陰陽戦記TAKERU 前編
俺は新聞を見ていた。
昨日有料駐車場やパーキングエリアに止められていた車が一斉に潰されると言う事件が多発した。
犯人の手口から同一犯と思われるが犯行時刻と場所がかけ離れている事から何らかの組織による犯行と言うのが警察の意見だった。
他にも突然のビル火災や銀行の金庫が怪力でこじ開けられ現金が盗み出されると言う事件が多発していた。
「これってやっぱり…… 鬼の仕業よね?」
加奈葉が味噌汁を啜りながら言う、
「だろうな、普通じゃ考えられねぇよ」
鬼の動きが確実に活発になってる、
暗黒天帝が力を取りもしつつある証拠だった。
俺達にできる事と言えば聖獣を探す事だけど手がかりすら見つかってない、
「ちょっと武」
「ん?」
加奈葉は俺の隣りにある納豆の蓋が開いていない事に気付いた。
こいつにどんなマイブームが訪れたのか知らないが最近朝食には必ず納豆が出てくる、いつも残している俺がいい加減に気になったのだろうついに口を挟んできた。
「好き嫌いは駄目だって言ってるでしょうが!」
「ああっ? 納豆なんか食わなくたって死なねぇだろ!」
「武様っ!」
すると美和さんが眉を釣り上げテーブルを叩きつけた。
その気迫に隣りの加奈葉さえもたじろいだ。
「私の世界では食べたくても食べられずに飢えて命を落とす人達がたくさん居ました、それなのに食べなくても死なないとは何事ですかっ!」
美和さんは怒り両肩を震わせその瞳に俺は恐怖を覚えた。
彼女が怒ると鬼よりも怖かった。
俺は学校が終わって小学校を訪れた。
あまり近づくと不審者だと思われるので近くの街路樹に身を隠した。
もちろん目的はあの子、別に疑うって訳じゃ無いが今はあの子を調べるしかなかった。
「何やってんだ、俺は……」
時間が立つに連れて俺は自分のやっている事に不快な気持ちを覚えた。
今の姿を他人が見ればほぼ100%間違いなく不審者どころか幼女狙いの変質者に見えるだろう、
一応誤解の無いように言って置くが俺は子供は正直に可愛いと思う、だが間違っても犯罪には走ったりはしない、神だろうが仏だろうが今ここで誓ってやる、そこまで俺は落ちぶれてはいない!
今朝は美和さんに怒られるしついてねぇぜ……
「あっ?」
俺はその時、あの女の子が出てくるのに気付いた。
小さめのポニーテールに赤いリボン、間違いない……
「ん?」
しかしある事に気付いた。
周りの子供達はその子を見るなり避けたり遠ざかったりとまるで汚い物を見るかのように冷たい視線を送っていた。イジメられっ子なのか?
「おいおい……」
俺はずっとその子の後をつけると家を突き止めた。
風祭神社と言う俺の高校から近い神社だった。
「初詣以来だなここに来たの」
俺は鳥居をくぐり社に入る、
平日だけあって人気は無いが奇麗に掃除されている、辺りを見回すが女の子の姿はどこにも無かった。
「あの、何かご用ですか?」
俺の側に1人の女性が近づいてきた。
見るからに大学生くらいの大人の女性だった。
この神社の巫女さんだろう、巫女服を着て髪を整えている。
「えっ、ああ……」
俺は困った。
まさか女の子を追って来たなんて言う訳にもいかないし……
そんな事を思っているとあの子が本殿とは離れた事務所の方から歩いて来た。
「あっ……」
女の子は俺と目があうと両肩をビクつかせた。
「や、やぁ」
俺は手を上げると女の子は俺の前を横切り逃げていってしまった。
すると巫女さんが訪ねる、
「香穂の知り合いの方ですか?」
香穂…… あの子の名前だよな?
俺は昨日の交通事故の時に彼女と知り合った事を話した。
「まぁ、そうだったんですか、有難うございました」
まぁ知り合ったって程じゃ無いけどな、そこまで言われると何だか恥ずかしくなった。
作品名:陰陽戦記TAKERU 前編 作家名:kazuyuki