【ローマ解説】 -『小説 ティベリウス』付録
第二項 ネタにされた人々(1):ティベリウス
■ティベリウス ―切れるとオツムが大噴火―
Tiberius Claudius Nero(Tiberius Julius Caesar Augustus)
BC42-AD37、在位AD14-37
ティベリウス・クラウディウス・ネロ。
後にアウグストゥスの養子となり、ティベリウス・ユリウス・カエサルとなる。
【こんな人】
帝政ローマ第2代目皇帝。
初代皇帝アウグストゥスの妻の連れ子で、
曲折の末に彼の後継者となった。
ユリウス・カエサルが企画し、アウグストゥスが構築した帝政ローマを磐石とすることに
生涯を捧げた、と一応は言っておこう。
極めて有能な人物であったことは大抵の人が認めている。
だが塩野氏も述べているごとく、
「性格的な欠陥」が色々とあったために、政治家として不適切な言動も多く、
ローマ市民は77歳のその死を歓呼で迎え、市内を踊りまわったという。
彫刻のコレクターでもあり、旅の途中で強引に召し上げたとか、
公共浴場のものを強引に召し上げたものの、市民に怒られて返したとか、
中々かわいいエピソードも残っている(プリニウス)。
【私見・偏見】
我がローマ、呪わしき偉大なるローマが存在する限り、
わたしは永遠の孤独の底で、捧げられる生贄を食らい、
神々に与えられた岩を押し上げ続けるだろう。
いつか全てが終わり、無へと帰る日を待ち望みながら (本文より)
一応、我が主人公である。
「有能だが不幸」「内気な性格が災いして陰謀ノイローゼになった」
「心休まるときなどあったかと思うほど哀れな人生を送った」等等、
色々な人が色々に書いている。
毀誉褒貶の激しい人だが、深川のイメージは「父性の人」だった。
非常に思慮深く忍耐強い性格ではあるが、
ガマンが限界に来ると誰も予想しなかった形でオツムが大噴火を起こす、という、
取り扱い注意の人でもある。
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(ティベリウスは)布告で一月一日以後(二日以後だと思うが)、
新年のお年玉の交換を止めるよう命じた。
それまでティベリウスは貰った分の4倍のお年玉を、それもじきじき、
自分の手で返していたのだ。しかし元旦に謁見の機会を逸した人が、
一月いっぱい邪魔をするのに業をにやし、もう我慢できなかったのである。
―――スエトニウス『ローマ皇帝伝』
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作品名:【ローマ解説】 -『小説 ティベリウス』付録 作家名:深川ひろみ