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陰陽戦記TAKERU 前編

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 取り残された辰弥、しかし油断は出来なかった。
 2人を取り込んだ黒い触手はより固まって1匹の黒い鬼となった。
 2本足に6本の腕を持つ巨大な頭に一本の角が生えた蛸の鬼だった。
「まさか…… 朱雀の宝玉に憑依していたのか? まさか偽物?」
『いえ、あれはまさに朱雀の宝玉です。私には分かります』
 青龍は宝玉から朱雀の反応がある事は分かっていた。
 しかし問題は宝玉から発せられる気が異様に弱くなっている事だった。つまり今の朱雀の宝玉はただの水晶と大して変わらないと言う事になる。朱雀の意識は鬼の中に閉じ込められてしまったらしい、
『ギエエッ!』
 蛸の鬼は4本の触手を振りかざして攻撃してきた。
 辰弥は後ろに跳んで交わすと鬼に向かって引き金を引こうとした。
『辰弥っ、いけません!』
「あっ!」
 青龍に言われて我に返る、
 鬼の中には武と美和が囚われている。下手に撃てば2人を傷つけてしまう。
『恐らく朱雀には余り力が残っていないのかも……』
 朱雀は火を司る聖獣、火も基本は水や土や風と同じで自然のエネルギーだが他の3つと違って簡単に発生する物では無かった。
「早い話が燃料切れか…… 世話が焼ける聖獣だな」
『車もガソリンが無ければ走れないでしょう、それと同じですよ。人間も空腹では上手く動けない。違いますか?』
 青龍はフォローする。
 すると辰弥は鼻で笑った。
「……違わないな」
 そして上手く攻撃を交わしながら2人を助け出す方法を考えた。
 しかしその光景を背後から見つめる人影があった。
 手に持たれている携帯電話のディスプレイに黒い顔が映った。
『ククク…… 上手く行ったな。作戦も第二段階に移すぞ』
 暗黒天帝と協力者はそのままその場を離れるとやって来たのは動力炉を制御する管理室だった。
 そこには人1人が入り込むくらいの大きさの黒い球体がいくつもあった。
 実は暗黒天帝は協力者とともにこの発電所に入り込み作業員達に鬼を表意させて陰の気を上乗せさせていたのである。
 暗黒天帝が今まで貯め込んだ陰の気を注入された事でホンの僅かな間で三式の鬼が大量に作られたのである。
 その数はおよそ十体は越えている。
『目醒めよ僕供! 我の復活を邪魔する者達を倒すのだ!』
 途端黒い球体に亀裂が入りガラスのように砕け散ると中から人間大の大きな耳に裂けた口、鋭く長い牙に2本の角に腕と羽が合体した蝙蝠の様な鬼だった。