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陰陽戦記TAKERU 前編

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 俺は人気の少なくなった住宅街を歩いていた。
 怪我をしているからそんなに遠くには行けないだろうと思うし何しろ子供の頃から住んでいるからこの辺の地理は隅から隅まで知っている、
 捨て猫の数から縦と横の表札、どっちの家が多いかも知っている、しかし彼女は見つからなかった。
「一体どこ行ったんだよ?」
 俺は肩で息を切らせて舌打ちをする、するとその時だ。
 突然俺は背筋に寒い物を感じた。
「な、何だ?」
 まるでホラー映画を見たその日の夜にトイレに行ったような感覚に似ていた。
 いや、それとは比べ物にならないくらいの感じだった。
 俺は恐る恐るそっちの方に行って見るとそこには不思議な物を目にした。
 赤や青や黄などの絵の具を水の入れたバケツに入れてかき回したような色のブヨブヨした大きな物が道を塞いでいた。
 それは不思議な事に今行こうしている道をスッポリと包み込んでいる。たとえるならばカマボコみたいだった。
 するとその壁の中からОL風の人が歩いてきた。俺はその人を呼び止めた。
「あ、あの、大丈夫でしたか?」
「はい? 何がですか?」
 彼女は何も分からないみたいだった。
 おまけに光の壁も見えないらしい、彼女は不思議そうに首を傾げながら俺に背を向けて歩き出した。
「大丈夫…… 何のか?」
 俺は思い切って光の壁に入っていった。
「なっ?」
 俺はさらに信じられない光景を目にした。
 周囲が真っ赤な炎に包まれて蜥蜴みたいな怪物があの子に襲いかかろうとしていた。
 女の子の方も手当てした怪我の他に傷を作って両膝をコンクリートの地面に付けて動けない状況だった。
「止めろっ!」
 俺は思わず叫んでしまった。
 蜥蜴の1つ目がこちらを見つめる、
 女の子の方も俺を不思議そうに見ている。こっちの方が不思議だっつーの……
『クワアッ!』
 すると蜥蜴の化け物は俺に向かって口を開けると炎の玉を吐き出した。
「うわあっ?」
 俺は攻撃を交わすが恐怖で足が動かなかった。
 化け物は動けない少女を他所にアスファルトを太い足で踏み抜きながら俺に近づいてきた。
「駄目、早く逃げて!」
 女の子の叫びも今の俺の耳には聞えない、
 すると化け物は今度は口から槍のように尖った舌を伸ばして俺の左胸を攻撃した。
「うわああっ!」
 やられた! そう思った。
 だけど痛みがなかった。眼をゆっくり開けると破けた俺の胸のポケットからあの黄色い玉が転がり落ちた。
「それは……」
 女の子は目を丸くする、
 化け物も玉を見るなり後ずさりをする、どうやらこいつが苦手みたいだった。俺はそれを手に取る、すると玉が突然光りだした。
「うわっ?」
 思わず俺は驚くと怪物も慄き怯え始めた。
 遠くでそれを見ていた女の子も体の痛みを忘れて体を起した。