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陰陽戦記TAKERU 前編

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「きゃあああっ!」
 突然俺達の耳に悲鳴が聞えた。
 この声は香穂ちゃんだった。
「何だ?」
 俺は香穂ちゃんが行った方へ向かう、そこは墓地の近くの駐車場だったが香穂ちゃんの前に鉄パイプと金属バットを持った今時リーゼントにグラサンと言う嫌に古めかしい不良が立っていた。
 俺達と同じくらいの年で着ている制服は確か不良で有名な石門高の制服だった。
「うへへへ……」
「げへへへ……」
 2人はジリジリと香穂ちゃんに近づく、
「あいつら、何しやがる!」
 俺は香穂ちゃんの前に立つと不良の目が完全にイっていた。
「こいつらまさか……」
 また鬼に憑かれた奴等かよ……
 空を見ると西の空に太陽が沈みかけている、つまり時間的におあつらえ向きって訳か、俺はポケットから麒麟の宝玉を取り出して構えた。
だがその途端信じられない事が起こった不良達の口や耳から黒い煙が出てくるとそれは二人を包み込んだ。
 煙が晴れると目の前には信じられないものが映った。
 そこには頭部と下半身が下半身が牛と馬、上半身だけが人間のようになった2体の鬼が出現した。
 いや、出現したのでは無い、鬼は始からそこにいたのだ。
「に、人間が鬼に?」
「武様!」
 美和さんも戦闘に踊り出る、ちなみに加奈葉は遥か後方で腰を抜かしていた。
「美和さん、これは?」
「鬼が2人の姿を媒介に鬼と化したんです」
 人に入った鬼が陰の力を吸収し臨界点を突破すると鬼は体を憑依している体を乗っ取り鬼に姿を変えてしまうという。
「じゃあ2人は?」
「人の方は倒せば元に戻ります。完全に心を支配されていなければ……」
 でも見るからに完全に支配されてるよな、何て冗談言ってる場合じゃなかった。やるしかねぇって事だよな!
「鬼斬り丸!」
 麒麟の宝玉で鬼斬り丸を呼び寄せる、
 ちなみに今回は屋外なので簡単に呼び寄せられた。
「美和さん、香穂ちゃんを頼む!」
 俺はそれだけ言うと鬼斬り丸の鞘を抜く、
「グモオオオオッ!」
 牛の鬼が俺に迫ってくる、
 巨大な拳が俺にぶつかろうとしたが俺は素早く身を交わした。
 だが鬼の拳はそのままアスファルトを砕き巨大なクレーターを作ってしまった。
「マ、マジかよ……」
 こんなんまともに喰らったらミンチじゃ済まない、今まで戦った鬼の中で一番力があった。
 すると後ろに気配を感じて振り向くとそこにはいつの間にか馬の鬼がいた。
「なっ?」
 俺が身構えようとした瞬間、馬の鬼の方が早く動いた。
『ビヒィィィンッ!』
 後ろ足で踏ん張り前足を持ち上げると強力な即答蹴りが俺に炸裂した。
「がはっ!」
 俺は美和さんと香穂ちゃんの頭上を飛び越え加奈葉の方まで飛ばされてアスファルトの地面にバウンドして転がった。
「た、武!」
「ぐっ……」
 体に力が入らなかった。
 ただ意識だけがしっかりしていて2匹の鬼は美和さん達に近づいてくる。
「くっ!」
 美和さんは上着のポケットから紙切れを取り出した。
「燕命!」
 紙切れが輝くとそれは燕のような小さな鳥となった。
 それは美和さんの式神だった。
 式神は鬼の周囲を飛び回り鬼を翻弄する。
「今の内に!」
 美和さんは香穂ちゃんを立たせて逃げようとする、
 しかし牛の鬼の強力な張り手で燕の式神は地面に叩きつけられると消滅した。
「きゃああっ!」
 途端美和さんが体を仰け反らせてその場に倒れた。
 それは式神は自分の法力で造り上げた使い魔、よって式神がやられた傷は全て術者に返ってくると言う。
