陰陽戦記TAKERU 前編
何発目かは数えて無いから分からないがさっきよりも強力な雷が落ちた。しかし雷は朱雀はまだ覚醒しない。
「くそ……」
「武様!」
膝をついた俺に美和さんが顔を近付ける。正直これほど力を使うとは思わなかった。
どちらにしろ雷は後一発しか出せなかった。
「やっぱり私がやります。」
美和さんは自分が雷を落とすと言う、
確かに美和さんなら麒麟を使えても不思議じゃ無いけど美和さんの力は何かあった時の為に必要不可欠だ。下手に疲労させる訳にはいかない。
「おい朱雀っ!」
俺は宝玉に向かって叫ぶ。
「そりゃたくさん食べるのは健康な証拠だ。だがな、いい加減に腹八分目で終わらせて置け、美和さんも困ってんだぞ!」
俺は鬼斬り丸を大きく振り上げて渾身の力込めて振り下ろした。
刀身から小さな氷塊を幾つも出すと雲の中に放り込んだ。途端雷雲に稲光が走るどころか眩しく輝き出した。
「やべっ、やりすぎた?」
途端周囲が閃光に包まれる。眩しくて目を開けていられない。
一体どうなったかと思って目を明けると一番最初に映ったのは宙に浮かぶ朱雀の宝玉だった。
『ありがとう、貴方のおかげでここまで回復できました』
途端朱雀の宝玉から炎が噴出して真紅の鳥となった。
リッパな鶏冠に大きな2枚で羽ばたきながら6本の長い尾羽を靡かせている。
『ずっと美和を守っていてくれたのですね。ありがとう』
「朱雀」
『美和。ここから出るわよ』
「ええ」
すると朱雀は再び宝玉に戻ると美和の手の中に収まった。
「朱雀も復活したし、行こう美和さん」
「はい」
美和さんが頷くと俺は鬼斬りを構える、
刀身が青と金の螺旋状に輝く、するとさらに赤い光も加わり3色の刀身となった。
「ぐっ…… 結構力使うな……」
ただでさえ雷起こす為に法力を連発したってのに、外に出たら完全にへばるな……
なんて事は美和さんには言え無いな。必ず心配するはずだ。
「だりゃああーっ!」
俺は鬼斬り丸を振り下ろす、
すると何も無い空間に光の裂け目が出来た。手応えありだ。
作品名:陰陽戦記TAKERU 前編 作家名:kazuyuki