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陰陽戦記TAKERU 前編

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      ―陰陽師―

 それは宮廷に仕え、時刻、天文、暦の作成、都の未来や人の運命を占う官職で平安京を左右する重大な役割を得ていた。
 またこの世の闇に救う鬼、魔物、妖を払う神職でもあった。
「何してんのよ?」
 すると俺の側に加奈葉が居た。
 何故かこいつが横にいても緊張はしない、
「何だお前か……」
「はぁ? 何だとは何よっ?」
 加奈葉が声をあげると周りの者達から注意をされた。
「シーッ!」
「あっ……」
 加奈葉は申し訳ないと言う顔をして頭を下げた。
 そして忌々しそうに俺が読んでる本を横から見た、
「陰陽師?」
 加奈葉はその項目から美和さん絡みだと言う事を察した。
「アンタねぇ、美和さんの事を調べてるの?」
「そ、そんなんじゃねぇよ」
 まぁ、有名な陰陽師は安部清明や芦屋道尊くらいだった。
 しかし美和さんの過ごしていた年代は2人が活躍するさらに前らしい、その記録は残ってない……
「眉唾みたいな話だから記録が無いんじゃないの?」
「仮にそうだとしても何か噂くらいはあるだろ」
「……噂ねぇ」
 その後何の収穫のないまま俺達は図書室を後にした。
 そして自分のクラスに帰ってきた・俺のクラスはいつも笑い声で溢れる事で有名、廊下からでも笑い声が溢れている。
「毎度毎度賑やかだなウチのクラスは……」
「でも今日はいやに騒がしくない?」
 俺達は扉をくぐる、
「武!」
 すると待っていたのは俺達の仲間達だった。男と女が3人づつ、みんな俺の友人達だった。
「どこ行ってたんだよ、先に食っちまってるぞ」
 馬鹿でかい弁当箱を片手にやって来たのは中学時代からの悪友『秋山博』だった。
「ああ、悪い悪い、ちょっと用事があってさぁ……」
 すると博の隣りから揚げパンを頬張るレスリング部の『部戸智之』が顔を覗かせた。
「おいおい、何だそりゃ? 俺達よりも大事な用か?」
「止めなさいよ、困ってるじゃ無い」
 クラス委員長の狩野亜由美が助け舟を出してくれた、
「それよりもさ、何か随分盛り上がってたみたいだけど、何かあったの?」
 加奈葉が聞くと机に腰をかけけた前田和利が写真を見せた。
「見ろ武、心霊写真だ」
「ああ?」
 するとそこに映っていたのは交通事故の現場写真だった。
 衝突してもはや形を留めていない乗用車、そのフロントガラスに確かに人の影みたいな物が映っていた。
「どうだすげぇだろ、昨日帰りに丁度事故現場にいあわせてさぁ」
「ま、10年に1度くらいは特種取るわよね和利は」
 そう言ったのは和利の双子の妹の『前田良子』だった。
「うるせーうるせーなんとでも言えよ、とにかく特種だ!」
「ちょっとねぇ、アナタそれ事故でしょう、警察には届けたの?」
 伊藤弥生、加奈葉の親友で警察長官を父に持っている。
「警察ならもうウジャウジャいたよ、その隙間を掻い潜って……」
「そりゃ犯罪だろ」
 すると教室の中に1人の男子生徒が入ってきた。
 この学校では誰しもが認める有名人、そして加奈葉と並ぶ小学生の頃から幼馴染で大親友だった。
「おお、学」
 こいつの名前は三条学、知能指数300を誇るこの学校始まって以来の秀才だった。
「どこ行ってたんだ?」
「僕はいつも通り、コンピュータールームだよ、武こそどこに行ってたんだ?」
「ああ、図書室」
「図書室ぅ?」
 皆顔を顰めた。
「おいおい、図書室ってお前…… 随分とまぁ似合わない所に」
「ああ? 別にいいだろ、調べ物なんだから」
「だったら学と一緒にいた方がいいんじゃない?」
「無理よ無理、武こう見えて機械音痴だから」
 良子の言う通りだった。
 何しろ俺は携帯電話もつい最近まで使えなかったほどだ。
 パソコンは親父が使ってたのがあるがロクに立ち上げていない。
「簡単だよパソコンなんて、ようは慣れだ慣れ」
 そう言ってくれるのは学だけだった。優しい奴だよお前は……
 その後何事も興らないまま午後の授業の時間を迎えて放課後となった。
「じゃあな武!」
「ああ」
 部活がある連中を残して殆どの者は帰宅する、俺と加奈葉は帰宅組だった。
「さてと、美和さんどうしてるかなぁ……」
 俺は朝から美和さんの事が気になった。
 実は美和さんとは喧嘩と言う訳では無いが少しばかり言い争いになってしまったのだ。
 俺はこの通り学生で学校に行かねばならない聖獣探しを手伝うとは言ったが平日は学校に行かねばならなかった。
 そこへ加奈葉がやって来て説得してくれてとりあえず納得はしてくれた。
 約束を破る結果になってしまったので帰ったら謝ろうと思っていた。
「しょうがないわよ、こっちにだって都合があるんだから」
「そりゃそうだけど…… ん?」
 俺はため息を零すと前方に人だかりが出来ているのを発見した。
 俺達は野次馬を掻き分けて前に出る、すると衝突事故だった。
 潰れた車からみて乗用車とタクシーだと言う事が分かった。すでに警察も現場検証を始めていた。
「ん?」
 するとその時だ。
 俺は人込みでも目立つツインテールの女の子を発見した。間違いない美和さんだった。
「美和さん!」
 俺は美和さんの方へ近寄る、
「武様!」
 俺は美和さんの手を引いて野次馬から出ると彼女に尋ねた。
「どうしてここに?」
 すると美和さんは事故現場の方を見る、するとまた暗黒天帝が動き出したらしい、
「でも昼間は安全だって、」
「ええ、ですが今回はこの地に巣くう怨霊を利用してきたのです」
「怨霊?」
 何でもこの辺には様々な念を残して死んだ者達が成仏できずに様よっているというのだ、暗黒天帝はその霊達の怨霊を集合、そして自分の気と融合させて新たな鬼を造り出したのだと言う、
「つまり奴自身は強力な化け物を作れなくても人々の恨みや憎しみで強力な化け物を作り出せるって訳か……」
「はい、ですが今は気配が消えています」
「そう言えばここって……」
 加奈葉は昼間見た和輝の写真を思い出した。
 そう言えばここはあいつが写した心霊写真の現場からほんの50メートルほどしか離れていなかった。
「この交差点、昔事故とか流行ったよな……」
「うん、色々聞くけど、一番有名なのが20年前の事件ね」
「20年前?」
「私も弥生から聞いたからよく分からないけど、確か暴走族が事故にあったんだって」
 20年前にここで暴走族の頭が事故で命を失った。
 それ以来この辺りでは車とかオートバイが事故にあいやすいという事を美和さんに話した。
「武様、私と一緒に戦ってください」 
「ええっ、でも……」
 そう言えば今日はバイトがあったんだ。
 いきなり休むと言うのも……
「武様っ!」
 美和さんは目を吊り上げて怒り出した。
「酷いです、一緒に戦ってくれるって言ったじゃないですか!」
「そ、そりゃそうだけど、美和さんの生活費だって……」
「私の事など構いません、鬼をこのままほおって置いたら大変な事に……」
「いい加減にしなさいよ!」
 すると加奈葉が怒った。
「アンタねぇ、武が時間を割いて協力してあげてるってのに何よそのいい方は!」 
「そんな、私はただ……」