陰陽戦記TAKERU 前編
第十話 麒麟復活
俺達は親父の部屋に来ていた。
この部屋にはパソコンが置いてあり長らく使ってなかった為に埃が掛かっていたが今は拓朗に貸している。
学の部屋は鬼に破壊されちまったが一台だけ無事なパソコンが残っていた。
そこで拓朗は今まで背負っていたリュックの中からUSBメモリを取り出すとその中身をコピーした。
拓郎はとあるフォルダをクリックした。それは学の日記だった。
「パソコンで日記を書いてたんですね……」
あんまり人の秘密を除くのは気持ちがいいもんじゃねぇが今は非常事態だ。
余計な所は飛ばして今年の4月、暗黒天帝と出会った日の事を調べてもらった。
「あ、ありました!」
半年前の4月12日、俺が美和さんと出会った次の日だな、どうやらその日に暗黒天帝に会ったみたいだ。
『父さんは今日も帰って来なかった。一昨日がどれだけ大事な日か分かってないんだあの人は…… まぁそう思うのも今日までだ。僕には救世主が現れたんだからな、その方は協力する代わりに僕の願いを叶えてくれると言った。正直信じられないが僕はその誘いに乗る事にした』
救世主、それが暗黒天帝か…… でもあいつの願いって?
「それはどこにも書いてありませんね、でも……」
それからは暗黒天帝の為の作戦を練ってたみたいだな、
デパートに忍び込んで電源が落ちるように仕掛けたり人間に憑依させた鬼の経過を調べたりと、あいつは見てるだけで胸糞悪い事をやってやがった。
「ん、これは……」
それは暗黒天帝と出会ってから一週間の事だった。
ここで何か別の事を企んでいたらしい、あいつの親父さんが勤めてる大学の学者達に鬼を忍ばせてある物を作ってたらしい、その物とは……
「タイムマシン? 何だそりゃ?」
「えっ、タイムマシンって…… 時代を移動できる乗り物の事ですよ。武様もノラえもん見てたじゃ無いですか」
「いや、タイムマシンの意味は分かってるよ、だけど実際にそんな物が作れる訳……」
「これによると……」
拓朗が言うにはどうやら学の親父さんは物質転送の研究をしていたらしい、
それって巨大なカプセルに物を入れるともう1つのカプセルに移動するって言う映画でやってた奴だろ? 製作者が一緒に入っちまった虫と合体しちまったって言う……
その転送装置のシステムを造り変えてタイムマシンを作っているんだろうけど、実際に上手く行くのか?
まぁタイムスリップ自体が可能だってのは美和さん自身が何よりの証拠だった。
「これ以上の詳しい事までは書いてないです」
「恐らく設計図やそれに関係した物は全て彼の父の研究所にあるんだろう」
「とにかくそこにいる可能性は高いな、その大学の場所は分かるかい?」
「ちょっと待ってください……」
拓朗はマウスを動かすとあるリンク先を見つけた。その場所は学の親父さんが勤める大学のホームページだった。そこの公開ページにあいつの苗字の職員の名前を見つけた。
「私立桜明大学、電子工学研究所主任教諭・三条一樹、それが親父さんか……」
写真を見るとかなり厳しそうな人だな、
確かに家庭を顧みない仕事一筋の父親って感じだが……
「研究所は…… 結構遠いな……」
電車で片道3時間近く掛かる、しかも途中で乗り換えて2時間弱、バスにも乗らなきゃいけない、これじゃ中々帰って来れない訳だ。
「これによると作戦決行は…… 8月13日の午前2時」
「となると…… あと1日と少しだ!」
携帯電話の日付と時間を見ると今は8月12日の午前9時、
「とにかく行こう、暗黒天帝が復活する前に!」
「ええ」
俺達は学の父の研究所を目指した。
作品名:陰陽戦記TAKERU 前編 作家名:kazuyuki