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陰陽戦記TAKERU 前編

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 加奈葉は香穂の手を引いて少しでも遠くに逃げようとした。
 しかしその時、香穂の目に1つの檻が見えた。
 それはホワイトタイガーの檻で、何と中から白い光が点滅していた。
 香穂は加奈葉の手を振り解くとホワイトタイガーの檻へ向かった。
 暗い檻の中を覗くと光っていたのは白い球だった。
 すると球が宙に浮かび上がると香穂達の目の前でホワイトタイガーの子供に変身した。
『やあ、待ってたよ…… 君が来るの』
「えっ?」
 ホワイトタイガーの子供は香穂を見て口の端を上に上げる、
『僕は白虎、こことは違う世界にいたんだけど、仲間達とはぐれてここで世話になってたんだ』
 白虎は語った。
 この世界に来た時、自分はここから少しはなれた竹林の祠に落ちた。
 周囲を飛び回って調べていると偶然この動物園を見つけて子供を生んだばかりのホワイトタイガーを発見、正直1人で心細かった白虎は赤ん坊のホワイトタイガーに化けてここに住んでいたのだと言う、
 その間母親のホワイトタイガーは自分を本当の子供のように愛情を注ぎ、ここに遊びに来た子供達の笑顔を見る度にここにいるのが心地よくなったと言うのだ。
 しかし本来の使命を忘れた訳では無い、人が集まるこの動物園になら自分を探しに仲間が繰るかも知れない、下手に動き回るよりここにいた方が効率が良いと考えたのだ。
『君の名前は白石香穂、小学6年生の11歳…… 家族に先立たれて今は風祭神社で暮らしている。』
「えっ、どうしてそれを?」
『僕は君の心が読めるんだよ』
 白虎は相手の記憶を覗いて操作する能力があると説明して来た。
 その能力で動物園内の人間に産まれたホワイトタイガーの子供が本来は2匹だが3匹だと思い込ませたのだと言う、
『でも勘違いしないでくれ、僕は滅多やたらな事じゃ力は使わない事にしてるんだよ、ただここで生まれた子の数が違えばそれなりに騒ぎになる、そうなれば敵に見つかるかもしれない……ってもう見つかったか』
 白虎は笑いを括る、
『君はとても悲しい過去を経験してきた。だからそれと同時に失う事の辛さも経験した。そして新し出会いもね、』
 すると武、美和、加奈葉の顔が浮かんだ。
『僕も寂しいのは嫌いだ。出来れば母さんや兄弟達と別れたくない、でもここにいつまでいる事は叶わない、でも残念ながら僕にはここの皆を守るだけの力がない…… 君には力を感じる、君の力と僕の力を合わせれば鬼に勝てる』
 白虎は武達を見る、
 武と美和は鬼に苦戦してその攻撃に体に受けていた。鋭い爪が武の頬や美和の腕を切り裂いて赤い鮮血がにじみでる。
 2人がどれだけ苦しんで戦っているかが分かる、しかし香穂は怖かった。鬼と戦うのもそうだが元々争いごとは好きでは無い、痛いのは嫌だし苦しいのも嫌だ。
『2人を助けたくないのか?』
 白虎が問うと香穂は首を横に振る、
 そしてかつてジョンを助けてくれた武とアルバイトの時に一緒に遊んでくれている美和、2人供自分の大事な人間だった。
 孤独だった自分を変えてくれたのは武達だった。その2人を助けたい、痛い思いをさせたくなかった。
『香穂、さっきも言ったが僕の力はあまり残っていない、この園内の人間や動物達は僕の兄弟、家族なんだ。だから力を貸してくれ』
「家族……?」
『君はもう何も失ってはいけない、大事な人や物を失う苦しみを誰かに味合わせてはいけない、君がみんなを守るんだ!』
 白虎の願いを聞いた香穂は息を飲んで尋ねた。
