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鋼鉄少女隊  完結

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 それから彩は思い出したように、憂鬱そうな顔をする。
「私、明日香を殴っちゃったんだね……。私、あの子に謝るよ……。それから、私のこんな心の病のことも打ち明けるよ……」
 雪乃はそのことを危惧する。
「あの……、それはどうかと……。彩ちゃんが柴田さんを殴ろうとしたのを止めて、戸田明日香さんは殴られたことになってますから、戸田さんに遺恨は無いと思います。だから、謝るだけでいいと思います。でも、多重人格については、黙っているほうがいいと思います。理由は二つあります。
 一つ目は、こういう心の病って、当事者や治療者以外の人には、すごく不気味なものというとらえ方をされてると思います。私は、自分が小学校低学年の頃の記憶を作り変えていたりして、自分は病んでたって自覚ありますから、別に平気なんですけどね。戸田さんの場合、ちょっと、負担が重すぎるんじゃないかなって思います。きっと、いろいろと思い悩ますことになると思います。戸田さんは、彩ちゃんの中に何か闇の部分があるって、薄々感づいてはいるようです。でも、その闇を闇のまま受け入れようとしていると思いますので、もし打ち明けるなら、彩ちゃんが歳を取って自伝でも書くような頃に、伝えたらいいことだと思います。
 二つ目は、秘密って、それを知る人が少なければ少ない程、外に漏れないものです。当面はこの事を知るのは、彩ちゃんと私だけにしておくのが得策だと思います。ピュセルのリーダのスキャンダルは絶対伏せておくべきだと思います。私はこのことについて誰にも言いません。墓場まで持って行くつもりです……。だから、彩ちゃんも私がタケルさんのこと好きだったなんて秘密は誰にも言わず、お墓まで持って行って下さいね」

 彩が再び雪乃に抱きつく。
「ありがとう。わかった。そうします。あなたって、ほんと頼りになる人だわ。私、この借り、返そうにも返せないほど大きいよ。だから、これから何でも言ってね。私に出来ることだったら何でもするから」
「じゃあ、一つだけ私の頼み聞いてください。ピュセルのリーダに了解得ないと出来ないことがあるんです」
 彩が訝しそうに雪乃の言葉に耳を澄ます。
「私、ピュセルに入ってから三ヶ月余り、ネットでピュセルのことを調べました。テレビ、雑誌にはピュセルのことがほとんど出てこないから。ネット上はとんでもない嘘もピュセルの反対勢力からのネガティブ工作も混ざってはいますが、業界関係者からのリークと思われる表には出ない真実のような事も書き込まれています。
 私それで、ピュセルがどうして現在の地位まで後退しているのかというのと、今後どういう方向に活動していったらいいのかをまとめました。ほんと、生意気ですけど。だから、それを発表する場を下さい。もちろん、私が考え無くたって、会社の偉い人達がそんなこと考えてるのは承知ですけど、現場からの提案だってあっていいじゃないですか。
 ピュセルのメンバー同士でそれを一緒に考えていく場が欲しいんです。だから、サブリーダとも相談して、そういうミーティングの場を作って欲しいんです」
 彩は雪乃の手を握る。
「わかった。やろう。ピュセルのメンバーはみんな危機感持ってるのよ。ほんとに、次のコンサートは出来るんだろうかとか、どうして自分達はこんなに頑張ってるのにマスコミから無視され続けているのかってね。だから、明日香と相談して、会社のほうにも言っておきます。だから、それやろう! 出来るだけ早くね」
 雪乃は目尻をきっと上げて、不敵な表情をする。
「彩ちゃん! 我が軍の反攻を明日から開始する。それでいいんですよね」
 彩は力強く肯く。


作品名:鋼鉄少女隊  完結 作家名:西表山猫