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陰陽戦記TAKERU 前編

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 俺と加奈葉は公園で遊んでいた。
 物心付いた時から一緒にいた俺達は学校が終わったら公園で遊ぶのが日課になっていた。
 しかしある日、滑り台の影で一人の子供が俺達を見ているのに気付いた。
 俺の視線に気付くと少し肩をビク付かせたがやがて加奈葉が子供に近寄って手を伸ばすと子供は恐る恐るその手を取ると加奈葉と供に俺の方にやってきた。
 それが俺達と学の出会いだった。それ以来俺達は本当の兄弟のように育ってきたつもりだった。
「ううっ……」
 突然俺の目に見慣れた天井が映った。
「気が付いた!」
「よかった……」
 香穂ちゃんと拓朗が俺の顔を覗き込んだ。
「えっ、武様?」
 するとふすまが開いて美和さんと桐生さんも部屋には行って来た。
 見回すとここは俺の家だった。俺は布団の中で眠っていたようだった。
「俺、どうし…… うがっ?」
 起きようとしたら全身に強烈な痛みが走った。
「まだ無理ですよ。暗黒天帝の結界に触れたんですから……」
 美和さんが言う、学の周りには暗黒天帝が張った結界が存在していて俺はその結果いに引っかかってダメージを受けて丸一日眠っていたと言う。
 表はもう暗くなっている。
「待てよ、学は? 加奈葉は?」
 俺が訪ねると皆目線を反らした。やがて桐生さんが真剣な顔で話した。
「加奈葉さんは誘われた。君の友人にな……」
 桐生さんが言うには俺が気を失った後、桐生さんや拓朗達が加奈葉を取り返そうとしたのだが黒い柱が突然光り輝くと柱共々2人供消えてしまったのだと言う。
「申し訳ありません、私達が付いていながら……」
 美和さんは頭を下げる、
 別に美和さんが悪い訳じゃない、
「そんな事は無いよ、カッとなって飛び込んだ俺が悪いんだ」
「……過ぎた事を言っても仕方ない、こちらにも色々収穫もあったしな」
 収穫?
 俺達はテーブルを囲んで桐生さんの言葉を聞いた。
「今回の件で分かった事は2つ、1つは暗黒天帝の協力者が武君の幼馴染だったって事、そしてもう1つが暗黒天帝が復活するまで時間が掛かるって事だ。」
「時間が掛かる?」
「もしやれるならとっくの昔に復活して君が動けない間に瞬殺するはずだ。それをやらなかったって事は攻撃できない理由があるって事だ。」
 おっかない事を言って来るなぁ、事実だけど……
「暗黒天帝はお盆を期に復活するのは間違いない。となると……」
 俺達はカレンダーを見るとお盆まで後2日だった。
「しかし問題は復活して何をするのか側からない、美和さんが平安時代にいた頃は奴はどんな事をしてたんだ?」
「それは……」
 美和さんは語った。
 暗黒天帝は突如都に現れ都中に雷を落として大納言や要人達を殺し、貴族達に呪いをかけて病死させたりしたのだと言う、
 その後は自ら妖や鬼を率いて都に攻め入り滅ぼそうとしたのである。
「……私達は必死で戦いましたが、暗黒天帝の攻撃は激しく、皆志半ばで倒れて行き最終的には私一人となってしまいました」
「そしてこの時代に飛ばされたって事か……」
 美和さんは頷く。
 だけど呪いはともかくとしてこの時代に雷落としても大した被害にはならない。避雷針とかある訳だし……
「確かにな、だが奴がこの時代の事を学んだとすればかなり厄介になる。」
 学は頭がいい、
 俺や加奈葉も受験の時に世話になったし、他の奴に教える事ぐらい何とも無いだろう……
「何を考えてるか分からないけど、こちらから動く必要がある。」
「具体的には?」
「ここまで来たらやる事は1つ…… 殴り込みだ」
 この人とうとうおかしくなったのか?
 そう思っていると美和さんが止めた。その理由は……
「麒麟がまだ回復してません。」
 確かにそうだった。
 聖獣全部が復活すれば蘇るんじゃなかったのか?
「そのはずです。となると原因が武様にあるのではないかと……」
「俺に?」
「恐らく武様…… 恐れているのでは?」
 俺が恐れてる? 何をだよ?
 俺は鬼と戦えるし人だってたくさん助けてきた。それなのにどこが恐れてるってんだよ? 
 すると美和さんは真剣な顔で俺を見て俺を訪ねてきた。
「武様、討てますか? ご友人を……」
「う、討つって……」
 それって殺すって事か?
「いや、そこまでしなくてもいつも通り暗黒天帝を倒せば……」
「武様のご友人は暗黒天帝や鬼に憑依されている訳ではありません。自分自身の意思で暗黒天帝に手を貸しています。このまま乗り込めば戦いは避けられないでしょう、もしそうなら武様は戦えますか?」
「……」
 俺は正直迷った。
 確かにそれが1番の問題だった。
 だけど俺はあいつも救ってやりたい、別にあいつだって理由があって暗黒天帝に協力してるんだしな。
「……それは分からない、でも俺はあいつを止めたい。加奈葉も助けたい。それは本当だ」 
「そうですよ、事情は話し合ってからでもおかしくないですよね?」
「そーそー、何だったら白虎が記憶を消せばいいんだし。」
 香穂ちゃんは白虎を見る。
『ま、僕は構わないけど。他ならぬ香穂の頼みだからね』
『我も、戦わなければならぬ時はその時、駄目ならば他の手を考えれば良いだけの事だ』
『おっ、随分ポジティブじゃん』
『今の言葉で言うな、さっぱり分からん』
 白虎と玄武の漫才が炸裂する中、美和さんと桐生さんに笑みが戻った。
「分かりました。何も深く考える必要はありませんね」
「そうだな。もう二度とやるな的で済ませれば良いだけだしな」
「でも暗黒天帝の場所が分かりませんよ?」
 拓朗が首を傾げる。
 奴のアジトは学のマンションじゃないのか?
「マンション?」
「ええ、玄武がいた山の近くにある…… ほら、3LDKの…… って桐生さん知らないか、」
「いや、分かるよ。俺も昔はここに住んでたから、それで?」
 高一まではよく遊びに行ってたから分かるけど、あいつもあの立派なマンションで殆ど1人暮らし同然の生活を送っていた。
 親父さんは有名な学者らしいが滅多に家に帰らず、お袋さんはずっと小さい頃に亡くなった。
「でも、そこにいるのかなぁ?」
 香穂ちゃんが妙な事を言って来た。
「だって、お兄ちゃんの友達なんでしょう? だったらすぐにバレるはずじゃ……」
「それもそうか、ゲームのラスボスじゃないんだからそこにいるって訳じゃ無いよな?」
「いや、何か手がかりがあるかもしれない。一度行ってみよう。」
 俺達は学のマンションに向かった。