あぁ、麗しの君
美しい少女がいた。
歳はちょうど高校生くらい、柔らかな茶色い毛なみをゆるく二つに結んでいる。
少女はとても美しい容姿をしていた。
細々と、繊細な顔立ちだ。
しかしなにより、ガラス玉の様に透き通った瞳がとても印象的だった。
その少女の隣には、もう一人同い年位の少女が腰掛けていた。
肩ぐらいまで内巻きに伸ばした黒髪が若々しく、少し気の強そうな顔をしている。
二人は静かに溜め息をついた。
目の前に広がる果てしない海。
ひらひらと輝く波が眩しい。
二人はいつまでも黙っている。
黒髪の少女が慎重に隣へ首を回した。
彼女の友人は未だに海にみとれているようだった。
黒髪の少女は自分の中に妙な感覚が生まれ始めたことに気付いていた。
それは憎しみに似た感情だった。
しかし、けして憎しみではなかった。
むしろ憐れみという名の耐えがたい欲求に近かった。
黒髪の少女は気付いていた。
この欲望は、決して許してはいけないものだと。
ーああ、それなのに、どうして私は喜んでる?
黒髪の少女は軽く口笛を吹いた。
もう、この衝動は抑えられないのだろう。
少女は夏の終りを感じた。