)は唇を震わせて、いつものようにヒステリックに激昂しておりました。
 
『こんなメールを送るのは非常識だ! こっちは責任を取るなんて一言も言っていない!』
 
本当に柴田という男は愚かな男だと思うのです。責任を取ると言った言わないの問題ではない。事実として、彼が足を引っ張ったわけで、それは動かない。妨害をしたのは彼であり、私ではない。何かあれば、それはプロデューサーを僭称する彼にかかってくる。私は外注ですから、極論をすれば5pb.が潰れようが、身売りしようがどうでもいいのです。むしろ、世のため人のためを思えば5pb.という会社は潰れてしまったほうがいい。社長の志倉千代丸にせよFDJの市川和弘にせよ、あるいは柴田太郎、チーフグラフィックの相澤氏や輿水氏も、生かしておいては世の中の害毒にしかならない低劣な人々でしたから。困るのは自分達。倒産消滅リストラの打撃を受けるのは自分たち。むしろそっちのほうが社会のため。
 
『責任は自分たちでとることになるが覚悟はいいのか』
 
私としては相手に対する決意を聞く意味も、メールにはありました。そして、その柴田氏の決意というものが、
 
『俺はやめるなんて言ってないし言わない!』
 
というものでした。また柴田氏は、私の対応に対して、
 
『グラフィッカー相澤や、輿水に対する無礼な態度、侮辱である。許せない。謝罪しろ』
 
と高圧的、かつヒステリックに求めてきました。無礼も何も、先に手を出してきたのは彼らなわけで、ですから、何を謝罪したものか私には理解できませんでした。彼らは私が言った、
 
 『会社を支えきれなかった。権利も守ることが出来なかった。そのようなことではまた会社は潰れる』
 
ということに腹を立てているということでしたが、侮辱も何も、事実を指摘することのどこが侮辱なのか。
 
『KIDは自己破産した。なくなった』
 
作品名:製作に関する報告書 作家名:黄支亮