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陰陽戦記TAKERU 前編

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 それから数日経った。
 俺達は鬼の気配を辿って現場に急行した。しかしそこには鬼の姿は無かった。
「クソッ!」
 鬼はすでに逃げた後だった。
 地面には女性用のバックが転がっている。
「また…… 逃げられてしまいました」
 美和さんは悔しそうに顔を顰める、
 実はここ数日何度も鬼の気配を感じているのだが敵は俺達に気付いたのかすでになくなっていた。
 これで5回目だ。動物園の時みたいなスピードタイプの鬼か?
「どちらにしろもう気配はありません……」
「仕方ない、戻るか……」
 俺達は家に戻った。

 翌朝、今この町で起こっている失踪事件の事がニュースになっていた。
 被害者には共通点がなく、悲鳴や物音を聞いた人間もおらずに争った形跡もみられない、まるで自分の意思で消えてしまったかのようだった。
「まさか誘拐犯の車に自分から乗ったって事は……」
「鬼の仕業にそんな事あるか!」
 俺はテレビを消した。
 だが正直手詰まりで鬼の目的すら分からなかった。こう言う時は……
「犯人は犯行現場に戻ってくるか」
 俺は自転車で今まで鬼が出現した場所を回った。
 鬼の気配が感じられたのは工場跡や住宅街や公園前など確かに夜は全く人気が無くなる場所ばかりだった。
「ええと、後は川原か……」
 川原は3度目に美和さんが鬼の気配を感じた場所だった。
 そう言えばあそこは小さなグラウンドがあり俺が小学生の頃に入ってた草野球チームがあった。
 中学上がると同時に辞めちまったけど、今でもやってるのかなぁ?
「ん?」
 すると川原では数人の高校生達が言い争いをしていた。
 その中には弥生と博の姿があった。何やってんだあいつら?
「おーい! 博! 弥生!」
 俺は手を振って2人に近づく、
「あ、武」
「何やってんだ。こんな所で?」
「そりゃこっちのセリフだっつーの」
 いくら人気がないって言っても喧嘩してたらみっともないって……
「ほら、今世間を騒がせてる失踪事件あるじゃない? 私達ミス研はその事件の謎を追ってたのよ!」
 弥生が言うと横から博が入ってきた。 
「その事件を解決するのはオレ達オカルト研究会だ!」
 そう言やこいつそんなのに入ってたな…… でも何でオカ研が出て来るんだ?
「今回の事件、これは地球外生命体によるアブダクションだ!」
 開いた口が塞がらないとはこの事だ。
 言うに事かいて宇宙人? 何を証拠に言ってんだこいつは?
「証拠ならある、これは昨日後輩が写した写真だ」
 すると博は後輩が持っている写真を見せた。
 確かに何かが光った写真だった。何だこりゃ?
「何って、UFОに決まってるだろ。」
「それにしちゃヤケに小さいが?」
 宇宙船なら普通巨大な鍋みたいな奴とか戦艦みたいな奴だよな……
「分かってないなぁ、この宇宙には色々な宇宙人がいるんだ。中には自在に大きさを変える事が出来る宇宙人がいたって不思議じゃ無いだろ?」
 昔見た特撮物でバクテリアサイズからビルくらいまで巨大化できる宇宙人がいたな…… 
 そんな事を思っていると弥生が鼻で笑った。
「バカバカしい、宇宙人なんている訳ないじゃ無い、それは光学明細を使ったトリックよ」
 弥生の話ではかつて子供がテレビを見て気絶した事件を応用した誘拐事件だと言う、
「人間の脳は電気で動いているわ、特定の電気信号や高周波を聞かせる事で人間を催眠状態に陥れて待機していた車に乗せて誘拐した。まぁ写真を見る限りでは前者の方ね」
 その推理もどうかと思う、かなり金掛かると思うし……
「例え違ったらその光は車のライトか何かよ、大体UFОが何で人攫いなんかするのよ」
「お前はキャトルミューティレイションを知らないのか? 宇宙人は地球人を誘拐して人体改造を……」
「んな訳ないでしょう、アンタはテレビの見すぎなのよ!」
「じゃあ人間が人間誘拐するんだよ、意味が分からねぇよ!」
 お前の言ってる意味の方が分からねぇよ、
 鬼や幽霊がいるくらいだから宇宙人も否定はしねぇが……
「ま、まぁ、それはまだ分からないけど……」
「……一番重大な所が曖昧になってるぞ、」
 こいつ推理は出来ても証拠が出てこないタイプなんだなぁ、
「武、お前はどっちを信じる?」
「えっ?」
「私達の推理とオカルトマニアの戯言、アンタはどっちを信じるの?」
 2人に睨まれて俺は後ずさりする、
 どちらか選ぼうモンなら結構問題になる、
 弥生は加奈葉を始め学校のほぼ全女子生徒に友人が多いのでどんな噂を流されるか分かったモンじゃない、さらに合気道や柔道も習ってて、噂じゃ去年の春に引ったくりを投げ飛ばし病院送りにしたらしい、
 博の方はこれはこれで厄介だ。地球が宇宙人に侵略れると本気で思い込んでおり対抗する為に空手、少林寺拳法、ボクシングなど小学生の頃から習っていたらしく、中学の頃カツアゲしてきた隣町の不良高校生の顔面を複雑骨折にしちまったとか……
 そんな訳で俺は虎と狼に睨まれているようで生きた心地がしなかった。
「い、いや…… その……」
 俺は目が泳いだ。
 何とかして俺はこの場から逃げ出したかった。
「まぁ、ここで議論してても仕方ないだろ、もう一度犯行現場を回ってみるのもいいんじゃないのか? もしかしたら場所とか地名とかこの事件に関係してるんじゃないのか?」
 すると2つの部の部員達は互いに顔を見合わせる、
「確かに」
「盲点だったわ」
 こいつらバカで良かった。
「行くわよみんな、この事件は私達ミステリー研究会で解き明かすのよ!」
「ふざけんな、解決するのは俺達オカルト研究会だ!」 
 五十歩百歩と言う物だろうな、
 それぞれの部活はその場から去って行った。
 俺は脱力してその場に座り込む、するとその時だ。道路の方から俺の方を見ている1人の男がいた。
 背丈は俺より少し上くらいだろう、長髪を後ろで束ねた大学生くらいの男だった。白いYシャツとジーンズ姿の男だった。
 彼は俺の目線に気付いたのかその場から去って行った。
「何だ?」
 俺は首をかしげた。