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陰陽戦記TAKERU 前編

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 俺は全体重をかけた一撃を奴の脳天にお見舞いした。
 やっぱり効かなかったが一瞬だけ動きを止める事が出来た。俺は拓朗の前に降り立った。
「拓朗、大丈夫か?」
 見た感じ怯えているが怪我は無い、
 鬼は邪魔された事に怒り俺に攻撃を仕掛けてくるが背後からも美和さんが援護をしてくれた。
 今度は一点集中した光の矢が鬼の頭部を狙った。
『ゴガッ?』
 あまり大した効果は無いが威力はあったらしく前に倒れてしまった。
 しかし美和さんもただではすまなく力を使い果たしその場に膝をついた。
「美和さん!」
「大丈夫ですよ…… それより彼を!」
「うん、武! 急いで!」
 加奈葉が言うと俺は拓朗と避難しようと思ったがその時、鬼の顔がこちらに向いた。
 そして口を大きく開いて怪光線を放ってきた。
「しまっ……」
 気付いた時には遅かった。
 やられた! っと思ったその時、突然目の前に巨大な氷の柱が現れて俺達を助けた。
「なっ?」
 すると突然地響きが起こると俺達の足元が盛り上がると巨大な怪獣が出現した。
「な、何? こんな時にまた鬼?」
「いえ、これは!」
 すると美和さんは大きな瞳をさらに見開いた。
「玄武……」
 俺達の足の下には尾が鎌首を立てた蛇、体が巨大な亀が力強い4つ足で立ち上がっていた。
『オオオーーーッ!』
 亀の首から猛吹雪が吹き荒れ鬼を氷漬けにしてしまった。
 すると蛇の鎌首がこちらを見る、
『少年よ……』
「えっ?」
 すると地鳴りのような声が俺の頭の中に響いて来た。
 隣りでは同じ反応をするので拓朗にも聞えるみたいだった。
 少年と言うのは拓也の事らしい、
『我はずっと見ていた。お主の事を……』
 玄武は二月前にこの山に落下し地中深く潜り回復に専念した。
 しかし一月程前に拓朗がこの山で鳩を介抱し始めた。
 その優しさを見た玄武はリゾート開発に来た人間を追い払い誰も近付けないようにしたのだと言う、
『心優しき少年よ、突然ですまぬが我等と供に戦ってはもらえまいか?』
「ぼ、僕が?」
 拓朗は困惑する、
 いきなり戦えと言われて困らない方がおかしいだろう、
 しかし事態は急を要するとはこの事だった。
『この世界に暗黒の化身が舞い降りている、全ての者が闇に飲み込まれてしまう、この若者達と供に全ての命の為に戦ってもらいたい、頼む』
 玄武が目を閉じる、すると拓朗は少し考えると自分が持っている鳩を見た。
 突然怖い者が現れて怯えているのが分かる、眉を細めた拓朗は力強く頷いた。
『よし、ならば我が力、お主に委ねる! 我が名は玄武、土の聖獣なり!』
 すると玄武の体が眩い光を放つとその巨体を俺が持つ麒麟の宝玉くらいの大きさの宝玉に変えると大地に降り立ち拓朗の差し伸ばした右手に収まった。
「これが…… あっ!」
 俺達はすっかり忘れていた。
 しかしその時、氷を砕いて鬼が自由になりつつあった。
「武ぅーっ!」
 すると美和さんを連れて加奈葉がやって来た。
「美和さん、平気か?」
「え、ええ、少し力を使い過ぎただけです……」
「3人供は下がっててくれ、後は俺が……」
「いえ、僕もやります。」
 すると拓朗は一歩前に出る。
「玄武の声が聞えるんです、あいつを助けてくれって……」
 あいつとは鬼の事だった。
 何でそこまで? 欲望に飲み込まれて鬼になった奴だぜ、
「例え鬼になっても命は1つです、それは人間や鳥だって同じです。」
 すると拓朗はダンボールを加奈葉に渡した。
「こい玄武っ!」
 拓朗が玄武の宝玉を掲げると拓朗を中心とした地面が砕けて宙に舞うと玄武の宝玉に集まって1本の黒く柄の長いハンマーとなった。
「せりゃあっ!」
 拓朗がハンマーを振り上げて思い切り殴りつけた。
『ゴガアッ!』
 その一撃は俺の攻撃より重いらしく鬼は思い切り吹き飛ばされた。
「す、すごい!」
「マジかよ?」
 俺も正直目を疑った。
 これが玄武の力なのか?
「だりゃああっ!」
 拓朗の渾身の力を込めた一撃は鬼の鎧に亀裂を入れた。
『ガアアッ!』
 鬼は肩のショベルを伸ばして拓朗を攻撃する、
 拓朗はそれをハンマーで弾くが武器が重いのか動きも鈍かった。
 鬼の方も鎧のせいで上手く動けないが体格差があるので拓朗の方がやや押され始めていた。
「あいつあのままじゃやられる、俺もいかないと!」
「だけどアンタは怪我して……」
「いや、怪我は治った!」
 それは本当だった。
 さっきから俺を苦しめていた痛みがいつの間にか無くなっていた。
「それは玄武の気に触れたからです」
 美和さんは説明する、
 玄武は土を守護する為に傷ついた相手を回復したり癒したりする能力があると言うのだ。
「そう言えばさっきから力がみなぎって来る…… あっ!」
 そう思ったら上着のポケットが光った。
 麒麟の宝玉が輝いていたのだ。
「玄武が蘇ったおかげで麒麟も少しだけ力を取り戻したんです」
 心なしか鬼斬り丸も金色の光がいつもより強くなっているような感じがした。
 力を取り戻したって事は俺も拓朗みたいに戦えるって事か、
「よぉし!」
 俺は両手で柄を握り締めると確かに伝わって来た。
 今ならできる、その核心はあった。
「拓朗、下がれ!」
 俺は叫ぶと両足を広げて鬼斬り丸を大きく掲げた。
 途端鍔元から黒い光が溢れ出して金色の刀身に巻きついて螺旋を描くといつもより巨大な光の刃が出来上がった。
「うおりゃあああっ!」
 俺が勢いよく振り下ろすと刀身は鬼の左肩から脇腹を切り裂いた。
 あれだけ硬かった鬼の鎧がたった一撃で真っ二つになった。
『ガ…… ガァアアアッ!』
 鎧が亀裂から罅を立てて砕けると鬼はその場に倒れた。
「か、勝った!」
「やったぁ!」
 拓朗は肩の力を落とし加奈葉は飛び跳ねる、しかし美和さんだけが何か納得できないようだった。
「武様、早く止めを!」
「えっ?」
 俺が美和さんを見たがその瞬間、鬼が上半身を起こして口から光線を発射した。
 こいつまだ死んでなかった!
「うわああっ!」
 俺は慌てて交わすが光線は境内を破壊してしまった。
「この野郎っ!」
 俺が切っ先を向けるが鬼は事切れたようにその場に倒れた。
 そして大爆発して元の土居竹会長の姿に戻った。
 彼も完全に鬼に飲み込まれていた訳では無いらしく、衰弱は激しいが何とか生きてるみたいだった。
 俺達は会長を連れて下山した。