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南の島の星降りて

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長谷寺を抜けて


大場のかっとび車は、もう鎌倉の山から下って海を目指していた。

「大場君と柏倉君て大学がいっしょで、友達なわけ?」
さすがに下り坂になったので、静かな運転になった大場が前を向いたまま
「いや、違うよー。劉がさ、海岸で俺をナンパしたのよ」
相変わらずバカな事を言う奴だが半分は当たっていた。
「なに、それー」
ちょっと驚きながら夏樹は俺の顔をマジマジみているようだった。
「いや、あのさ、4月に稲村ガ崎に彼女と遊びにきたのよ。ほいで、俺もサーフィンやっかなぁっと思ってたんだけど、全然ボードとかどこで買ったらいいかわかんなくてさ、そしたら、こいつがヘタッピなんだけどさ、なんか一生懸命やってるから、初心者に聞くのが1番かな・・って思ってこいつに聞いたわけさ。いろいろと。それからの付き合いだなぁ」
「だから、俺が先生っちゅうわけだ」
大場はめっちゃうれしそうに笑っていた。
「へー、そうなんだ、で、ナンパってことか」
「そそ、ナンパじゃんねー」
相変わらずうれしそうだった。
「夏樹は沖縄にいた時からしてるんでしょ?」
大場が聞くと
「そんなにはやってないんだけどね。ま、遊び程度で、ちょこっとって感じ」
遊び程度って感じでも、俺や大場よりぜんぜんうまかったし、すんげーかっこいいから海で夏樹は目立っていた。
「遊び程度であれじゃぁ、毎日のように通ってる俺ってカッコワルーじゃん」
大場はほとんど毎日、海に通っているらしかった。大学の授業に車で海からもどっては、ずっと教室で寝て過ごすのが日課らしかった。そのために大学の近くに駐車場まで借りていた。

「大場君ってどれくらいやってるの?」
「俺は大学試験終わってからだから、4ヶ月かなぁ。あ、夏樹ちゃん俺を呼ぶ時は大樹ってよんでよ。大場ぁああああ・・って海で叫ばれるの好きじゃないのよ」
「え、どっちでもいいと思うけど」
「どっちでも、いいなら、ヒロキーって呼んでね。柏倉は柏倉でいいから」
「劉はどっちかと言うとリューのが呼びやすいから・・」
俺は隣で笑っていた。
「どっちでもいいじゃん。大場!」
「あ、お前が俺のことを大場、大場、っ海て呼ぶからさ、なんかみんな俺のこと大場ぁああ・・って呼ぶのよ。お前のせいだかんな!」
なんで、そんなにこだわるのか呆れていた。

車は長谷寺を過ぎてもうすぐ海岸につきそうだった。

「車はいつものとこか?」
聞くと、大場は
「なんか、隼人さんが、バイト先のレストランに停めていいってさ、夏樹を送ってきた時は・・」
「へーそうなんだ」
隼人さんは海の側にあるレストランで夜働いているらしかった。
俺は一度も入ったことなかったけど、高そうな店だった。
「俺、1回もあそこ入ったことないや」
「あ、俺も」
大場も俺にも縁のなさそうなレストランに見えた。
「夏樹は食べたことあるんでしょ?」
大場が聞くと、
「あるよ、お肉おごってもらった。おいしいよーあそこ」

俺も大場も、同じことを考えていた。
「車は他に停めるから肉食わせてください・・って言っといて」
ほぼ同じタイミングで俺たちは同じ言葉をを彼女に言っていた。
「自分でいいなよー」
赤いハイビスカスは笑っていた。

海岸が目の前に広がった
由比ガ浜でもなく、片瀬東海岸でもない、俺たちの海だった。
なぜか、この海岸が好きだった。

作品名:南の島の星降りて 作家名:森脇劉生