綿津見國奇譚
「こんなもの!」
と石を窓から投げ捨て、寝台から飛び出すと外へ走り出した。
「またニシキギが脱走した!」
声を聞きつけて、みんなが追いかけようとした時、ヒムカが言った。
「ぼくたちが行きます。勇者の仲間みんなが」
「おい、なんでぼくまで」
グレンは不平を言ったが、
「いいじゃん。行こうよ、グレン」
と、ホムラがグレンを促した。
「そうだよ。今度こそ、仲間になれる」
シタダミの言葉に、サクヤもマツリカもうなずいた。
ニシキギは樹海の方へは行かず、浜辺へと下りていき、砂浜を走るうちに砂に足をとられてころんでしまった。そして砂をかきむしって大声で泣くのだった。
「うううっ うわああ」
「ピイー」
空高く響く鳥の声がした。ニシキギが見上げると、一羽の白い鳥がこちらの方へ降りてくる。
「カササギ? おまえ、カササギか?」
白い鳥はニシキギの近くに舞い降りてくると、爪でつかんでいた物をぽとりと落とした。
「これ、聖霊石じゃないか」
さきほど自分が投げ捨てた琥珀だった。
ニシキギが空を見上げると、鳥は「ついてこい」とでも言うように、今しがた、ニシキギが走ってきたほうへ、ゆっくりと飛び始めた。ニシキギは、まるで操られるようにふらふらと鳥の後をついていった。
すると、追いかけてきた勇者の仲間たちと出会った。
もはや言葉はいらなかった。手を握り、肩を叩いて六人はニシキギを受け入れた。こうして、やっと勇者は七人そろったのだった。