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陰陽戦記TAKERU 前編

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 このままじゃ終われなかった。
 胸張って言えるほどの事じゃないが俺は負ける訳には行かなかった。
「待ち……やがれ!」
「武っ!」
 加奈葉と学が俺を見る。
「まだ生きてたのか?」
「これくらいじゃ死ねねぇよ、約束果たすまではな!」
「約束?」
「忘れたのか? 俺はみんなを守るヒーローになるってな!」
「はぁ?」
 学は眉間に皺を寄せてしばらく黙るがやがて大声を上げて笑い出した。
「ああ、確かそんな事言ってたねぇ…… 思い出したよ、でも君はこれでも守ってるって言うのかい?」
 加奈葉が攫われて美和さん達もボロボロ、確かに守ってるって状況じゃねぇよな、
 まして学がこんな風になっちまったのは暗黒天帝が原因じゃねぇ、一番近くに居ながらこいつの苦しみに気付いてやれなかった俺のせいだ。
「まだ終わっちゃいねぇよ、諦めるなら全てが終わってからでも遅くは無いっ!」
「終わりだよ、暗黒天帝様はもうすぐ復活する。そしてこの世界は美しい世界に生まれ変わ……」
「そんな訳あるかっ!」
 俺は日記を見た事を話た。
 あのタイムマシンの事だ。
「そうだよ、暗黒天帝様は自分の世界に帰ろうとしてるんだ。そして馬鹿な人間達をリセットして……」
「そんな事したらお前も消えるんだぞ!」
「何言ってんだ、そんなはず……」
「お前だって人間だ。人間の中にはお前の祖先だっている、そんな事になればどうなるか分かるだろ!」
「はっ!」
 どうやら分かったみてぇだな、過去の人間を殺せば未来の人間は消えていなくなる、邪魔な人間を滅ぼしてこれから起こる歴史も全部覚えていればやりたい放題に世界を作り変える事が出来る。
「ま、まさか…… そんな事が……」
 学も騙されてたんだ。
 元の世界に帰ればもう用済み、後は未来の情報を使えばやりたい放題できるって訳だ。
「だ、騙されるか! そう言って僕を嵌めようっていうんだろ? 古いんだよ!」
「いい加減に気付きやがれ! 加奈葉の言う通り、お前は奴に利用してるだけだ!」
「黙れぇーっ!」
 学は大きく剣を振り降ろすと炎の斬撃が放たれて俺は火柱に包まれた。
「うわーーーっ!」
 マジで体が焼ける。だけどこんなモン我慢できないほどじゃ無い!
 俺は両膝に力を込めて立ち上がる。そしてゆっくりと一歩づつ踏み出した。
「負けねぇぞ……」 
「ヒッ!」
 学は恐れて後ずさりをする、
 世界を守るとか暗黒天帝が許せねぇとかどうでもいい、こいつが悪に成り下がったなら俺が目を覚まさせる、倒れてる仲間がいるなら俺が盾になる、ただそれだけだ。
「負けてたまるかっ!」
 俺が天に向かって叫ぶと俺のポケットから眩い光が溢れ出した。
 途端炎の柱はチリジリに四散する。