南の島の星降りて
インターで朝食
横浜ｲﾝﾀｰに車を止めて、朝ごはんにすることにした。
ま、なんか腹にはいりゃあそれでよかったんだけど。
「ね、ホットドッグ本当に食べる？」
ﾏｼﾞで夏樹が聞いてきた。
「あ、俺、うどん食うから、それはｵﾐﾔでお願いします」
「そっか、じゃぁ、後で買っとくね。私、おにぎり持ってきたから、ここで食べるから、行って来ていいよ」
俺たちはうなずいて、ｲﾝﾀｰの売店に向かっていた。
「大場さ、夏樹と仲いいの？」
ちょっと、疑問だったので聞いてみた。
「先週末にさ、海上がって、ちょこっと話したら、お前んちの家の近くだって聞いたからさ、それだけよ。で、ほら、隼人さんが、乗っけてやってくれよって言うから。それでよ」
「ふーん」
俺たちは立ち食いうどんを食いながら話してた。
「あのさ、隼人さんの彼女だって言ったよね、さっき夏樹のこと？」
「言った、言った」
「隼人さんの彼女って、いつも一緒にいる「麗華さん」じゃないの？」
そう、ずっと思っていた。
「ああ、麗華さんはさ、昔の彼女よ。1年前までは付き合ってたらしいぞ。今は別れてるだってさ」
「えぇ。だってさ、いっつも一緒にいるじゃんよ」
「そこが、わかんないとこよ俺も。ま、いろいろあるんじゃねーのか」
確かに、麗華さん以外にも隼人さんには取り巻きがいっぱいいたけど、なんかそれとは違うような気がしていた。
1回だけしか、麗華さんとは話したことがなかったけど、それも隼人さんが紹介してくれた時で、どう見たって彼女って感じだった。
「で、夏樹は、麗華さんが元彼女って知ってるの？」
「どうだろう。知ってるんじゃないの・・」
「へーそうかねー。 で、大場さ、絶対狙ってるだろ、あの子のこと」
「狙ってるって言うか、ま、隼人さんとうまくいかなかったら、俺ってどうよってな感じかな」
「なんか、姑息だわ、お前」
「くそー そんな言い方されるとは・・」
うどんのツユを口からだしそうな勢いで、怒っていた。
「俺、先に車戻るぞ。おまえ、食うのいっつも遅いわ」
「ああ、俺、猫舌なだけだってば」
聞きながら、俺はﾀﾊﾞｺに火をつけて車に戻ることにした。
ﾄﾞｱをあけると、後ろの席に座って、まだ、おにぎりとお茶をほうばっている夏樹がいた。
「もう、食べ終わっちゃったの？」
「うん」
「じゃ、ﾎｯﾄﾄﾞｯｸﾞ買ってこなきゃ」
「いいよ、大場がたぶん買ってくるから。ゆっくり食べな」
「ありがと」
「聞いていい？あのさ、夏樹って苗字なんだっけ？前に聞いてたらわるいんだけど」
「まだ、言ってないよ。神谷、神谷夏樹」
沖縄の子だからもっと変った苗字なのかと思っていた。ちょっと、不思議だった。
「うわー、なんか暑くなりそうだなー」
大場が手にﾎｯﾄﾄﾞｯｸﾞとお茶を抱えて戻ってきた。
「な、買ってきただろ、こいつ」
「あーごめんなさい」
「いい、いい、俺ってそういう人よ。劉は金払え。夏樹のは俺のおごりよ。ほいじゃ、俺の稲村ガ崎が早くおいでーって呼んでるから、飛ばしますよー」
言いながらもう、アクセルをおもいっきり踏み込んでいた。
後部座席で、俺と夏樹は大波にあったように体が揺れていた。
夏樹の手が俺の腕をしっかりと握っていた。
大場にヤキモチ焼かれたらどうしようって思っていた。ま、飛ばしてるこいつが悪いんだけど。
車は鎌倉街道を爆走していた。
海の匂いが、開けた窓から風となって届いてくるようだった。