「うう……」
「あ、ああ……」
 香穂ちゃんはショックで声も上げられない状況だった。
 そこへ馬の鬼がやって来て右手をあげると巨大なトゲ付きの金棒が現れた。
 それを振り上げて美和さん達に振り下ろした。
「やめろっ!」
 俺は叫ぶ、するとその時だった。
 突然香穂ちゃんのポケットから黒い煙が吹き出して人間位の球体になると鬼の金棒を弾き飛ばした。
『ビヒィィンッ?』
 馬の鬼の方もそのまま倒れると驚いた事に香穂ちゃんから出た黒い球体はその2倍ほど大きくなると形を変えて鬼となった。
「なっ?」
 それは黒い燃える様に逆立った体毛に1本角、赤い瞳の犬型の鬼だった。
 口が開くとノコギリのような鋭い歯を剥き出しにして大きく吠えた。
『グオオオッ!』
 何てこった……
 1体でも厄介なのに3体も、こりゃさすがに戦うどころじゃない、逃げるのが懸命だろう。
 ようやく自由が利くようになった体に鞭打って俺が立ち上がると加奈葉が心配してよってきた。
「武!」
「加奈葉! 俺が囮になるからその隙に……」
『ガアアアッ!』
 すると犬の鬼の方に変化が現れた。
 大地を蹴ると立ち上がろうとした馬の鬼の首元に噛み付いたのだった。
『ビヒィーーーッッ!』
 噛み付かれた箇所からどす黒い煙が噴出すと馬の鬼は断末魔を上げて消滅、元の人間の姿となった。
「うう……」
 元に戻った不良は生きていた。
 どうやら完全に乗っ取られていなかったらしい、って言うかどうなってんだ? 仲間割れ?
「美和さん!」
「た、武様……」
 俺は美和さんの側による、
 ある程度ダメージは負ってるみたいだがそれほどの事でもないみたいだった。
「美和さん、あれは一体?」
 見ると今度は犬の鬼が牛の鬼に飛びかかった。
 だがパワーは牛の鬼の方がやはり高いようで相手の体を引き剥がして地面に叩きつけた。
『ガアアッ!』
 犬の鬼は痛みに体を仰け反らせるが真っ赤な目が見開くと口から紅蓮の炎を噴出した。
『グモオーーーッ!』
 火力に押されて牛の鬼は思わず後ろに引き下がる、その光景はテレビの特撮か怪獣映画でも見てるような感じだった。
「そちらの方……」
 美和さんが指名したそっち、
 それは犬の鬼の方だが鬼からは陽の気を残していていると言う。
「どう言う事?」
「後から現れた鬼の方も確かに暗黒天帝の力で鬼になりました。でも先ほどの二体とは違い陰の気が膨らんで鬼になったのでは無いみたいです」
 しかしそれは美和さんにも分からなかった。
 だけど犬の鬼の方は香穂ちゃんのポケットから出てきた。
 つまり香穂ちゃんには憑依していた訳では無いと言う事になる。
「ジョン……」
「えっ?」
「何だって?」
 香穂ちゃんは犬の鬼を見て言った。
 つまりあの鬼は彼女の死んだ愛犬と言う事になる。
「犬が…… 鬼に?」
 全く訳が分からなかった。
 だが今はそんな事を言ってる場合じゃ無いない!
「とりあえず両方倒す!」
「待って!」
 すると香穂ちゃんが俺を止めた。
「倒すって、ジョンを?」
「あっ、うう……」
 俺は目を泳がせた。
「お願い、ジョンをイジメないで!」
 香穂ちゃんは悲願する、
 だけどこのままほおって置いたらどうなるか……
 だけど鬼とは言え香穂ちゃんの家族だ。
「どうすれば…… あっ!」
 すると炎の中から牛の鬼が出てきて犬の鬼…… つまりジョンを殴り飛ばした。
『ガウゥッ!』
 アスファルトに転がるジョン、
 しかしジョンはふら付いた足で立ち上がると牛の鬼をにらみつけた。
「何であそこまで……」
 やっぱり訳が分からなかった。
 だがジョンはどこか苦しそうだった。ダメージが深いのか?