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陰陽戦記TAKERU 前編

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「美和さん、美和さんっ!」
 真っ暗な闇の中で俺は美和さんの肩を揺すって起こした。
「うう…… 武様? ここは?」
 美和さんはようやく目を覚ました。
 それは良かったがここがどこだか答えようが無かった。
 俺と美和さんの姿は見えているが周囲には何も無い、ずっと真っ暗な空間が続いているだけだった。
「さぁな…… だけどやっぱり鬼の仕業かなぁ?」
「ええ。武様、鬼斬り丸は使えませんか?」
「さっきからやってるよ。でも効果がない」
 あらかじめ発電所突入時に呼んでおいたから手元にはあるが青龍の力を解放しても全く意味が無い、まるで素振りしてるみたいで体力と法力の無駄だった。
「こう言ったのって青龍の力を使うんだよな?」
「ええ、でも空間ほどの物を斬るのはそれだけでは無理です」
 美和さんが言うには青龍に朱雀の力を上乗せしなければ空間レベルの物は切れないらしい、ようするに朱雀は増幅装置みたいな存在だった。でも朱雀は……
「朱雀……」
 美和さんは宝玉を心配そうに見つめる。
 すると宝玉がほのかに輝き出した。
『……美……和……』
 宝玉から今にも消えそうな声が聞こえた。
「朱雀、無事なの?」
『……力が……足りない……』
 朱雀は言った。
 美和とはぐれてずっとこの地に落下して以来力の供給ができずに止む無く発電所の電気を貰っていたがそれでも足りないと言う。
「でも美和さんと会えただろ? だったら美和さんの気を貰えば……」
「無理です…… 遅すぎました。」
 美和さんは泣きそうだった。
 いくら供給元があっても朱雀本人が吸収するだけの力が残っていなかった。
「美和さん、何とかならないのか?」
「朱雀に力を与えるしか…… でもそれには人間の法力では無理です」
 朱雀は火の聖獣だからやっぱり力の源は炎や熱だよな。
 でもこんな所で火なんか起こせる訳が無い、しかも俺は未成年だからライターなんか持てる訳がない。
「万事休すか…… ん?」
 俺は手に持っている鬼斬り丸を見る。
 そう言えば青龍の力を使ったままだったな。こうなると他の聖獣が羨ましくなって……
「ああっ!」
「た、武様っ?」
「何とかなるかもしれない」
「本当ですか?」
「ああ。その代り一か八かだけどな……」
 正直成功するかどうかも分からない、でも今はこの方法に賭けるしかなかった。