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陰陽戦記TAKERU 前編

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 爆煙が晴れて静寂が訪れる、そして決着はついた。
「がは……」
 黒い剣と鎧が粉々に砕け散ると学の膝が曲がってその場に倒れた。
「学っ!」
 加奈葉が近づいてくる。
 そして学の上半身を抱き上げる。
「加奈葉……ちゃん……」
「……よかった、本当に……」
 俺はため息を零した。
「お兄ちゃん」
 香穂ちゃん達も近づいてくる。皆無事みたいだな。
「勝ったな」
「ええ、でも……」
 俺はその場にしゃがんで学に言った。
「……くっ」
 学は俺から顔を背けた。
「学、これは俺の感なんだけどよ…… お前の親父さん、分かってたんじゃないのか?」 
「えっ?」
「お前の親父さんはお前とお袋さんを愛してたんじゃないのか? ただ愛し方が分からなかったんじゃないのか?」
「そんな事あるか! 父さんは俺と母さんが邪魔で……」
「もし、お前の親父さんも同じ環境で育ってたら?」
 学の親父さんも子供の頃に親からスパルタで勉強させられて育った。
 その為に結婚して生まれた学にもそれと同じやり方でしか接する事が出来なかった……
「早い話不器用だったんだよ? 学者として成功するのがお前とお前のお袋さんへのせめてもの愛情だった……」
 まぁ本当にただの推測だ。
 裏付ける証拠も何も無い、どう考えるかは学次第だ。
「……僕は暗黒天帝に2つの望みを頼んだ。1つは母さんを生き返らせてもらう事…… そしてもう1つは……」
 学は加奈葉を見ると肩の力を抜いた。
「加奈葉ちゃん、僕は……君が……」
 するとその時だ。学が何かに気付いた。
「危ないっ!」
 学はいきなり俺を突き飛ばした。
 途端空から雷撃の様な物が放たれると学を直撃した。
「うわああああっ!」
「学―っ!」
 学が庇ってくれなかったら間違いなく俺に直撃してただろう。
 学は体を痙攣させながらビデオのスローモーションのように倒れた。
「ま、まな……ぶっ? 学っ!」
「いやああっ! 学、学っ!」
「一体誰が……」
『チッ、外したか……』
 途端俺達の耳に不気味な声が聞えた。
 この世の生物の声とも思えない薄気味悪い声だった。
 そして振り向くとそれはいた。
「なっ……」
 俺達の背後に黒い炎のような物が揺らめき、中には物凄い形相の顔が浮かんでいた。
「てめぇは…… 美和さん?」
 美和さんの肩が震えていた。
 その奇麗な顔から笑みが消えて今まで見た事も無い顔になっていた。
 そして口紅をつけてないのに真っ赤で小さな唇が開いた。
「あ、暗黒……天帝……」
 その言葉を聞いた時、皆顔を強張らせて息を飲んだ。ついに全ての元凶、倒すべき本当の敵がついに姿を現したのだった。