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深川ひろみ
深川ひろみ
novelistID. 14507
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【ローマ解説】 -『小説 ティベリウス』付録

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第一項 ローマの名前について



 原稿を読んでくれた友人全員から上がったのが「固有名詞が判りにくい」「頭に入らない」であった。そうだろうと思う。深川もカタカナ名は嫌いだ。しかも、どいつもこいつも同じ名前をしやがって、とボヤきたくもなるのが古代ローマ世界である。(断言していいのか?)
 主人公がティベリウス・クラウディウス・ネロなら、その父もティベリウス・クラウディウス・ネロであり、その甥がティベリウス・クラウディウス・ドゥルースス・ネロ・ゲルマニクス(後の皇帝クラウディウス)、と言われた日には、「ちょっとは命名に頭を使え、古代ローマ人!」と一喝したくなるのが正しい日本人である。
 とはいえ、一喝しようが嘆こうが、それが古代ローマである。次項で人物紹介をする前に、一項を設けてみた。深川の理解も浅いものだが、少しでもご参考になるとよいのだけれど。

          ☆

 手っ取り早く、我らが主人公をネタに、実例でいこう。

1:男性の名前

■基本形:ティベリウス(個人名)・クラウディウス(家門名(氏族名))

 個人名と、その個人が属する氏族の名前。これが基本形になる。ただし、男性に限る。
 そしてこのクラウディウス一族が大変に繁栄し、氏族名だけではくくりが大きすぎる、となったときに、生まれたのが「家名」である。

■発展形?:ティベリウス・クラウディウス・ネロ(家名)

 そんなわけで、ある程度由緒正しい家柄の人間であれば、個人名・家門名・家名の三つを持つ。それほど由緒正しくない家に生まれた人間は個人名と家門名の二つしか持たない。
 そういう経緯なので、添え名的に生まれたと思われる家名は結構いい加減というか、お手軽に付けられた印象のものも多い。「ネロ」→「剛毅な」、「エノバルブス」→「赤毛」、「カエサル」→「象」(諸説あり)など。「剛毅な」クラウディウス、「象の」ユリウス、といった具合に呼び分けたのだろう。
 その他の人名の例を少しだけ挙げれば、ガイウス・ユリウス・カエサル、ルキウス・コルネリウス・スッラ、グナエウス・カルプルニウス・ピソといった具合である。彼らは実在の由緒ある貴族で、全て個人名・家門名・家名の順になる。それに対し、カエサル家に養子に入る前のアウグストゥスはガイウス・オクタウィアヌスといい、二つの名前しか持たなかった。これは「オクタウィウスさんの息子(=オクタウィアヌス)」ないし「オクタウィウスさん家のガイウス君」で十分通用したからである。

 さて、主人公に戻ろう。このティベリウス氏が、養子縁組によってユリウス(家門名)・カエサル(家名)家の養子に入り、更に養父の「アウグストゥス(至尊者)」という尊称(添え名)を受け継いだ場合、フルネームは以下の通りになる。

■発展形?:ティベリウス(個人名)・ユリウス(家門名)・カエサル(家名)・ネロ(元の家名)・クラウディアヌス(元の家門名)・アウグストゥス(尊称)

 別にこれに「イムペラトル(総司令官)」とか、「ディヴィス(神君)」とか、いくら尊称を加えようがそれは自由だ。名前を呼んでいる間に井戸で水死しそうな長さである(笑)

          ☆
  

2:女性の名前

 女性は個人名を持たない。クラウディウス一門に生まれた女は何人いてもクラウディアであり、コルネリウス一門に生まれればコルネリアと呼ばれる。アントニウス家ならアントニア、オクタウィウス家ならオクタウィア。家門名をとるか家名をとるかは特に問題でなかったらしく、マルクス・ウィプサーニウス・アグリッパの娘は、アグリッピナと呼ばれたり、ウィプサーニアと呼ばれたりしている。
 当時の結婚式における誓いの言葉に、「あなたがガイウスのとき、わたしはガイアになります」というのがある。ガイウスは名前の種類で言うと「個人名」だが、実際に個人名から女性名をつけた例は見当たらなかったので、これは単なる象徴的な誓いの言葉なのだろう。ガイアという女性も存在しないが、女性一般を表すときに使われたりはしたようだ。因みに「ガイウス」は日本でいうと「太郎」とでも言うべきだろうか。最も一般的にゴロゴロしていた名前である。