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四神五獣伝一話 1/2

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「それじゃ、御一緒させてもらいます。やっぱりモールに行かないと、買いたい物がなかなか見つからないからな。」
 えっ! いくらリナ従姉さんから誘ってきたとはいえ、出会って間もない女の子と一緒にシッピングに出かけるなんて、こんなことって有り?
 既に興奮している気持ちを抑えながら、俺は精一杯言葉を吐いた。
「そ、それは嬉しいな。ち、ちょっと待ってて、い、今支度してくるから。」
俺は、すぐに自分の部屋に戻り、とりあえず財布など必要最低限の持ち物を取りに行った。
「それにしても引っ越して早々、あんな可愛い子に知り合えるなんてラッキーだぜ。」
 決して悪意はないが、どこか邪じみた考えをしている所、他人には絶対見せられないよな。

 かがりは、自分お部屋に戻り、さっき買ってきた買い物袋の中身を冷蔵庫にしまいながら、さっき会ったばかりの男の子のことを考えた。
 どうも気になることがあった。あの子のことは、前にリナから伝えられていたから、ある程度の素性や、何故この神楽荘に泊まるようになるかは知っているが、両親は考古学者兼遺跡発掘屋であるらしい。自分の両親の友達にも遺跡を研究している友人がいるが、遺跡の発掘屋なんてそこら辺にいるわけがない。
もしかして自分の両親の友人とは、あの子の両親のことではないのか。両親から昔のことをよく聞かされていたが、もし自分の考えていることが正しいのであれば…
「あの子が私達の主になる人なのか…」
 少女は、真紅の瞳を瞬きしながら呟いた。もし本当に当たっているのならば自分や、彼がこの神楽町に来た理由が説明つく。まるで、何かに呼び寄せられたように。でも会って早々あんなことを話しても、信じてもらえるだろうか、そもそも変な顔をされないか。
 聞いてみたいことは色々あるが、その気持ちを抑えるように、胸の膨らみをグッと押さえつけた。時間は正午を迎えようとしていた。太陽の日差しが、彼女の銀髪を眩しく反射した。

 これから生活するのに町にどんな店が新しくできたか探索することは重要なことだ。俺は、再びリナ従姉さんの車に乗り、かがりに案内されたショッピングモールへと足を運んだ。
 その間、俺はかがりに彼女が前に暮らしていた所などを質問した。けっ、決してやましい気持ちが無いことを付け加えておく。
「私が前にいた所は、君がいた都会と違ってここより田舎町なんだ。私は、そこの高校に通っていたんだけど、夏休みの間ずっとあそこにいるのも退屈だから、夏休み期間この神楽町で一人暮らしをしようと思ったんだ。」
凄いことだ。いくら長期休暇とはいえよく両親が反対しなかったものだ。
「でも、一人暮らしなら他にも東京とかあったんじゃないか?なんで、わざわざ神楽町に?」
「ここは、海と山に挟まれて自然も多いし住み心地は最高だからね。雑誌でも住んでみたい町ベスト10に入る程だから、ちょっと興味があったんだ。」
 やっぱり、神楽町の外の人間にはそう見えているのか。
確かにこの神楽町は、海もあるし山もある。行楽シーズンになると、毎年多くの観光客が訪れる。最近は観光地にもなっており、かがりも言ったが雑誌やテレビでも「一度は行ってみたい町」「住んでみたい町」というタイトルでも、よく扱われここが特集される。
俺は小さい頃ここで育ったから、ここが観光地の名所であることをあまり感じないが、少なくともかがりや他の人間にはとても魅力的に見えるのであろう。
しかし、
「それなら、大道寺さんがいた所はどうなんだ。ここより田舎なら、もっと自然が多いはずだろう?」
「私の住んでいた所は、確かにここより自然は多いけど、コンビニが数えるくらいしか置いてないんだ。それに、可愛い洋服を扱っている店にはわざわざ電車が一時間に二、三本しか走らないホームを使わなきゃいけないし…」
 俺の質問にかがりは、もじもじしながら答えた。あまり理由を聞かれたくなかったのかな。俺から見れば、彼女は自然も好きだけど、便利な生活やファッションも気に掛ける現代っ子なんだな、という一面を知ることができて嬉しいけどなぁ…

 そうこうしている内に、車は目的地であるショッピングモールに到着した。周りには商店街らしい店も出回っていて意外に発展している。そしてその中央に、ここの目玉となっているであろうショッピングモールが建っていた。
「うーん、昔はもっと八百屋とかが立ち並んでいる商店街が多かったんだがなぁ…」
「でも、思ったよりも賑やかな町並みだったから正直安心でしょ。私も、ここがもしゴーストタウンだったら、これからの生活が不安になっちゃうものね。それより、早くショッピングモールに行こう。」
「幾ら何でもゴーストタウン化するほど、この神楽町は落ちぶれていないわよ!仮にも全国でも名が知れている観光スポットなのよ。」
 俺とかがりの意見に対し、リナ従姉さんは強い口調で反論した。そんな態度をとるのも、彼女も神楽町に愛着を持っているからである。
 ここのショッピングモールは、その名に恥じず、若者向けのお洒落な洋服店や、部屋をちょっとオシャレにしたい人にお勧めしたいインテリアグッズが売っているコーナー、そして今話題となっている映画が何本も上映されている映画館があるなど、とにかく施設全体が広く子供から大人まで楽しめる空間になっていた。
が、初めてここに訪れる人にとっては正に未知のエリア。しかも、幾ら夏休みとはいえ、平日にも関わらず多くのギャラリーで賑わっており、周りから家族連れで親に抱っこされながらはしゃぐ元気な子供の声や、二、三人の友達で訪れ可愛いアクセサリーを見て興奮している女子高生のソプラノ声が聞こえてきた。
余りこのような人通りが多い所に慣れていないあるいは、好まない人にとっては絶対に一人で来てはいけない。確実に迷う。実際、都会暮らしが長く人気の多い場所には慣れている筈の俺自身、かがりやリナ従姉さんがいなかったら迷子コーナー行きになっていたかもしれない。いや、なっていた。
 平日でこの有り様だ。休日や行楽シーズン時には、もっと人混みで賑わうのだろうな。その光景を想像すると、
「す、凄いな。たった10年間でここまで変わるもんなんだな…」
 俺は、10年間という時間の流れに起こった改革に、ただただ呆然とするしかなかった。

 大抵の場所を見て回ったが、さすが神楽町最大規模と言われているだけあって、スーパーとは比べものにならないくらい数多くの店舗が置いてあり、品揃えも極めて良好であり、かがりの買いたかった物も簡単に見つかった。
 とはいえこれほどの規模、とても一日で全て見て回れるレベルではない。
「だいたいは見て回ったかな。ちょっと休まないか?色々見て回りすぎて目が回ってきたよ。」
 やはり初めて来て、これほどの店舗を見たり歩いたりするのは、目と脳に多大な負担を与える。とりあえずどこでもいいので休憩したい。俺は、必死の思いをかがりとリナ従姉さんに伝えた。
「そうだネ、じゃあここで昼食をとろうか。ライヤもかがりちゃんも、まだお昼食べてないでしょう。」
 そういえばリナ従姉さんの言う通り、もうとっくに正午を過ぎたのに俺達は全然昼ご飯を食べていなかった。
作品名:四神五獣伝一話 1/2 作家名:トシベー