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陰陽戦記TAKERU 前編

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 俺は香穂ちゃんの両親の墓に手を添えた。すると香穂ちゃんの小さな口が開いた。
「……どうして?」
「ん?」
 俺は返す、
「どうして…… ここが?」
 俺は鈴華さんに聞いた事を話した。
 ちなみに美和さんと加奈葉は別の所から俺達を見ている。
「俺の両親も…… ここで眠ってるんだ、」
「えっ?」
 すると香穂ちゃんは俺を見上げた、
「去年にな、バスの事故でよ……」
 俺は苦笑した。
 すると数秒間を置いて香穂ちゃんは言った。
「……寂しく、無いの?」
「……どうだろうなぁ」
 確かに最初はそうだった。
 でもいつからだろうな、慣れちまって普段通りの生活に戻ったのは……
「まぁ、俺には残ったのがあったからな…… お節介な口うるさい馬鹿やパソコン馬鹿にカメラ馬鹿に大食い馬鹿に……」
 結局俺の周りには馬鹿しかいなかった。
 え、美和さん? そんな訳は無い、美和さんは賢いし奇麗だし性格も含め全てが完璧だ、彼女を馬鹿にするなら俺が黙ってない…… などと考えていると香穂ちゃんはポケットから携帯電話を取り出した。
 ストラップに赤い紐で縛られた牙みたいな物がぶら下がっている。
「これ…… ジョンの牙なんです」
 ジョンって言うか本当に牙だったのか……
「ジョンは…… 私の1番の友達でした」
 牙の主は香穂ちゃんを庇うようにして亡くなった犬の名だった。
 今よりずっと小さかった頃に父親の友人から貰ってきて何をするにもずっと一緒に居ていつしか本当の姉弟のように思えてきたと言う、
 しかしジョンは火事で逃げ送れて泣いていた自分を庇う為に瓦礫の下敷きになったのだと言うのだ。
「ジョンだけなら逃げられた。私が泣いてたせいで……」
 すると香穂ちゃんは両肩を震わせて泣き出してしまった。
 ま、まずい、後で加奈葉に殺される……
「ご、ごめんなさい!」
「あ、香穂ちゃんっ!」
 香穂ちゃんは走り去って行った。
 そこへ背後から案の定怒りのオーラを滾らせて拳を鳴らしながら加奈葉がやってきた。
「た〜け〜るぅ〜……」
 もはや俺の運命は決定した。
 俺は今日ここで死ぬ……