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さかきち@万恒河沙
さかきち@万恒河沙
novelistID. 1404
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Light And Darkness

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 夜陰、月光に浮かび上がるその姿は白装束。年の頃は、二十歳前後か……随分と若いが、神主姿だ。浅葱の袴が、颶風にあおられてはためいた。
 闇の向こうで、何か恐ろしいコトを悟り、必死に拒絶するものたちが在る。
やめてくれ、と哀願するこえが在る。
「手間、とらせてくれましたね」
 それを踏み躙るようにして、いまひとり青年が現れた。そいつらの背後から。
奇妙なことに、少年とは対称に社会人然としたダークスーツ姿である。
 青年の名は、大伴義貴――。
 ふたりの男にはさまれて、そいつらは悲鳴のような金切り声を上げた。耳障りな絶叫だった。正面に立つ義貴が、ふと唇に淡い笑みを浮かべる。
「あなたがたを責めているわけではないのですがね。もう観念してくれませんか」
 そのまなざしは慈悲深くて、ひどく穏やかだったが、そいつらにしてみれば絶対的な敗北を悟らざるを得なかった。しかし悟ることと受け入れることは違う。そいつらはそれが目の前につきつけられたいまでも、まだ抵抗を試みようとしていた。
 義貴は、諭すかのように、それらに真実を告げる。受け入れることを拒絶し続けた真実を。
「……あなたたちはもう……『死』を迎えたはずです」
 それを聞くや、また凄まじい絶叫を上げ、暴れまくる。
 ――イヤダイヤダイヤダ! イヤダァァ!
 ひとつ、ではなく。たくさんの『何か』が、口々に哭き、喚き、これから襲ってくる恐怖にあらがおうとしていた。消滅の恐怖に必死で抵抗していた。
 そんな悲痛な声も聞かぬげに、悠弥は厳然といい放つ。こちらの声には慈悲もなにもない。
「んだよ。とことん間抜けな雑魚だな」
 と、そう詰る。
 哀れむような瞳で。
「救済がほしくないのかよ。間抜けだよ。わざわざおれがくれてやるっていってんだろ」
「……眠りに就いてもらいますよ」
 ――オノレ! オノレ! コノ外道ノモノドモガ!
 幾つもの恨みがましい声が、響きあった。
 ――外道! 外道!
「何とでもいうがいい。罪人風情が……よほど『根の国』がお好きとみえる」
「……あなたたちは……黄泉路へむかわなくてはなりません」
 そいつは、在らんかぎりの罵倒の言葉を吐いた。吐いて吐いて、吐き尽くして吐き出すものがなくなるまで。ふたりは、それを穏やかに受け止める。