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陰陽戦記TAKERU 前編

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「これは……」
 途端ポケットの中から麒麟の宝玉が飛び出すと辺りは眩しい光に包まれた。
 そしてずっと後ろの砕かれた刀身が粒子状に分解、そして鬼斬り丸の方も粒子状になると俺の回りに集まった。
 そしてやられた傷は完全に塞がり手や足に触れると金色の鎧となった。
「これは……?」
 俺は自分の姿を見回した。
 俺は自分の姿は見えないが触れた感じで大体分かる、一角の龍の顔にも似た兜に背中には脊髄越しに白い体毛が生えた。鱗状の胸当てと腰当て、先端がそりあがった肩に幾つもの金属が重なったような篭手と具足だった。
「そ、その姿は……」
 美和さんやみんなも驚いている。
 正直俺も驚いているとどこからとも無く声が聞えてきた。
『武、武よ……』
「だ、誰だ?」
 すると胸の中央に嵌まっている麒麟の宝玉がほのかに輝いていた。
『俺の名は麒麟』
 麒麟? こいつが?
『俺は君をずっと見ていた。そしてついに魂の共鳴をする事が出来た』
「魂の共鳴?」
 実は麒麟も青龍と同じく試練を与えていた問い言う、それは勇気を見せる物だった。
『君は友と戦う事に臆病になっていた。友人が敵となり戦う事に迷いが生じていた』
 それは分かる、
 ここに来る前に美和さんに戦うと約束したが正直俺の中じゃ答えがまとまってなかった。本当に学と戦えるのか、本当に勝てるのかと…… 鬼斬り丸が折れた事がその証拠だ。
『だが君は傷つきながらも全てを守ろうと立ち上がり迷いが消えた。その勇気は本物だ。君ならば暗黒天帝を倒せるかもしれない』
「しれないかじゃねぇよ……」
 俺は学を見る、
 学はいきなりの出来事に状況が整理できてないのか戸惑っている。だが俺は右手を握り締めて大きく叫んだ。
「暗黒天帝は必ず倒す、それだけだ!」
 その言葉を聞いた学は口の端を上げた。
「何を言うかと思えば…… 無理な事は口にしない方が良いよ、僕に負けたくせに」
 しかし俺は学ぶの言葉に耳を傾けなかった。
「うるせぇよっ」
「なっ?」
 学は一瞬俺の動きが見えなかったらしい、いきなり自分の前に現れると固まって動かなくなった。その顔面に俺は一撃おみまいした。
「ぐはぁ!」
 学はかなりの距離を飛ばされてアスファルトを砕いた。
 土煙が舞う中、学は膝に力を入れて立ち上がる。
「き、貴様ぁ……」
 学の顔から余裕が消える。
 すると俺の隣りに居る加奈葉が言って来た。
「武……」
「ん?」
「学を助けてあげて……」
 加奈葉は本気で俺に願っていた。
 こんな加奈葉見たのは初めてだった。
 一方学は怒りに狂っていて今にも飛び掛りそうだった。
「ああ、初めからそのつもりだからな」
 俺が身構えると学は右手の剣を強く握りしめて叫んだ。
「舐めるなぁぁぁっ!」
 黒い剣を振るうと俺に向かって飛び込んできた。しかし俺は学の剣を左手で受け止めた。
「何っ?」
 学は俺の手から剣を引き戻そうとするが刀身はビクともしていない、俺はそのまま腹に膝を入れると学の体がくの字になって手から力が抜ける、俺は剣を遠くに放り投げる。
「武…… 貴様……」
 学は腹を抱えながら後退する。
「もう止めろ学、お前は俺に勝てない」
「はぁ? 何を言ってるんだい? ついさっき僕に負けた負け犬の癖に……」
「さっきはな…… だけど今は違う!」
「くっ、うおおーーーっ!」
 学は拳を握り締めて攻撃してきた。
 俺も身構えて学の攻撃を受ける。学のパンチやキックは凄まじい、暗黒天帝にパワーアップしてもらっているんだろうな。
「無駄だっ!」
 俺の手が学の拳を受け止めると俺はそれを払って軽くジャンプ、回し蹴りを放った。
「ぐうぅっ!」
 再び倒れる学、だがすぐに立ち上がり俺を攻撃する。
 しかし俺は紙一重で交わし続ける。
「まだ分からねぇのか? お前じゃ俺には勝てねぇよ」
「うるさいっ! うるさい、うるさい、うるさい、うるさいぃぃーーっ!」
 もう言葉までなくしたか、こうなったら!
「うらあああっ!」
 俺のストレートパンチが炸裂、学が怯むと今度は水月にニーキック、そしてアッパーカットが炸裂、学の鎧に亀裂が入って尻餅をついた。
「ど、どうしてだ? 何で…… 暗黒天帝様の力を貰ったのに……」
「それが敗因だよ。」
「何っ?」
 頭の良いこいつだから分かってると思う、
 学はただ他人のフンドシで相撲を取ってただけだ。
 暗黒天帝に協力して悪事を働いたのは死んだ母親を生き返らせる為でも親父さんが憎かった訳でもない、ただ現実を受け入れられなかった自分を誤魔化す為だった。
 やり場の無い怒りを振りまいて暗黒天帝の力にぶら下がっているだけだ。俺がそれを言うと……
「ち、違うっ! みんな世界が悪いんだ。人の事なんてどうとも思わないこんな世界が……」
「そして都合の悪い事は全部自分以外のせいか…… 哀れな野郎だな」
「だ、黙れぇっ!」
 完全に頭に血が上った。
 学は右手を上げると自分の剣がフワリと宙に浮かび、学目掛けて飛んできた。
「僕はこの世界を立て直すんだ…… 母さんや加奈葉ちゃんと一緒にっ!」
「世界はお前が言ってるほど汚れてなんかない、汚れてんのはお前の心だ!」
 俺が胸に手を当てると麒麟の宝玉から光が溢れて鬼斬り丸の鍔から下が出現した。
 刀身は丸々なくなっているが俺が柄を握って強く振ると鍔元に光が集まって巨大な刃になった。
 学の黒い剣にも禍々しい黒いオーラが集まる。
「うおおおおっ!」
 再び俺達の剣が交わる、さっきよりも凄まじいエネルギーがぶつかり火花を散らした。そして周囲が閃光に包まれ大爆発を起こした。