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陰陽戦記TAKERU 前編

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 砕かれた壁から美和達が出てくるとその目に糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちる武が目に映った。
「武様ぁーっ!」
「きゃああーーっ!」
「ん?」
 騒ぎに目線を向けるとそこには加奈葉達がいた。
「何だ、加奈葉ちゃん出てきてたのか」
 学が加奈葉達に向かって歩き出す。すると拓朗と香穂は前に出て学を攻撃する。
「このっ!」
「えいっ!」
 竜巻と氷塊が放たれるが全く通じなかった。すると今度は美和と辰弥も攻撃に参加する。
「貴様っ!」
「滅っ!」
 辰弥は青龍の銃をハンドガンからライフルに変えると学に向かって銃口を向けて引き金を引いた。美和も渾身の力で光の矢を射るが二人の攻撃も黒い鎧には無に等しかった。
「どけっ!」
 学が剣を横薙ぎに払うと物凄い突風が吹き荒れて4人を吹き飛ばした。4人は建物の壁や地面に叩きつけられてその場に崩れ落ちる。
「みんなっ! あっ?」
 加奈葉は仲間を心配し近寄ろうとするがその細い腕を学がつかんだ。
「どこに行く気だい?」
「離して、本当にどうしちゃったのよ?」
「何でだい?」
「みんなに酷い事して、傷つけて、それで学は平気なの?」
「何言ってるんだよ、そんなの他の人間だってそうだろ。誰かが困ってるのに助けようともしないんだから」
「だからって……」
「それに彼等は攻撃してきたんだから攻撃し返しても良いんだよ。どうせ死んだ所で生き返るんだから」
「馬鹿っ!」
「なっ……」
 加奈葉が叫ぶと学はたじろいだ。
 その瞳から溢れた涙が頬を伝わり滴り落ちる。
「何が死んだ所で生き返るよ、一度死んだ人は返ってこないのよっ!」
「言ってる意味が分からない、実際母さんだって生き返って……」
「あれのどこがアンタのお母さんよ?」
「あれって……」
 加奈葉が見たのは人の形をしていない腐乱死体だった。
 それは学が母の墓を掘り起こし手に入れた遺骨に病院から盗んできた死体を暗黒天帝が掛け合わせただけの物だった。
「そりゃまだあんな姿だけど、時間が経てば元に戻るんだ。暗黒天帝様はそう言って……」
「そんな訳ない! 一度失った命はどんな力を使ったって元に戻らない、そんなの当たり前じゃ無い!」
「……」
 学の呼吸が速くなり目が泳ぐ、すると加奈葉は学の肩を?んで揺する。
「目を覚まして学、アンタは暗黒天帝に騙されてるのよ。こんな事でアンタのお母さんが喜ぶ訳ない、アンタのお母さんは……」
「黙れっ!」
「きゃっ!」
 学は加奈葉を思い切り突き飛ばした。そして地面に倒れた加奈葉に切っ先を向けた。
「それ以上言えば…… 殺すっ!」
 剣を持つ手が震えている、
 学は激しく動揺していた。しかしその時はるか後ろでは折れた鬼斬り丸を支えに武が立ち上がった。