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ツカノアラシ@万恒河沙
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白雪の夢

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篁は屋敷に通されるとすぐに風呂を借り着替えを済ませて濡れた躯をさっぱりとしていた。軽く舌打ちし、眉を顰めながら煙草が全て目茶苦茶になっていることを確認して、濡れてしまった煙草の箱をゴミ箱の中に放った。箱は、放物線を描いてゴミ箱の中に見事ストライクする。
「おねえさまは、こんな何もない山奥に何をしに来ましたの?」
白雪は天使のような笑顔を浮かべて無邪気に篁に尋ねる。篁の事を警戒して尋ねたと言うより、純粋に不思議で堪らないと言う様子である。確かに、こんな山奥に灰色のスーツに黒いシャツそして紅いネクタイを締めた姿で来るようなものではない。しかし、篁は澄ましたものだった。
[ヒトを探しているのさ。間抜けな男でね、綺麗な婚約者を置いて消えちまったんだ。煙のようにな]
篁はこんな男だよと言って白雪に写真を見せた。写真の中では健康そうな若い男が笑っていた。この写真は二、三日前に清廉潔白探偵事務所に依頼に来た男の婚約者から渡されたもの。男は少し前にこの森に行くと言ったまま、行方不明になっていた。
「おねえさまの婚約者さま?」
白雪は写真を見ながら小首を傾げる。可愛らしい動作。恐らく、世間一般の普通の男なら彼女に目が釘付けになるだろう。白雪の無邪気すぎる問いに、篁は疲れたような笑みを浮かべ、次の瞬間爆笑をした。屋敷に広がる笑い声。
「いんや、違う。アタシは、その麗しき婚約者から男を探してくれと頼まれた探偵さ。この山の麓の宿までは足取りが取れたんだけど、そこから先がさっぱりさ。で、お嬢ちゃん、この男に見覚えがない?」
篁は奇妙な笑みを浮かべて白雪を見つめた。白雪が何か知っているような口ぶりである。しかし、白雪には思い当たるものが全くないらしい、それこそ驚いたかのように目を見開いて罪のない笑みでゆっくりとした口調で答えた。
「いいえ、知りませんわ。だって、その方は王子様じゃありませんもの」
「……王子様?」
白雪のおかしな答えに、篁は訝しげに眉を顰める。まさか行方不明の男の事を尋ねたら、いきなり王子様ではないから知らないと返答が来るとは誰が予想をするだろうか。何かがおかしかった。
「私は、いつか王子様が迎えに来るのをここでずっと待っているんです。お兄様たちと」