小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

陰陽戦記TAKERU 前編

INDEX|54ページ/108ページ|

次のページ前のページ
 

 俺達は日が沈むのを待って動物園を目指した。
 昼間の内に拓朗に応援を頼んだのだが両親と旅行に行っちまったらしく今回は無理だそうだ。
 夜の動物園は不気味に静まり返っていた、檻の補修工事が終るまでは動物園は休園になったらしいがこれじゃ開くまでに何日かかる事か……
 俺達は園内に忍び込んだ。
「うわぁ……」
 俺は辺りを見回した。
 今日は雲もないし月明りで灯りもいらないが酷い有様だった。
 破損の激しい檻の中の動物は別の場所に運ばれたみたいだがこりゃいくらくらい掛かるんだ?
「酷い……」
 後ろにいたのは香穂ちゃんだった。
 本当は連れて来る気は無かったが何度断っても着いて行くと言って聞かないので鬼が来たら加奈葉と供に逃げると言う事を条件で許可を出した。
 ちなみに鈴華さんには今日は家に泊まると言ってある、
「とりあえずホワイトタイガーの檻に……」
「ッ!」
 美和さんは両肩をビク付かせると弓を構えた。
 檻の中の動物もざわめき始めた。
「武様っ!」
「おいでなすったか!」
 俺は麒麟の宝玉で鬼斬り丸を呼び寄せた。
 そして俺達の目の前に鬼が現れた。
 黒い風が渦を巻いて具現化、俺くらいの大きさで黒い体毛に鋭く光る金色の目、大きく裂けて並んだ牙、巨大な耳に額から伸びた長い一本の角、身の丈ほどある長い両手に鋭い5本の爪が生えた猫のような怪物だった。
「りゃあっ!」
 俺は鬼斬り丸で切りかかるが突然目の前から鬼が消えてしまった。
「何っ?」
 俺は周囲を見回す、すると美和さんの後ろに鬼の姿が合った。
「美和さん後ろっ!」
「ッ!」
 美和さんは弓で後の敵を払うが鬼の姿は無かった。
 美和さんも辺りを見回すと俺の頭上を見た。
「武様」
「くっ!」
 見上げるとそこには鬼がいた。
 長い腕で俺を攻撃してきた。俺はスンのところで後ろに跳んで交わすが鬼の腕はアスファルトを砕いた。
 いや砕いたと言うより切り裂いたといった方がいいだろうな、5本の爪痕がその切れ味を示していた。
「散ッ!」
 美和さんが複数の矢で鬼を攻撃する、しかし鬼は再び消えてしまうと俺達から5メートルほど後ろに現れた。 
「こいつ消えるのか?」
「いえ、動きが異常に早いんです」
 別に瞬間移動した訳じゃ無いって事か、前回はメチャクチャ硬い鬼に今回は早い敵、段々パワーアップしてきてるな……
 正直鬼のスピードに目が追いついていけなかった。
 俺と美和さんは互いに背を合わせ背後を捕られないようにする、鬼は俺達の周囲を旋回し隙をうかがった。
「この野郎、調子に乗りやがって……」
「武様、先に焦ったら負けです!」  
「分かってるよ、でも何て早いんだ。まるで…… んッ?」
 俺の心の中に1つの推測が浮かんだ。
 そして周囲を見ていると加奈葉と香穂ちゃんの後ろに黒い影を見つけた。
「加奈葉、香穂ちゃんっ!」
 俺が叫ぶが時遅かった。
 2人に鋭い爪が振り下ろされた。
「滅ッ!」
 しかしその時、美和さんが弓を引いて加奈葉達の後ろに居る鬼を攻撃した。
『ギャアアアッ!』
 光の矢が鬼の左肩を貫いた。
 途端傷口から黒い陰の気が噴出した。
「きゃあっ!」
 加奈葉と香穂ちゃんは慌ててその場から離れて俺達の側にやってくる、
「2人供無事か?」
「う、うん……」
 加奈葉が頷く、やっぱり鬼は1匹だけじゃなかった。
 今美和さんが攻撃した1体の他に俺達の周囲を回っていた奴…… しかもそいつは2匹いる、
「合計3匹か……」
 すると人間3人が鬼に取り付かれたって事か、何体だろうが倒してやる、
「みんな伏せろっ!」
 俺が念じると麒麟の宝玉の力を解放、刀身が金色に包まれ巨大化した。
「うりゃあああっ!」
 俺は上半身を捻って回転切りを放つ、すると鬼は宙高くジャンプして交わす訳だが底を美和さんは見逃さなかった。
「滅ッ!」
 美和さんの光の矢が鬼の左胸に炸裂、その鬼は地に落ちた。
 勿論俺の攻撃も終っていない、今度は玄武の力を解放すると刀身が黒くなった。
「せりゃあっ!」
 すると振り上げた刀身からバスケットボールくらいの氷塊がいくつも飛び出して鬼を攻撃した。
 鬼の1体の腹部に当るとその鬼は頭からアスファルトに落ちて動かなくなった。
「後1匹」
 俺と美和さんは身を構える、しかし鬼は何が可笑しいのか大きく裂けた口の端を上に向けた。
 途端2つの目が輝くと倒れた鬼達に変化が現れた。
 何と動かなくなった2匹が何事もなかったかのように起き上がったのである。
 しかも美和さんの矢で打ち抜かれた痕も俺の雹でぶつけた後も消えていた。
「なっ、どうなってんだ? 倒せば元に戻るはずじゃ……」
 この時俺は最悪な事を考えた。
 鬼に心を完全に支配されない限りは倒せば元に戻る、しかし戻らないって事は……
「武様、鬼達から発せられる陰の気が三つとも同じです」
「どういう事だ?」
 いくら暗黒天帝が作り出した鬼の力や能力にはそれぞれ個体差がある、
 それは奴等の力の源である陰の気だって同じ事である、しかし3体の鬼は全く同じ、しかもそれが互いに繋がっているのだと言うのだ。
「って事は分裂してるって事よね?」
 俺はデパートの時の事を思い出した。
 つまりこいつも複数に分裂するタイプって事だな…… ん? でもちょっと待てよ、
「それって分身は倒せば消えるはずじゃ……」
 しかしそれは美和にも分からないと言う、
「……恐らく、この前のように暗黒天帝の力が上乗せされているのでしょう、その為に分身達に陰の気をつなげて存在を維持しているんです。」
「……頼む、もう少し簡単に言ってくれ。」
「1体づつじゃ倒せないって事よ、3体同時に倒さないとダメって事でしょ?」
 加奈葉が補足をすると美和さんは頷いた。
 まぁ倒す方法が分かっただけでも良かったが、随分と難しい注文だった。
 だけどやる事は分かってる、まずは加奈葉と香穂ちゃんを逃がす事だった。
 俺は真正面に居る鬼に切りかかる、すると白刃の刃が鬼の鋭い爪に受け止められた。しかし今はこれでいい!
「2人は逃げろ!」
 俺は加奈葉達を見る、
 途端加奈葉は頷いて香穂ちゃんの手を引いて走り出した。
 しかしそこを鬼が見逃すはずがない、残った2匹が加奈葉達に飛びかかろうとするが美和さんが連撃を放って打ち落とした。
「二人供早く!」
 美和さんが行って2人を逃がした。
 しかし俺が抑えている鬼の目が輝くと美和さんが倒した2体の傷が癒えて立ち上がった。