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陰陽戦記TAKERU 前編

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 鬼はこの力の意味を知っているか知らないかは分からないが警戒して顔を歪めていた。
『ギエエエッ!』
 鬼が叫ぶと操られた人達が前に出た。
 中には拓朗や香穂ちゃんもいる、汚ねぇ真似をっ!
「武様、青龍の力ならば大丈夫です。その力は形の無い物を斬る力です!」
「形の無い?」
「鬼に操られた人々を元に戻す事が出来るはずです!」
「そうか、分かった!」
 俺は鬼斬り丸の力を解放する、光の刃が大きくなると思い切り振り回して操られた人達を切り裂いた。
「がっ!」
「ぐっ!」
「ううっ!」
 俺の攻撃を受けた者達はその場に倒れると体から黒い煙のような物が出てきた。
「その人達に憑依していた『子』が消滅しました。今ですっ!」
「よっしゃ、今すぐ助けてやるぞ!」
 俺は調子が出てきた。
 しかしそこへ拓朗と香穂ちゃんが立ち塞がった。
「2人供、少し我慢してくれ!」
 俺は剣を構えて突っ込む、先に出た香穂ちゃんの一撃を交わし、拓朗の攻撃から身を翻すとまず拓朗に一撃、そして香穂ちゃんに向かって切っ先を突き立てる。
「うぐっ!」
「ああっ!」
 2人は倒れるが死んではいない、青龍の力は命を奪う為のものじゃない、
 これは全てを洗い流す救いの力、しかし裏を返せば人や物は斬る事はできないって事になる。
「美和さん、2人を頼むっ!」
 それだけ言うと俺は人々を青龍の力で解放して行く、鬼はその場から逃げ出して逃げた先は最初に戦ったロビーの方だった。
「逃がすか!」
 俺は両足を揃えてジャンプ、そこへ鬼が触手を伸ばしてくるがそんな物はもう通用しない、俺は思い切り横に剣を払うとガス状の触手を切り裂いて床に降り立った。
『ギャアアッ!』
 鬼はもがき苦しむ、鬼自体には体が無いがガス状の体は何度斬られても元に戻る、となると……
「あった!」
 俺には分かっていた。
 麒麟の宝玉に力が戻る度に各聖獣達の力が俺も使えるようになる、
 玄武は大地や冷気を操る力と自己再生能力どんな硬い物でも真っ二つに出来る、
 白虎は風や大気を操る力と超高速移動と高速斬撃、
 そしてこの青龍は水と雷を操る力と形の無い物を斬る力とさらにそしてもう1つ、俺の感覚が何倍にも高められると言う物だった。
 今の俺の目はどんな暗闇も見通し、1キロ先に落ちた針の音さえ聞き分けられる。
「今助けてやるよ、そして行くんだ。友達のいるところにっ!」 
 俺は剣を引いてありったけの力を込めると切っ先を思い切り突き出した。
 その途端金と青の光が螺旋を描く高密度のエネルギーとなって鬼の左目を貫いた。
『ギャアアアアッ!』
 ガス状の体は消滅し、鬼となったそれが床に落ちた。
「武様!」
 そこへ美和さんが意識を取り戻した拓朗と香穂ちゃんを連れてやって来た。
「あれ?」
 すると香穂ちゃんが床に気付いた。そして俺は言った。
「鬼の正体だよ」
「これが?」
 拓朗が持ち上げた鬼の正体、それは金髪長い髪い青い瞳の人形だった。
 実はあの写真に映っていた幽霊の女の子が持っていたのがその人形…… それがあの子の友達だった。
 そして噂をすればその子が美和さん達の後ろに現れた。
 始めて見る幽霊に拓朗はビビリ、香穂ちゃんも怖がって美和さんに抱きつくが俺は拓朗が持っている人形を手に取ると女の子に差し出した。
「君の友達、助けてあげたよ」
 俺が笑顔を作ると女の子も微笑した。
『……ありがとう、優しいお兄ちゃん』
 それだけ言うと女の子は笑顔になって消えていった。
 どうやら成仏したようだった。