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陰陽戦記TAKERU 前編

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 俺達は桐生さんの車である場所へやって来た。
 そこは廃屋だった。ここは博に聞いた事がある、確か幽霊が出ると言う噂の心霊スポットだ。
「ここって、確か最初に鬼が出た……」
 正確にはこの廃屋の近くの工事現場なのだが俺達が駆けつけた頃にはもうすでにいなかった。
「ここは犯行現場から近いって事で警察が調査をしている、一度調査が住んだ場所は誰も近づかないからね、」
「確かに……」
「工事現場で誘拐した人は恐らく車にでも入れて眠らせておいたんだろう、そして少し間を置いて別の事件を起こした。連続誘拐事件ともなれば警察も対策やパトロール強化に専念し調査に掛ける時間が無くなる、連れ去った人達は鬼の力でここに監禁して置く、ここはその為に丁度良い場所だ。そして鬼の正体は!」
 桐生さんが青龍の宝玉を取り出すと青い光が発せられて宝玉が銃に変形、そして扉が音を立てて開くと出てきた人間の服を見て俺達は目を見開いた。
「警察?」
「ど、どうして?」
 香穂ちゃんも俺と同じ思いだった。
 だがいくら警察でも人間だ。心に闇くらい持ってるだろ……
『ウオオオッ!』
 すると警官に変化が現れた。
 口や耳から出た黒い瘴気が噴出して全身を包み、その体を鬼に変貌させた。
 その姿はさっきのアンコウのような鬼だったが右手が銃、左手は5本の指に鋭い爪の生えた2本足で歩いていた。
「さっきと形が違う?」
 桐生さんは眉間に皺を寄せる、
「また陰の気を上乗せした鬼か?」
「ええ、力を感じます。強力な陰の気です!」
ようするについさっきまでは誘拐専門の鬼だったが暗黒天帝の力を経て完全な戦闘用の鬼になったって事だよな、じゃあ奴はこの中に?
「いえ、奴の気は感じません…… ですが別の陰の気を感じます、それもかなりの数です。」
「あの中に何かあるって事か……」
「でも何が?」
「そりゃ行ってみなきゃ分からないだろ」
 俺は麒麟の宝玉で鬼斬り丸を呼び香穂ちゃんは白虎が杖に、拓朗は玄武がハンマーに変化、美和さんも弓を構えて臨戦体勢に入るが突然桐生さんが俺達を止めた。
「君達は先に行け!」
「えっ、でも……」
「あの中には誘拐された人達が何人もいる、優先すべきは鬼の始末より人々の安全だ」
「だからって桐生さん1人じゃ無謀だ」
 すると桐生さんは口の端を上にあげた。
「グズグズしている暇は無い、さぁ、行くぞ!」
 桐生さんは地面を蹴って走り出す、
 鬼の右腕が火を噴いて桐生さんを襲った。しかし桐生さんが横に跳んで交わすと身を翻して反撃に出る。
「くらえっ!」
 桐生さんが引き金を引くと金色に光る銃弾が発射された。
『ギャアアアッ!』
 それは鬼にヒット、鬼の体から火花が飛んだ。
「す、すげぇ……」
 俺は素直に感心する、すると美和さんが俺の袖を引っ張った。
「武様、ここは桐生様に任せて私達は攫われた人達を!」
「そうだな!」
 俺達は鬼の横を通って建物の中に入って行った。
「みんな足元に気をつけろ」
 それほど酷いと言う訳では無いが床が風化が始まっている、
 床を踏み抜いてしまい足を取られる事もあるだろう、注意するに越した事は無かった。
 俺達はこの広い屋敷を一部屋づつ見て回った。
 夜と言う事で不気味以外のなんでもなかったが特に変わった様子はなかった。
 やがて地下室を見つけると俺達は階段を降りていった。
 物置か何かに使われていたのだろう、荷物はごっそりとなくなっていたがその代り大きな黒い球体がいくつも置かれていた。
「何これ?」
「人1人入っちゃいますね……」
「人1人?」
 俺は球体に触れるとその途端黒かった球体から色が無くなった。
 透き通った球体の中にはОL風の女性がぐったりしていた状態で眠っていた。
「やっぱりこの中に行方不明者が入っていたか」 
 すると美和さんが球体の中の人達に手をかざす、
「みんな術をかけられてます。」
「とにかく皆を助けよう、」
 俺は切っ先で球体を突いてみる、しかしブヨブヨしている割にはちっとも切れない、何だこりゃ?
