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陰陽戦記TAKERU 前編

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 日もすっかり暮れて夜になった。
 夜の闇夜に紛れてビルとビルの隙間の路地裏で美和は鬼の出方を待った。
 武と一緒にいた事故現場から200メートルほど先にある交差点、ここから気配を感じる、夜になった為に鬼の力が強まったのである。
「……私1人で」
 美和は弓の弦を見直す、すると突然武の顔が浮かんだ。
 美和は首を振って迷いを振り切ろうとする、戦いに迷いは禁物、己の命が危うくなる、しかも今まで自分は1人だったのだから今更一人で戦っても何も抵抗は無いはずだった。
 しかし忘れようとしても武の顔が離れなかった。
「一体どうしたの、私……」
 するとその時だった。
 異様な気配を感じて道に飛び出すとそれは現れた。
 周囲のビルの半分ほどある巨大な赤茶けた人骨のような化け物だった。
 長い腕で大地を支え、蛇のようになっている長い下半身で這いずりまわっている。
『ゴオオォ……』
 2つの巨大な空洞になった目に怪しい光が灯ると美和に向かって怪光線を発射した。
 美和はとっさに回避したが光線はアスファルトを砕いた。
「滅ッ!」
 美和は光の矢を放った。
 すると鬼の右肩に当ると大爆発を起こし右肩から下を粉砕した。
「よし」
 美和はある程度回復していた。
 聖獣の宝玉が無くともこのくらいの鬼ならなんなく倒す事ができると思った。
 しかし……
『グオオオッ!』
 鬼が大きく吠えると突如周囲のアスファルトから黒い影のような物が飛び出した。
 それはこの辺りで死んで成仏できずにいる呪縛霊だった。
 それが失った腕に集まるとたちまち元通りに再生してしまった。
「くっ!」
 美和は再び弓に光を溜めるが鬼の方が早く動いた。
 なんと砕かれて地面に落ちた巨大な骨の手がフワリと宙に浮かぶと横なぎ美和をつかんだ。
「きゃあっ?」
 骨の手はさらに強く美和の華奢な体を握り締める、
 すると骨が軋む嫌な音が聞えて美和は呼吸すらまともに出来ない状態となった。
「た…… たけ…… 様……」
 目が霞む美和の脳裏に武の顔が浮かび、すると耳までおかしくなったのだろうか、武の声が耳に入った。
「美和さんを放せっ!」
 美和の失いかけていた意識が覚醒する、
 それは幻覚でも死に間際に見ると言う走馬灯でもない、紛れも無く生きた人間の声だった。

 俺は鬼斬り丸を鞘から抜くと美和さんをつかんでいる鬼の手の甲に切りかかった。
「だりゃああっ!」
 するとどうだろう、刀身が輝くと骨の手がまるで豆腐のようにスッパリ切れて光の粒になって消えてしまった。
 開放された美和さんは地面に落下するが俺が両手で受け止めた。
「大丈夫か?」
 俺は訪ねるが美和さんは俺の腕を振り解くと身構える、
「何をしに来たんですか?」
「何って、助けに来たんだよ」
 俺は鬼斬り丸を見せる、
「どうしてですか? 迷惑なんでしょう?」
 美和さんは目線を落とす、すると俺はため息を零すと肩に手を乗せた。
「落ち着けって、面倒だとは思ったけど、迷惑なんて思った事は無いぜ」
「そんな…… でも加奈葉様は……」
「あいつはちょっと言い過ぎただけだ。本気で言った訳じゃ無い」
 それだけ言うと待たせている相手に向かって切っ先を向けた。
「美和さん、ここは美和さんのいた世界と事情が違うだけなだけなんだ。でも俺は約束を守る、聖獣は探すし鬼も倒す、そして君を守る!」
「えっ……」
 すると美和さんは頬を赤くした。
 ようやく分かったぜ、仮に美和さんに彼氏がいたとしても関係無い、俺は美和さんを守りたい、理由なんか要らない!
「行くぞ骸骨野郎!」
 俺は鬼斬り丸を両手で構えて突進する、
 鬼の方も俺を押しつぶそうと骨の左手で押しつぶしてくるが俺は横に飛んで回避すると身を翻して切りかかった。
『ギャアアアッ!』
 切られた鬼の左手はたちまち消滅する、だが鬼が叫ぶとコンクリートの地面から黒い影が出てくる、何だこりゃ?

「武様、それはこの地に縛り付けられている霊達です。鬼は霊達の無念を吸収して再生しています!」
「じゃあどうすればいいんだ?」
「きっと悪霊を繋ぎ止めておく為の何かが…… あっ!」
 すると美和さんは鬼の眉間に異様に輝く物を見つけた。それは禍々しく描かれた×印だった。
 だが俺の鬼斬り丸じゃどうやっても届かない、刀身は伸びてもかなり差がある、となると方法は一つだった。
 美和さんを見ると美和さんもそれを分かったのだろう力強く頷いた。
「よし、じゃあ行くぜ!」
 俺は鬼斬り丸を高々と掲げると金色の光の光の刃が巨大化する、そして横に大きく薙ぎ払った。
「りゃあああっ!」
 鬼の両腕を打ち砕いて鬼は地に伏せる、勿論鬼は霊達を集めて腕を復元し始めた。
 だが後ろでは弓を構えた美和さんが待機していた。
「消え去れっ!」
 俺が両足を揃えて大ジャンプ、それと同時に美和さんの渾身の一撃が放たれて鬼の眉間を貫いた。
『グギャアッ!』
 すると鬼の体に異変が起こった。
 突然もがき苦しみ出すと体中から蓄えられた霊達が抜け出して行った。
「成仏しやがれっ!」
 そこをオレは光の刃で相手の頭上に振り下ろした。
『ギャアアアアアアアアッ!』
 途端鬼は悲痛な叫びを上げながら光の中に消えていった。
「やったな」
 俺は手を差し伸べた。
 すると美和さんも少し照れくさそうに手を重ねた。
 もう俺達に言葉はいらなかった。