小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ツカノアラシ@万恒河沙
ツカノアラシ@万恒河沙
novelistID. 1469
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

白雪の夢

INDEX|1ページ/4ページ|

次のページ
 
鏡よ鏡、鏡さん。この世で一番美しいのは誰?
歌声が聞こえる。暗くて黒い森の中には、お屋敷が一軒建っている。歌声、美しい歌声がする。銀の糸と金の糸を寄り合わせたような美しいセイレーンの声。そして、森の中は嵐となる。お屋敷の扉を叩く音。どうやら、森の中で嵐に遭難した誰かが避難してきたらしい。どんどん音が激しくなる。雷鳴、雷鳴、雷鳴がする。夕方から降り始めた雨は夜になるにつれて嵐となっていた。
森の中のお菓子の家。
清廉潔白事務所所員である鬼堂篁は、森の中の怪奇でお化け屋敷のようなお屋敷の重厚な扉が開かれたことに安堵をしていた。濡れたネクタイを少し緩める。ネクタイだけではなく、灰色の絵に描いたマフィアみたいな背広もすでにびしょ濡れであった。こんな時に嵐に遭遇するなんてそうそうない経験である。だいたい森へ来るつもりならば、前もって天気予報位見てくるべきである。どうやら、彼女はいい加減なところがあるらしい。
開かれる扉。扉の影から現れたのは、白雪姫の魔女の老婆、もとい振り柚姿の可憐な少女だった。紅い椿をあしらった黒い着物に真紅の半襟と帯がみずみずしく可憐な少女には良く似合っている。それにしても、そうそう人も来ないようなこんな山奥にこんな可憐な少女が住んでいるとは誰が思うだろう。雪のように白い肌、血の如く紅い唇、そして黒檀のように黒い髪の可憐な少女。御前のようだなと篁は少し思う。少女は篁を見ると小首を傾げてにっこりと笑った。
屋敷の中には大きな姿見が一枚。
「それは災難でしたわね」
少女は応接間でお茶の用意をしながらころころと笑って篁に向かって言った。少女の家はなかなか資産家らしく家具から内装にいたるまで豪奢な作りだった。白雪と名秉った少女の話から聞いてみると、この屋敷に少女は七人の兄と住んでいるらしい。しかし、今は兄達は留守と見えこの屋敷には少女しかいないらしい。それにしても、篁が女性とは言え何も疑うこともなしにあっさりと他人を屋敷に入れるとは無邪気と言うか警戒心の欠片もない無防備な少女である。
「全くさ。こちらは降るとは思ってなくて、急に降られたものだから、これ幸いとお屋敷に避難させて貰ったと言うわけ。煙草までびしょ濡れだぜ」