「結界です! この中の人達を助けるには源を断つしかありません!」
「じゃああいつを倒せば!」
 俺は表で桐生さんと戦っている鬼を思い出した。
「急いで戻ろう!」
 俺達は急いで地下室を出た。
 しかし出口か見えたその瞬間出口に黒い瘴気が渦を巻いていた。これは鬼の出現だった。
「もう1匹いやがったのか!」
 俺達は身を構えると黒い影は本性を現した。
 黒くて丸いガス状の体に赤い目と大きく裂けた口、その周りからは煙の触手のような物が生えている。
 すると鬼は触手を伸ばして攻撃してきた。俺達は武器で払うが俺達の攻撃は敵の攻撃をすり抜けてしまった。
「何っ?」
「ダメです、攻撃が効かない!」
「どうなってるの?」
 俺達は仕方なく後退する、
「あの鬼…… 恐らく実体が無いんです、」
「どういう事だ美和さん?」
「あの鬼は今までの鬼と違い特殊なんです。」
 目の前にいる鬼は言うなれば幽霊に近い鬼だと言う、普通の攻撃では効果が無い、
「ええ、しかも鬼の力が上乗せされています。気を付けてください。」
 つまり鬼の武装や分裂したりするって事か? もしかしたら別の能力もあるのか?
「これでどうだぁ!」
 拓朗が玄武のハンマーで大地を砕いて巨大な霜柱を出して攻撃した。
 しかし実体が無い鬼には効果が無かった。
「えいっ!」
 今度は香穂ちゃんが白虎の杖を振るって攻撃した。
 強力な旋風が吹いて鬼の体をチリヂリに吹き飛ばしたが鬼は再び一箇所に集中し元に戻ってしまった。
「どうすりゃいいんだよっ?」
 2人の攻撃が効かないんじゃ俺だってどうしようもない、
 美和さんも試しに鬼を射るが結果は先の2人と同じだった。
「形の無い物を斬るのは青龍の力が必要ですけど……」
「えっ、そうなの?」
 青龍ならさっきまでいたし覚醒もしてる、となると鬼斬り丸にも反応が…… ってあれ?
「何も起きねぇ?」
 白刃の刀身も麒麟の宝玉も何の反応も無かった。
「そんな、どうして?」
 美和さんにも分からなかった。
 玄武や白虎みたいに復活したら麒麟にも力が宿るはずだ。
 デパートの時みたいに鬼の気が強い訳でもないし結界が張られている訳でも無い、となると問題は別にあるのか?
『グガアアアアアッ!』
 すると鬼は大きい口をさらに大きく広げた。
 攻撃してくるのかと思いきや、ただ咆えた
 だけで何も起らなかった。こけおどしか?
「ん、ああっ?」
 香穂ちゃんが後を振り向くと地下室から閉じ込められていた人達が現れた。
「な、何?」
「うわあっ?」
 すると人々は突然襲いかかり拓朗と香穂ちゃんを押さえつけた。
 すると鬼の瞳から光線が放たれて拓朗達に直撃すると2人は糸が切れた人形のように動かなくなった。
「拓朗様っ、香穂様っ!」
「テメェ!」
 俺は鬼を睨み付けるがその時だ。
 突然2つの足音が聞えて振り向くと拓朗と香穂ちゃんが立ち上がって俺達に近づいていた。
「2人供、大丈夫……」
 すると拓朗がハンマーを振り上げて俺に襲いかかった。
 俺は横に跳んで交わすがもう少し遅かったら確実にペシャンコだった。
「拓朗、何しやがっ……」