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陰陽戦記TAKERU 前編

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 数日後、俺達は人形を持ってある場所へ向かった。
 そこは女の子が眠っている墓地だった。
 ただ俺や香穂ちゃんの両親を埋葬した墓地と違い駅を2つ越えた町にある教会の霊園だった。
 俺達は教会の人に彼女の墓のありかを訪ねるとその墓標の上に人形を乗せた。
「あそこに置き去りにされて悲しかったんだな……」
 あの後桐生さんが洋館の事を詳しく調べてくれた。
 それは今から十数年前、屋敷の主である富豪夫妻が事故で無くなり一人娘があの屋敷に取り残された。
 それがあの子な訳だが、あの子は生まれつき体が弱く、さらに両親の死を知って容態はさらに悪化、時期にこの世を去ったと言うのだ。
「あそこで働いていた使用人達はその子の死と同時に全員出て行った訳だけど、あの人形だけはあそこで置かれっぱなしだったって事だ」
「そこを暗黒天帝に見つかって利用されたって事でしょうね」
「でも何で人形が鬼になったんでしょうか?」
 拓朗は不思議に思った。
 今までの鬼は人間に取り憑いた鬼が陰の気を吸収して臨界点を突破した時、宿主の意識と体を乗っ取り媒介として鬼に変貌させていた。しかし今度は人間ではなく物を言わぬ人形である、
「古くなるまで大事にされていた物には魂が宿ると言われています、よほど大事にされていたんですね……」
 美和さんは説明する、確か九十九神とか言ったな……
「……いずれにしろ、あそこにも暗黒天帝の手がかりはなかったな、振り出しに戻った事には違いない」
「でも、俺は…… 今回の事で色々学びましたよ」
 俺はこの力と使い方を知って俺は正直清々しい気分だった。
 今まで鬼は倒せば良いとか、取り憑かれた側にも責任があると思ってたけどそれは大きな間違いだった。
 確かに欲望に溺れて鬼になる場合もあるが中には理由があって鬼を受け入れてしまうって事もある、そう言う見極めが大事だって事を……
 美和さんも分かってくれたらしく、これからは鬼でも事情を考慮するとの事だった。
「ありがとうな、青龍」
 俺は正直に礼を言う、
 すると桐生さんが上着のポケットにしまっていた宝玉が光り輝くと具現化しながらポケットの中から出てきて桐生さんの腕に巻きついた。
『べ、別に礼を言われるほどの事はしてません…… ただ戦い以外にも必要な物があると言う事を分かって欲しかったからです』
 青龍は俺から目を反らして鼻でため息を零した。
 それと同時に拓朗と香穂ちゃんの上着から宝玉が飛び出して玄武は拓朗の足元で、白虎は香穂ちゃんの肩の上で具現化した。
『相変わらず素直では無いな』
『そう言うのツンデレって言うらしいよ、この世界じゃ……』
 いや、それはどうかと思うけど……
「さてと、そろそろ行こうか、これからの事も話したいし」
「そうですね、じゃあ行きましょうか」
「また、来るからな」
 俺は人形と墓の下で眠る少女に伝えるとその場を後にした。