小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

陰陽戦記TAKERU 前編

INDEX|53ページ/108ページ|

次のページ前のページ
 

 朝、俺はまだ眠っていた。
 しかし朝食の仕度をしていた加奈葉が俺を叩き起こした。
「ちょっと起きなさいよ武、大変よ!」
「ううっ…… まだ寝かせてくれ〜……」
 俺は昨晩は熱帯夜で寝付けなかったので『ドラゴン・クエスター7』をプレイして感動のエンディングを鑑賞したのだった。
 世界(バーチャルだけど)を救った勇者(俺)を朝日が歓迎してくれたのだった。
 朝焼けが美しかったぜ、そう、それはまるで美和さんの笑顔のよう……
「さっさと起きろこの馬鹿タレ! 昨日行った動物園が大変なのよッ!」
「何っ?」
 俺は飛び起きた。
 慌てて部屋のテレビをつけると前チャンネルが加奈葉の言った通りの事が映っていた。
「何だこりゃあ?」
 正直目が一発で覚めた。
 何しろ俺達が昨日まで行っていた動物園の檻がメチャクチャに壊されていた。
 動物達の中にも軽いが怪我をしたのがいるらしい、だが殆どの動物達は怯えてしまい飼育係にさえ近づく事を許さないと言うのだった。
「一晩の内にこんな事ができるって言ったら……」
「鬼の仕業です!」
「み、美和さんっ?」
 いつの間にか隣りには美和さんが鎮座していた。
 遅いから呼びに来たのだろう、しかしそんな事よりも今の俺の格好だった。
 シャツ一枚にトランクス、加奈葉もようやく今の俺の姿気付いたらしく顔を赤くして顔を背けたが美和さんは平然としていた。
 何だかちょっとショックだった……
「ん!」
 しかしその時、玄関のドアベルがなった。
「お客さん?」
「こんな朝早くに誰だ?」
 俺は窓の外を見る、
 一々玄関に行くよりこっちの方が手っ取り早い、するとそこにいたのは香穂ちゃんだった。
「香穂ちゃん?」
 俺が叫ぶと香穂ちゃんは2階の俺を見る、
「お兄ちゃん、大変よ!」
「ちょっと待っててくれ!」
 俺は美和さんと加奈葉に頼んで香穂ちゃんを家に上げてもらうように頼むと部屋から出ていってもらいクローゼットの中から服とズボンを取り出して着替えを済ませて居間に急いだ。
「お待たせ、」
 俺が到着すると香穂ちゃんは泣きそうだった。
「ど、どうした? またイジメられたのか?」
「違うの! 私じゃ無いの!」
 香穂ちゃんは大声で叫んだ。
 私じゃ無いって事は別の誰かか?
「あの子、あの子よ!」
 香穂ちゃんが言ったのはホワイトタイガーの子供だった。
「あの子、本当は助けを求めてたのに…… 私、私気付かなくて……」
「悪い香穂ちゃん、何言ってるのか分からない、ちゃんと説明してくれ」
 俺は訪ねた。
 実は香穂ちゃんは俺に肩車された時にホワイトタイガーの子供の1匹と目が合ったらしい、その時に香穂ちゃんは不思議な感覚に見舞われたと言うのだ。
 まるで台風の日に外に出たかのように体に強い風が当る感覚、しかし風は柔らかくどこか温かい、しかしどこか悲しい風だったらしい、
「今朝テレビ見て…… やっと分かった。あの子はジョンと同じだった。みんなの為に戦って傷ついて……」
「ちょっと待てよ、じゃあホワイトタイガーの子供は鬼なのか?」
「いえ、香穂様の話では鬼では無いみたいです。となるとやはり……」
「聖獣だってか?」
「いえ、気配はしませんでした」
「お兄ちゃん!」
 香穂ちゃんの言いたい事は目を見れば分かる、
 俺達は再び動物園へと向かおうとしたがそれはできなかった。
 テレビでこれだけ騒いでるって事は今行っても園には入れないだろう、行くとしたらやっぱり夜しかないだろうな……