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陰陽戦記TAKERU 前編

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 そしてバスに揺られて30分後、俺達は隣町の駅前デパートにやって来た。
 ここは去年オープンし品揃えも豊富なので俺達のように隣り町から買いに来る客も多い、
「うわぁ……」
 美和さんはデパートを見上げた。
「ここはどんな貴族のお屋敷なんですか?」
「違うよ美和さん、ここがデパート、買い物をするところだよ」
「色々なお店がこの建物の中にあるのよ」
「そうなんですか、すごいですね……」
 美和さんは素直に感心する…… とその時だ。
 デパートの近くで見慣れた顔を発見した。
 それは学だった。黒いリュックを背負っている。俺は学に声をかける。
「学」
「ん、武か?」
「お前も買い物か?」
「お前も?」
 俺はここに買い物をしにきた事を話した。
「これから人と会う約束をしてるんだ。ちょっと時間があったから参考書を買ってたんだよ」
 学は背負っているバックを指差した。
 すると加奈葉が俺を探しやって来た。
「ちょっと武、何やって…… あれ、学?」
「やぁ」
「こいつこれから人と合うんだってさ」
「そうなの? あ、良かったらその人と一緒に買い物に行かない?」
 すると学は目を泳がせた。
「……ああ、それもいいんだけど、実はその人がいるの病院でさ、手術したばかりで外に出る事ができないんだよ」
「じゃあしょうがないな、早く行ってやれ……って、呼び止めたのオレか」
「そうだよ武、じゃあ僕はこれで……」
 学は背を向けて去って行った。
「さぁさぁ、私達も行くわよ、美和さんも待ってるんだから」
「あ、ああ……」
 俺は入り口の側で待つ美和さんと合流し店内に入った。
 ゴミ1つ無い奇麗な店内、買い物客で賑わっている。俺は入り口にある案内表を見る、
「ええと、日用品売り場は……」
「ちょっと武、早くしなさいよ〜っ!」
 するといつの間にか加奈葉達はエレベーターの方にいた。
「ちょっと待てよ、日用品の売り場調べてんだよ!」
「そんなの後でもいいわよ、とりあえず先にブテックに行くわよ! 今年の夏の最新が出てるんだから!」
 お前の目的はそれか、って言うか美和さんの買い物なのにお前がはしゃいでどうするんだよ?
 と思いつつ俺はため息をつきながらエレベーターに乗った。
 もちろんこれも美和さんは驚いたのは言うまでもない、やれ『部屋が動いた!』とかエスカレーターを見ては『階段が動いてる!』とか言って真顔で指を差した。
 気持ちは分かるが恥ずかしがった。
「さぁさぁ美和さん、お着替えの時間ですよ〜!」
 そう言うと二人は試着室に入った。
 今中では美和さんを加奈葉が着替えさせている、そう思うと顔が熱くなった。何を考ええてるんだ俺って奴ぁ〜……
「ねぇねぇ武!」
 すると加奈葉がカーテンを開ける、するとそこにいたのは美しく着飾られた美和さんだった。
 ノースリーブの白いワンピースだった。俺は思わず見とれてしまった。
「ど、どうですか? 武様?」
 美和さんは少し恥ずかしそうだったが凄く似合っていた。
 これで麦藁帽子を被りながら浜辺を歩く姿が似合うだろう、この場にカメラがあったら俺は迷わずシャッターを押していただろう、って言うか肝心な時にいない和利を俺は一瞬だけ呪った。
「じゃあどんどん行ってみましょう!」
 加奈葉がやる気を出すとモデル美和さんのファッションショーが始まった。
 基本的にスタイルのいい美和さんはどんな服でも似合った。
 白いノースリーブのポロシャツに裾にフリルの付いた青いミニスカート、オレンジのTシャツに上から緑のボレロとデニムスカート、さらにメイド服、巫女服、ゴスロリ……って何売ってんだこの店は?
「まぁまぁいいじゃない、細かい事は気にしないの!」
 細かい事か?
 まぁいい目の保養なのは事実だった。
 とりあえず最初に着た服が気に入ったみたいなのでそれを購入すると服が入った箱を持って店を後にした。
「あの、本当に有難うございました」
「何よ、いきなり?」
「だ、だって…… 普段からお世話になってるだけでなく、衣服まで買ってもらって…… 私には何もできないのに……」
 美和さんは表情を沈めた。
 そんな美和さんを加奈葉は後ろから抱きしめた。
「美和さんは何も考えなくていいのよ、この世界にいる間の衣・食・住は心配しなくていいんだから大船に乗った気でいなさいな!」
 タイタニックにならない事を祈るよ。
 何故かあれ以来加奈葉は美和さんと仲良くなっていた。
 2人の間に何が通じたのかは知らないが、まぁ喧嘩するよりいいか……