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四神五獣伝一話 1/2

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 金髪の少女はちょっと残念そうに言った。その様子を見ると相当さまよったようだな。まずい、このままだと、迷子コーナー行きになりかねないので、なんとか出口まで案内してやろう。
「俺はそうだけど、彼女達なら前に来たことがあるよ。」
「彼女達って、どなたですの?」
 金髪の美少女が、頭に「?」と表現しているような表情をしたので、俺は自分の後ろを振り返りかがり達を紹介しようとしたが、後ろに二人の姿が何処にも見当たらなかった。
 そして俺は、まるでさっきまで快晴だった青空が突然黒い曇り空に覆われていくように、顔を曇らせていった。いや、この場合は青ざめていったと、言う方が正しいのかもしれない。
 まずい、冗談抜きにまずい。今日この巨大なショッピングモールに訪れたばかりの二人が、誰もいない無人島に漂流し取り残されてしまったような展開だ。
「もしかして、あなたもお連れの方と離れてしまったのではないのですの?」
 少女が、不安混じりの質問をブツけてきた。その顔は、助けが来ないで何週間も無人島で遭難生活をしている遭難者そのものだ。これ以上彼女を心配させるのは、あまりにも酷だ。幸い俺は、今は一階にいる。うろ覚えではあるが、このまま元来た道をたどって駐車場に行けば問題ないはずだ。
「いや、大丈夫だよ。駐車場に止めてある車で、待ち合わせしているから。よかったら出口まで案内するよ。」
 金髪の少女を安心させようと、何とか気の利いたセリフを言った。
 すると、それを聞いた少女は、さっきまで曇っていた表情が、途端に助けが来たのを見つけた遭難者のように晴れ晴れとした顔に変わった。
「ありがとうございます。助かります。わたくしは、観音和泉と申します。」
 しかし、この嬉しそうな表情。本当にこの店内を歩きまわったんだろうな。それにしても、この子の笑う顔は本当に可愛いらしい。つり目が少しキツイ印象だから、そのギャップも反映されているのだろう。
こうして俺は、迷子になっていた和泉という美少女と一緒に元来た道を思い出しながらショッピングモールの出口へと向かったのだが、それにしても、この子はどうして一人でここまで来ようと思ったのだろう。改めて彼女を見ると、気品がある姿勢をしていてまるでお嬢様のような佇まいをしている。もしかして、彼女も連れと離れて迷子になってしまったのかもしれない。
「こういう時、どこでもすぐに連絡取り合える携帯電話の有難味がわかるな。」
 恥ずかしながら、俺は携帯電話を持っていないのだ。

 一方そのころ。
「どう、かがりちゃん。ライヤ見つかった。」
「ううん。いくら人が多いとはいえ、ちょっと目を離しただけで迷子になるなんて。」
 さっきまで一緒に歩いていたはずの少年とはぐれてしまい、辺りを探しているかがりとリナ。
「本当は、これくらいで迷子になるような子じゃないんだけどなぁ。」
 リナがため息混じりに呟いた。
彼女がそう思うのも無理はない。少年が幼い頃、よく彼の面倒を見ていたが、確かにやんちゃな所はあったけど、決して自分や両親に迷惑をかけるようなことはしなかった。今日みたいな一緒に買物に行った時も、自分から離れないように必死に自分の後を付いてきたのだから。
「もしかして、見知らぬ人に声を掛けられて、そのまま何処かに連れていかれたのかも。」
 急に物騒なことを、クールな顔立ちのままかがりが言い出した。
「こんな公の場で、そんな物騒なことをやる人はまずいないと思うわよ。それにあのライヤが、そう安易に他人に声を掛けられて連れ行かれる筈がないわよ。」
 リナが、さらに少年の事を強調した。それほどライヤの事を心配しているのだ。
「とりあえず、インフォメーションに行こう。高校生になってまで、インフォメーションに行くのは気がひけるけど…」
 このままでは埒があかないので、二人はモールの中央付近にあるインフォメーションに行くことにした。

 インフォメーションに行く途中で、ライヤを見つけられることを願った二人だが、この広い敷地内で見つけることはやはり不可能であった。已む得ず、当の目的地であるインフォメーションに辿り着いたのだが、生憎そこには先客がいた。
「そうですか、わかりました。」
 先客は、受け付けの人に深くお辞儀をすると、曇った表情で深い溜息を漏らしながら、受け付けのカウンターから離れようとした。
「困りましたね。迷ったら、このインフォメーションに行くように言っときましたのに…」
 どうやら、彼女も連れが迷子になって、ここに来た人のようだ。
「しかし、あの人やけに目立つな」
「ええ、目立つわね。」
 二人が、思わず目彼女にを向け感想を漏らすのも無理はない。見た目は、リナと同じ年くらいに見えるが、どこか落ち着いた大人びた雰囲気があり、笑顔が似合いそうな顔立ち、腰まで伸びた水色の髪は、誰もが一度は見入ってしまう美貌を備えていた。
 しかし、二人が目を向けた理由は、彼女がこの人が溢れかえったモール内でも人目を惹く服装をしていたからだ。黒を基調としたロングスカートの半袖のワンピースに白いエプロン。一般で言うメイド服を着ているのだ。
 その為、彼女に目を向けた人間の殆どがコスプレかと思ってしまい、服装のせいでせっかくの彼女の美貌が見事に殺されている。ただ、一部の人間は歓喜と興奮の視線を送っているが…
 ある意味異様な光景に、思わずかがりが声を漏らした。
「本当にいるんだな、メイドって」
 そして、二人はなるべく怪しまれないように、再びメイドに視線をやった。しかし、その視線の先はメイド服越しからでも、その膨らみが分かる豊満な胸にいってしまった。彼女の胸は、同じ同年代の女性の平均サイズと遥かに上回っていた。男性なら間違いなく鼻息を荒げ、女性なら十人に九人は見とれてしまうだろう。
 ただ、この二人の場合は、
 同年代よりプロポーションに自信があるかがりは、
「わ、私より年上だから仕方が無いんだ…」
 同年代と平均的なスタイルのリナは、
「で、でかければ、いいってもんじゃないわ…」
 と、嫉妬と悪態をついていた。
「なんだか、インフォメーションに尋ねる気が失せたな。リナさん、一度車に戻ってみませんか?もしかしたら、ライヤ君真っ直ぐ車に向かったかもしれないし。」
「そうね。迷子になる前に、そろそろ帰ろうって話をしたものね。かがりちゃんの言う通り、ライヤもう私達よりも先に車にいるかもしれないわね。」
 二人は、未だ困惑気味のメイドを尻目にし、自分達が入ってきた入り口に向かうことにした。

 なんとか、自分達が入ってきた入り口、今の俺の「到達地点」であり、又の名を「出口」まで辿り着くことができた。もと来たルートを戻っただけだから、「なんとか」って程でもないが…
 とにかく、出口まで来たんだ。後は和泉を見送って、リナ従姉さんの軽自動車まで行けば、今日一番の冒険は無事に終わる。
 俺は、金髪の少女の方に目をやった。心なしか、彼女はショッピングモールから出られたにも関わらず、辺りをキョロキョロしていた。
「ねぇ、」
 俺が、声をかけようとしたその時、
「あ、ライヤ君!やっと見つかった。」
作品名:四神五獣伝一話 1/2 作家名:トシベー