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四神五獣伝一話 1/2

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 そう思ったら、途端にお腹が空いてきた。空腹感を強調するような腹の音が鳴ってしまったが、それを二人に聞かれないように慌てて自分のお腹を両手で覆った。幸い二人には聞こえていなかったようだ。
「なぁ、大道寺さんは前にここに来たことがあるんだよな。美味しい物がある店とか知らないかな。」
「フフフッ。」
「!?」
 どうしたんだかがりのヤツ。急に不敵な笑みを浮かべて。俺、何かまずいことでも言ってしまったかな。いや、ただ美味しい食べ物がある店を聞いただけだ。何も可笑しなことは言っていない筈だ。
「よく聞いてくれた。実は、私は食べ物には何処の誰よりもこだわりがあるのだ。どの店が何を扱っているかなど、もはや調査済みだ。」
 相変わらず難事件を推理し、解決した探偵のような不敵な笑みを崩さずに言った。しかし、食べ物にはこだわりがあるって、よくテレビで知られざる郷土料理を紹介するグルメリポーターのようだな。
「これから君に私のお勧めするレストランへ連れてってやろう。安心しろ。味は私が保証する。」
 そんなことを言ったかがりは、えっへんと言わんばかりに胸を張って腕を組んだ。さっきまでの銀髪赤眼の見た目にマッチした、落ち着いているというよりクールなイメージとは違い、自信たっぷりの表情を浮かべている。
 俺は、そんな彼女に呆気を取られていたが、ふと思わず視線が胸元にいってしまった。彼女と同年代の娘よりかなり豊かな胸が、腕を組んでいるせいでより強調されている。胸に視線を向けたままだと、かがりに嫌悪感を抱かれるので、表情はあくまで「彼女の食い気に呆気をとられている顔」をするように努めた。
「じゃあ、かがりちゃんのお勧めの料理店に案内してよ。」
「わかった。こっちだ。」
 リナ従姉さんが、タイミング良く切り出してくれた。どうやら、俺がかがりの胸を見ていたことは二人には気づいて…
「少年も思春期だねぇ♪」
「君、嘘つくの下手なタイプだな。」
 いたのか…

 かがりが紹介したレストランは、ショッピングモールで設置している料理店では珍しいロシアの料理を扱っているレストランだった。当然、俺もリナ従姉さんも初めて経験することだ。
「ロシア料理店なんて東京周辺では見かけたけど、神楽町にもあったんだ。」
「私もよくここで買い物はしたけど、このレストランに来たのは初めてね。」
 初めての俺達に、かがりはロシア料理の豆知識を披露した。
「日本には馴染みの無いロシア料理だけど、自然豊かな地域だから大昔から獣肉、鶏肉、魚などが食べられていたんだ。また、大まかに植物やキノコ類、魚などをメインにした精進料理と乳製品や肉をメインにした非精進料理に分類されているんだ。」
「確か、ロシアの料理で有名なのはボルシチとかピロシキあるわね。」
「ボルシチは日本にも馴染み深い料理だけど、もともとはウクライナの郷土料理なんだ。だから、ボルシチという言葉も、もとはウクライナ語で薬草の煮汁を意味するものなんだ。それが、ロシア全土で食べられるようになったから、ロシア料理の代表格になったらしいんだ。」
 まるで、プロの料理人あるいは料理リポーターのように淡々と話すかがり。まさか、彼女がこんなにも食通だとは、とても静かそうな外見からは想像出来ないだろな。
「本当に詳しいな。」
 俺は、驚き呆れるようにかがりの知識に感心した。
「ご注文はお決まりになりましたか。」
 かがりの説明が終わったと同時に、ウエイトレスが注文を取りにきた。俺達は、メニューを開き美味しそうな料理があったので、
「俺は、このビーフストロガノフをお願いします。」
「私は、ボルシチを。」
「じゃあ、私はピロシキを頼もうかしら。」
「はい、ありがとうございます。」
 俺達の注文を受け取ったウエイトレスが厨房の方へ歩いていった。しばらくして、注文した料理がきた。
 リナ従姉さんが注文したピロシキは、楕円形をしたパンに油でほどよく揚げたのか、生地は綺麗なきつね色になっている。
 かがりが注文したボルシチは、玉葱、キャベツ等の野菜や挽肉を煮込んだ具沢山の盛り合わせに甘味と酸味がきいた赤いスープ(かがり曰く、これはスビョークラという赤い野菜が使われているかららしい)がかけられている。
 そして俺が注文したビーフストロガノフは、細切りにした牛肉と玉葱、マッシュルームなどをスメタナ(ロシア風のサワークリーム)とトマトソースでじっくり煮込んで作られている。
「うわー、ウマそう。いただきますッ。」
 見た目に違わぬその絶品に、三人の箸(正確にはスプーン)はスムーズに進んだ。
 そのビーフストロガノフを味わっている時、ふと「アイツ」のことを思い出した。
そういえば、アイツもロシアの養成学校に引き取られたんだよな。今頃どうしているのかな、元気でやっているかな。いや、アイツのことだ元気にやっているに決まっている。大丈夫だ、絶対会おうって約束したんだ。変に心配したら、かえってどやされてしまう。
「ライヤどうしたの?急に食用なくなったの?」
「口に合わなかったか?」
 急に俺の様子が変わったのが分かったのか、二人は心配そうに俺に声を掛けてきた。
「いや、なんでもないよ。口に合わないなんてないよ。こんなに美味しいもん。」
俺は、二人に心配させないようすぐに気持ちを切り替え、ビーフストロガノフを食べ始めた。自分では分からないけど、俺ってそんなに感情が顔に出るのかな。だったら本当に嘘をつくのは下手なんだな。

「ふぅ、満腹だ。」
 ちょっと遅い昼食を食べ終えてロシア料理店から出たが、俺も、かがりも、リナ従姉さんも用は全て済ませたので、そろそろ荘に戻ろうとすることにした。俺達がショッピングモールも出口に向かおうとしたその時だった。
「あのー、お尋ねしたいのですが。ここはショッピングモールの1階のどこでしょうか?」
 ふと、一人の女の子らしい声が弱々しく俺達に声を掛けてきた。振り返ると、確かに白いワンピースを着た女の子だいたが、そのルックスは金髪碧眼でその金髪はツインテールにして双方に束ねており、目はつり目だが青色の瞳はとても澄んでいて神秘的にすら感じる。どこかのファッション誌から抜け出したモデルのような美貌はかがりとはまた違う美少女である。
「どうしたんだ?道に迷ったのか?君、ここに来たの始めて?」
そう疑問に思いながら俺は、その金髪の美少女に事情を尋ねた。
「はい、わたくし最近この町に引っ越してきまして、まだこの町には慣れていなくて、でもここのショッピングモールは可愛い服などを扱っている店舗があると聞いたのでつい立ち寄ってしまったのです。洋服店まで行ったまではよかったのですが、その後店内を色々見て歩く内に気がついたら自分がどこにいるのか分からなくなってしまいました。」
 早速見つけたよ、ここで迷子になる人間を。しかも、初めて来るのに一人で見て歩いていたなんて、よっぽど可愛い服が気になっていたのか、又は恐れを知らぬ勇者なのか。
「君も?実は俺達も最近この町に来たんだ。まぁ俺の場合は里帰りになるけど、今日帰ってきて、ここには今日始めてここに来たんだ。」
「そうでしたの。それじゃどこに何があるかなど分かりませよね。」
作品名:四神五獣伝一話 1/2 作家名:トシベー