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鋼鉄少女隊  完結

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 麻由にMDMA飲ませたという、金沢の言葉も入っている。これで、金沢と東京愚連隊の薬物取り引きを摘発させる。
 芸能界の薬物汚染はもうどうしようもないくらい広がっている。テレビに出ている有名タレントも歌手もそうとうな人数が手を出しているのだ。テレビ局のディレクターもいる。東京愚連隊から薬物を買ったタレント達が逮捕されることになる。丁度この年末の時期では、テレビ局は既に正月番組を撮りだめしているが、その正月番組が放送できなくなる。薬物タレントが多数出ているからだ。
 放送できなくなると、テレビ局はCMスポンサーである企業から多額の損害賠償を請求される。その負担のために、地上波テレビ局のいくつかが潰れる。
 そうすれば、広告代理店であるTDNも打撃を受けるはずなのだ。 

 興奮が冷めた恵理が不安げに口ごもる。
「雪乃ちゃん。あんた……、気ぃつけんと……」
 雪乃があっさりと口に出す。
「殺されるかもしれないんでしょ。わかってます。どっちが、先に潰れるか、チキンレースってやつですよね。先にビビったほうが負けだから」

 長い一日だった。自分の一生においてこんな長い一日は二回だった。父と母が死んだあの交通事故の起こった日と、今日だった。
 死ぬって意味がまだよくわからないけど、何故か恐いとは思わなかった。今日死ぬのも、五十年後に死ぬのも、そう大して変わらないような感覚があった。
 今日一日の緊張感と集中が、自分の脳を限りなく興奮させていた。まるで、普段使っていないような脳の部分まで覚醒しているような充実感。
 たぶん、自分が死んでも何か残るものがあるので、恐くないという実感があった。何が残るのかは、よくわからない。自分の記憶とか、意識とか思考が残るとは思えなかった。
 でも、何かが残るので、心配ないという楽観的な思いが雪乃を限りなく、脳天気にさせていた。それが爽快だった。


作品名:鋼鉄少女隊  完結 作家名:西表山猫