小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

南の島の星降りて

INDEX|6ページ/26ページ|

次のページ前のページ
 

車を停めて海まで


車をレストランの駐車場に入れると、隼人さんはいなかったけど、あの麗華さんが友達の女のこと丁度、車をとめたところだった。
「おはよう劉ちゃん。早いね、今日は」
「今日はこいつの車に同乗してきたんで・・」
さすが三つも年上だと子供扱いかと、思った。
「おはようございます。麗華さん」
大場は、車を降りながら、めっちゃ丁寧だった。
「麗華さん。おはようございます。ここでいいですか、車止める場所?」
夏樹もちょこんと頭を下げて聞いている。
「どこでもいいのよ、夜にしかここの駐車場はいっぱいにならないから」
昼間も開いている店らしかったが、夜のお客がほとんどの店らしかった。

「夏樹ちゃんも、店の中で着替える?劉ちゃんとかは、車で着替えるんでしょ?」
店の鍵を手にかざして麗華さんが聞いてきた。
「わたしも、車でいいです。慣れてますから」
夏樹がボードを下ろしながら答えている。
「大丈夫?大場が覗くわよーきっと」
大場のほうを友達と一緒に見て笑っていた。
「あー、ひどいっすよ、俺じゃないですよ。柏倉っすよ」
「劉ちゃんは、なんだかしらないけど女の子に興味ないみたいだから、平気よーあぶないのはあんたよ」
もう、言いながらお店のドアの鍵をまわしているようだった。
「なんか、俺、ひどいいわれような気が・・」
大場は独り言のようにちっちゃな声だった。

「先に夏樹が着替えなよ。俺と大場はあっちに行ってるから」
「うん。じゃお先」
「夏樹、カーテンちゃんとしめてくれる?あとで、大場が覗いてたって言われたらたまんねーから」
気にしなそうで、こんなことは気にするところが大場らしかった。

俺たちは、ちょっと、離れて海を見下ろしていた。もう、10人ぐらいがボードに乗って波をおいかけているようだった。

しばらくするとドアを開ける音が聞こえた
振り返ると青いノースリーブ短パンウエットスーツだけの夏樹がいた。
海で見るのは全然恥ずかしくないんだけど、駐車場で見るのはなんか照れた。
「やっぱ、タイプ俺」
大場が地面をみて、俺にほんとに小さくつぶやいた。
「やめとけ。もめるぞ」
俺も地面を見て、もっとちいさくつぶやいた。
「先に下りてるね」
夏樹はボードを抱えてもう、歩き出していた。
「あ、先に行ってていいよー」
今度はちゃんと夏樹の顔を見て大場がおおきな声で答えていた。

狭い車の中だったので、大場が先に着替えて、夏樹を追いかけるように、「お先に」ってさっさと海に降りていった。
後から車を出ると目の前に麗華さんが一人で立っていた。
「ちょっとだけ聞いていい?」
「え、なんですか?」
「夏樹ってほんとは劉ちゃんのこと好きなんじゃないの?」
びっくりした。
「何、変なこと言ってるんですか・・隼人さんと付き合ってるんじゃないんですか夏樹って?俺まともにしゃべったの今日で2回目ですよ・・夏樹とは」
「隼人が口説いたらしいから夏樹のこと、断れなかったのかなって思っててさ・・・・ま、いいや。たまに一緒にくる女のこが彼女なんでしょ、劉ちゃんの?」
「そうですよ、1回紹介しましたよ麗華さんには、それより、俺、隼人さんの彼女は今日まで麗華さんだとずっと思ってましたから」
「昔の話よ、それは。別れちゃったから1年も前に」
「でも、仲いいじゃないっすか、いまでも」
「そりゃぁ。2年もずっと付き合ってたしね。仕方ないわよ」
「へーそんなもんですか・・・・・あのー・・・すごい変な事聞きますけど今は麗華さんの彼氏って誰ですか?俺、大場みたいに毎日はここに通ってないからわかんないこと多くて」
ボードを抱えて綺麗な麗華さんが笑っていた。
「今、誰とも付き合ってないのよ。どう、彼女と別れて私ってのは・・」
からかわれてるのはわかったけど、顔が赤くなっていた。
「かわいいのね、劉って」
マジあせった。

俺と麗華さんは一緒に海に出る階段を降りていた。
稲村ガ崎は穏やかな夏の波だった。

作品名:南の島の星降りて 作家名:森脇劉生