陰陽戦記TAKERU 前編
俺達は現場監督や土井竹会長に事情を話した。
「何だって、子供が?」
現場監督の方は素直に驚いた。
しかし会長の方は山を見て話を聞こうともしなかった。
そんな会長に現場監督は爆破中止を要請した。しかし帰ってきた言葉は……
「爆破しろ」
「なっ?」
俺達は信じられなかった。
人の命より開発が大事だってのか? しかし現場監督は会長に出て言ってくれた。
「いえ、爆破は中止します。何と言おうが人命に関わる事に手を貸すわけには行きません」
その言葉を聞いた会長は現場監督の胸倉をつかんで持ち上げた。
信じられない怪力だった。
「役立たずが、もういい……」
何と会長は現場監督を放り投げた。
途端車にぶつかって地面に倒れて気を失った。
「大丈夫ですか?」
加奈葉と美和さん、彼の部下達も心配で駆け寄る。
「おいテメェ!」
しかし俺の言葉なんか聞えないかのように前に進むと起爆スイッチに手をかけた。
まだ作業している人間がいるんだぞ!
「みんな逃げろ!」
俺が叫ぶ、すると会長が起爆スイッチを押そうとしているところが目に映った作業員達は慌てて逃げ出した。
スイッチが押されると仕掛けられたダイナマイトが一斉に爆発した。
閃光が煌いて轟音が周囲に響き渡ると供に土煙が舞い上がった。
「なんて事を……」
美和さんは俺に近寄る、
だが俺達は信じられない物を見た。
「何っ?」
土煙が晴れると目に映ったのは巨大な氷の壁だった。
それが爆破を遮り山を守った。崩れたのは入り口の一部分だった。
俺達はその状況に固まって動けなかったが1人だけ何事も無かったかのように動く者がいた。
それは土井竹会長で、しかもこの状況を見るなり口元を歪めて笑い出した。
「やはり出てきたか…… 玄武ッ!」
「玄武?」
その事を知っているのは限られている、
俺と美和さんと加奈葉を除けば……
「カアアアアアッ!」
土井竹会長は大きく口を開けると黒い煙が飛び出して土井竹会長を包み込んで黒い球体となった。
これは香穂ちゃんの時と同じく人間が鬼になると言う物だった。
『ゴアアァァーーーッ!』
そこに現れたのは今まで見て来た中で巨大な鬼だった。
全身黒く長い体毛のゴリラのような額から一本の角を生やした鬼だった。
『グオオオッ!』
鬼は巨大な拳で氷壁を殴りつけた。
「助けてくれぇ〜!」
「化け物だぁ〜!」
作業員達は皆鬼の出現にパニックになり逃げてしまう、その方が良い!
「美和さん!」
「はい!」
美和さんは弓を構えて弦を引くと光の矢を作って放つ。
「滅っ!」
光の矢は鬼の肩に突き刺さると黒い陰の気が煙のように噴き出した。
『ガアアッ!』
鬼は痛みに顔を歪めてこちらを見る、
すると口元を歪めて鋭い歯を剥き出しにする。
「単細胞め!」
俺は鬼斬り丸を鞘から抜くと鬼に向かって飛び掛る、
鬼は俺に向かって強烈なパンチを繰り出してくるがそんなん通用しねぇ!
「だりゃあっ!」
俺は体を捻って回避、地面にめり込んだ腕に一撃お見舞いした。
『ギャアアッ!』
効いてる、
見かけがでかく腕力があるってだけでこいつは大して強くない、
俺と美和さんが力を合わせればどんな敵にも負けるはずがない、このまま一気に叩きのめす!
作品名:陰陽戦記TAKERU 前編 作家名:kazuyuki