【ローマ解説】 -『小説 ティベリウス』付録
第二項 ネタにされた人々(2):アウグストゥス
■アウグストゥス ―若作りの食えないジジイ―
Gaius Octavianus(Gaius Julius Caesar Augustus)
BC63-AD14 、在位?BC27-AD14
ガイウス・オクタウィアヌス。後に神君カエサルの養子となり、
最終的にガイウス・ユリウス・カエサル・アウグストゥスを名乗る。
(アウグストゥスは「至尊者」の意味。)
【こんな人】
ローマの歴代皇帝の中でも、初代皇帝アウグストゥスの彫像は群を抜いて多いそうだ。
だが、その像は全て30代の若々しい姿であり、76歳まで生きたにもかかわらず、
40代や50代の彫像は見当たらないらしい(塩野)。
このことから導き出される可能性として、アウグストゥスは、
?若作りである
?不老不死である
?そもそも人間ではなく政治マシンである
など、様々に考えられるが、
塩野氏は、清新さをアピールするためのイメージ戦略であったとする。はてさて。
ローマでは新参者の家に生まれながら、
母方の大叔父カエサルに見出されてその後継者となり、
アントニウスに勝利した後は、40年以上にわたって
最高権力者の座(実質上の皇帝位)にあった。
「ローマの平和」の立役者として皆の尊敬を集めたが、
家庭内では不祥事や不運が続き、最終的には血のつながりのない継子ティベリウスに
帝位を譲るという決断をせざるを得なかった。
【私見・偏見】
わたしは彼らに夢を見せた。豊かさを、繁栄を、平和を―――永遠の都という夢を。
共和政信奉者(リパブリカン)には共和政体復活という夢を。
わたしは中々の劇作家だったとは思わないか。劇作家にして役者であったと (本文より)
真面目で律儀で食えないじーさん。
確かに極めて偉大な人物ではあるのだが(←多分、ティベリウスより(笑))、
ティベリウスサイドから見ると、この人のお陰で苦労したね、と
思わずティベリウスをねぎらいたくなってしまう。
一見気さくだが老獪なアウグストゥスと、
一見複雑骨折してるが実は真っ直ぐな気性のティベリウスの対照は、
実は書いていてとても楽しかった。
この人の内面もちょっと触れてみたい気もしたが、
脇役の扱いである本作では土台無理である。
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家では愛妻リウィアの尻に敷かれ、質素な生活を愛してはいたが、
公的にはケチではなく、自分の強運を告げた占星術に従って都市整備を行い、
実入りは潔く社会に還元した。とはいえ恩着せがましいことに、
それらの出費と業績を「神君アウグストゥスの業績録」として青銅の板に刻んで
墓に飾るよう遺言した。後世へのPRである。
出納簿と日記をこまめにつけていたのであろうか。
あの時代に76歳まで長生きし、後継者ティベリウスに後を託して大往生を遂げた。
「強運の頭脳派アウグストゥス」『古代ローマ散歩』
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作品名:【ローマ解説】 -『小説 ティベリウス』付録 作家名:深川ひろみ