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ツカノアラシ@万恒河沙
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novelistID. 1469
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白雪の夢

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白雪はうっとりした眼差しで立ち上がると、部屋に置かれているグランドピアノの蓋を開け『いつか王子さまが』を歌いだした。この美少女には結構、自己陶酔の気があるらしい。
「そして、その日の為に硝子の柩、紅い毒林檎にコルセット、そして櫛も用意してますの。あと、足りないのは魔女だけですわ」
美少女の天使の笑み。自分で全部小道具を用意して王子様を待っている白雪姫と言うのはそうそういないに違いない。それにしても、彼女はいかにして邪悪な魔女と王子様を調達するつもりなのであろう。その方法を聞いてみたいような気がする。因みに某ネズミの国の魔女の死にざまは、結構間抜けである。やはり、真っ赤に焼けた靴を履いて、死ぬまで踊りつづける末路の方が残酷ではあるが、良いのはないだろうか。
「そりゃ、また凄いな」
篁は一瞬天を仰いで溜息をついた。物凄くやる気のなさそうな声である。足元にはいつの間にか準備された包み。
「そして、いつの日か魔女がやって来て、真っ赤な毒林檎を食べて私は死ぬのです。でも、大丈夫。いつか、美しい王子様のキスで目覚めるのですわ」
白雪はピアノを弾きながらうっとりとした声音で言った。すっかり白昼夢の中に入っているらしい。色々と扱いに困る少女である。
「白雪姫は、柩を持ち替える途中に、家来がコケて柩が揺れたことで喉から林檎の欠片が飛び出て目覚めるんだぜ。キスで起きるのは眠りの森の美女。そういや、御前に前に聞いた話なんだが、元々の話の白雪姫の魔女は実の母親でさ、しかも七人の小人の情婦だったらしいぜ。ただ、あんまり生々しい話だったんで、継母になり七人の小人とは仲良く暮らしましたになったらしいな」
ピアノの音が不協和音を奏でるとぴたと止む。
「この屋敷の部屋の名前は、月曜日から日曜日と付けられていて内装も全て違う。内装は、どこぞのお城や中国風の部屋やらあって、生活をする部屋と言うより、娼館みたいってのがお似合いな部屋だよな。その上、お嬢ちゃん、アンタの振る舞い言葉遺いは、いかにも可憐な少女すぎる。自然にそうなったと言うより、そういう風に育てられたって感じだぜ」
篁の口の端には、いつの間にか手品のように火のついた煙草が銜えられていた。せめて、煙草を吸っても良いかと聞いて貰いたいものである。煙草の白い煙がアールデコの螺旋になってゆらゆらと天井を昇っていく。
「何が仰りたいの?」