陰陽戦記TAKERU 前編
そう思っていると店内に異変が起こった。
「ん?」
突然電気が切れた。
他の客達もざわめき始める、停電か?
「参ったな…… 降りてみるか?」
俺達は一階に降りてみる、すると防犯シャッターが降りて来て出入り口を塞いでいた。
つまりデパート内の客達は閉じ込められたと言う事になる、
客達がざわめきはじめ、やがて怒りだすと責任者だろう、背広を着た男とガードマン風の男が数人やって来て扉を開けようとする、
責任者風の男が説明をするとどうやら防犯システムに異常が発生してしまったらしい、原因を調べているので少し待って欲しいと言う、しかしそれで客が納得する訳ではない、
そう思っていると何と信じられな事が起きた。
客の1人が飛び出して買い物袋の中からスパナを取り出すと関係者の男を殴りつけた。
「きゃああああっ!」
客達が悲鳴を上げる、
俺も思わず空気を飲んだ。
「うへへぇ……」
男の目はイっていた。
オレは数日前の事件を思い出すと美和さんが叫んだ。
「武様、鬼の気配です!」
「えっ、じゃあやっぱり……」
美和さんの言うとおり複数分裂する鬼だという、
すると客達も男女問わずに暴れ出し店内はパニックに陥った。
「こ、こんなに鬼が?」
俺が周囲を見渡していると突然背後から鬼に操られた男が襲い掛かった。
「うおおおおっ!」
「きゃああっ?」
「加奈葉っ!」
俺は加奈葉を庇う、
しかし今度は美和さんが背後から来た男に首を締められた。
「あうっ!」
「美和さんっ、このっ!」
俺は男の顔に一撃をお見舞いする、
男は吹っ飛んじまった訳だがそんなん後回しだ。
俺は美和さんを助けようとしたが……
「はぁ!」
美和さんは背後の男の腹部に肘打ちをお見舞いすると男の手を払い回し蹴りを放った。
「ぐはっ!」
男はその場で気を失った。
「つ、強ぇ……」
格闘技でもやってるのかと思った。
そう言えば平安時代で戦ってたんだから身を守る術くらいはあるか……
「武様!」
「あ、はい?」
俺は思わず敬語になると美和さんは言った。
「鬼を倒しましょう」
「倒すってこんなにいるのに?」
「全てを倒す必要はありません、根源を断てば良いだけの事です」
美和さんが言うには複数で動く鬼は全てそれを統轄する『親』がいると言う、それを倒せば『子』は消滅するらしい、
「でもどこに?」
デパートは広い、1つづつ調べてたら被害が大きくなる。
すると加奈葉がある事を思い出した。
「あ! もしかしたらあそこじゃない?」
「どこだよ?」
「ほら、言ってたじゃない、コンピューターに異常が起ったって、多分そこにいるのよ!」
「そうか、でもコンピューターって……」
「こっちです!」
すると美和さんは強力な鬼の気配を感じたと言う、
俺達は美和さんに着いて行くとそこは事務室だった。
扉を開けるとそこは異常な世界だった。
パソコンから黒い煙のような物が噴出し、宙で渦を巻いていた。
「ビンゴって訳か……」
「来ます!」
美和さんが身を構えると黒い渦は形を変えて象くらいの大きさの丸い卵形の体に8本の足、3つ赤い眼球に2本の牙が生えた黒い蜘蛛となった。
『ギシャアアッ!』
鬼の目が輝くと赤い光線が放たれて俺達を攻撃した。
「うわっ!」
俺達は左右に分かれて攻撃を回避する、
「野郎!」
俺は麒麟の宝玉を手に取り鬼斬り丸を呼び出そうとする、だが麒麟の宝玉はウンともスンとも言わなかった。
「なっ、壊れたのか?」
「武様、麒麟はまだ完全に回復した訳ではありません、鬼の気が強い場所では鬼斬り丸は呼べません。」
「そ、そう言う事は早く言って…… うわっ!」
壁が砕かれると鬼は廊下に飛び出した。
すると鬼の目は美和さんと加奈葉の方に向けられた。
「ひっ!」
初めて鬼を見た加奈葉は美和さんにしがみ付いて震え出した。
俺は砕かれた壁の一部を拾うと鬼に向かって投げつけた。
「テメェの相手はこのオレだ! こっちに来い!」
俺は走り出すと案の定鬼は俺の方に向かって来た。単細胞名な奴だぜ!
作品名:陰陽戦記TAKERU 前編 作家名:kazuyuki