陰陽戦記TAKERU 前編
俺は女の子を幼馴染の両親が経営している診療所に連れて行った。
ここは俺が子供の頃から世話になっている診療所で、一々携帯使って病院に連絡するよりこっちの方が早かったからだ。
しかし生憎小父さんも小母さんも留守だったので幼馴染に頼み込んでオレは廊下で待っていた。
「……ふぅ」
扉が開くとその幼馴染が出て来た。
ボブショートに白いTシャツとジャンパースカート、名前は宮内加奈葉、小学校からの腐れ縁だった。
「武、あの子一体どうしたのよ?」
「どうしたって…… 言われてもなぁ……」
俺は説明に困った。
まさか空が割れて降って来たなんて言っても信じてくれそうに無かったからだ。
「怪我は見た目ほど大した事はないからすぐ目が覚めると思うけど、明らかに殴られた傷じゃ無かったわ」
最初はDV男に酷い事をされたのではないかと思われていたが、どうも殴られたり蹴られたりと言う怪我では無いと言う、
よく家の手伝いをするのでそのくらいは分かるらしい、俺なんかちっとも分からない、
「とにかく詳しい事は目を覚ました時に聞いて見ましょう、あと警察にも連絡した方がいいかも」
「そうだな」
俺は頷いた。
かなり風変わりな格好をしていたし刀も本物っぽいからとてもまともな状況じゃ無い事は分かった。
俺も後で事情聴取とかされるんだろうな、上手い言い訳を考えて置いた方がいいかも、
ちなみにその刀は俺が座っていたソファーの横に置いてある、
彼女の腰に鞘があったから彼女の物だと言う事は分かった。鞘に収めて俺が預かっている。
ちなみに弓の方は彼女を病室に連れて行った時にベットの横に置いて置いた。
まぁこっちは矢がないから安全だろう、あと玉の方は俺が持っている、目が覚めたら返して置こう。
「ん?」
すると病室から物音が聞えた。
加奈葉が女の子が起きたのだろうと扉を開けるがそこには女の子の姿が無かった。
窓が開いてカーテンが揺れている、間違いなく外に出た後だった。
「逃げた?」
「俺行ってくる!」
そう言うと俺は玄関から外へ出た。
「あの子は?」
俺は周囲を見回すが彼女の姿は無かった。
本当なら厄介事はゴメンな俺だがあの子を見た時、何故かほおって置く事ができなかった、それは俺にも分からなかった。
作品名:陰陽戦記TAKERU 前編 作家名:kazuyuki