「本当に助けられるの? アナタを受け入れれば、私の大事な人達を守れるの?」
 真剣な瞳で香穂は白虎を見る、すると白虎はこう言った。
『ああ、僕を信じて……』
 すると香穂は両手を広げる、
「分かった、来て!」
 その言葉を聞いた白虎は静に目を閉じる、
『ありがとう、香穂!』
 すると白虎の体が白く輝くと一陣の風となって香穂の周りを飛び回り、目の前で元の白い球に姿を変えた。
 それは白虎の宝玉だった。香穂が覚悟を決めて宝玉を握ると強い光が辺りを包み込んだ。

 俺達はもう限界だった。
 怪我の方は玄武が治してくれるが体力までは直せない。
 それは美和さんも同じで無限に光の矢を討てる訳じゃ無い、美和さんの場合は宝玉が無いのでつけれた傷は回復しない、強い精神力で何とか立ち上がっていられるがそれも時間の問題だった。
 かたや鬼の方はまだピンピンしてやがる、1体倒しても残りが蘇らせてしまう、複数を相手に出来る技があるとは言え相手のスピードは半端じゃ無い、
「参ったぜ……」
 麒麟の力も玄武の力も殆ど一直線の攻撃しかできない、
 美和さんの光の矢は複数攻撃はできるが3体同時に倒せるだけの力は無い、倒せるとしたら一点集中させた攻撃でなければならなかった。
「美和さん、あと何発くらい討てる?」
 俺が美和さんを見ると息を荒くしながら言った。
「……単体なら一つ、複数なら二つ程度です……武様は?」
「俺もそれくらいだ……」
 麒麟の力もそうだが玄武はパワー重視で硬い鬼には有効だがかなり力を使う、どんな攻撃だって当たらなければ意味はない、
 鬼達はジリジリと近づ居て来ると俺達は後ずさりする、
 すると突然突風が吹き荒れると鬼達が吹き飛んだ。
『『『ギャアアッ』』』
 鬼達はアスファルトに転がり風の吹いた方を見る、するとそこにいたのは香穂ちゃんだった。でもその姿は……
「か、香穂ちゃん?」
 香穂ちゃんの両手には長い柄に先端が白い虎の手を模した杖状の武器が握られていた。その後ろには加奈葉もいる。
「そ、それ、何だ?」
「……白虎!」
 美和さんが言う、
 すると杖から声が聞えた。
『やあ美和、久しぶり! しばらく見なかったけど元気だったかい?』 
 何か陽気な奴だな、こっちは大変だったってのに……
 すると香穂ちゃんと白虎は俺達の隣に並ぶ、
『僕が着たからにはもう大丈夫だよ、そっちの少年君も準備はいい?』
「誰が少年君だ!」
 鬼達は新たな敵に牙を向き爪を光らせる、
『う〜ん、こいつら面倒だね〜、でもちゃっちゃと終らせるよ!』
「言われなくても分かってるよ、でもこいつ等速過ぎんだよ!」
『だったら君も速く走ればいいじゃないか、』
「あのな、それができたら…… あっ!」
 俺は思い出した。
 玄武が力を取り戻した時、あの時麒麟に新しい力が加わった。すると今回も……
「やっぱり!」
 左手で麒麟の宝玉を見る、
 すると麒麟の宝玉は輝いていた。今度は鬼斬り丸の刀身が金と白の光が螺旋を描いていた。
『ご名答、見た目と違って中々賢いね。』
 一々ムカツク野朗だ……
 こいつ本当に聖獣か? そう疑っていると後ろで加奈葉が噴出しやがった。後で覚えてやがれ!
「やめて白虎! 今は力をあわせて!」
『はいはい、それじゃ行くよ!』
 その途端香穂ちゃんが目にも止まらぬ速さで鬼に突っ込んだ。
 途端鬼の方も同じくらいの速度で香穂ちゃんとぶつかると鈍い音が辺りに響きその度に強風が吹き荒れる。
「きゃあっ? 何なのよこれぇ?」
 加奈葉は片手で髪、片手でスカートを抑える、ようするに白虎は風みたいに速く動けるようになるって事か……
「武様、いくら白虎の力を持っても香穂様一人では危険です、早く助けに!」