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陰陽戦記TAKERU 前編

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 下手したら戦国時代か江戸時代、はたまた恐竜時代に飛ばされる可能性もある。もしくはずっと先の未来とか……
 でもそれにしちゃあいつはまるでそんな事は見通してるような言い方だった。単なるハッタリかもしくは……
「武、今度は僕が聞いてもいいか?」
 学は俺の目を見てきた。
「何だ?」
「……本当に奴を倒すのか?」
「当たり前だろ、その為に行くんだからな」
「今のままじゃ勝てなくてもか?」
「どう言う意味だよ?」
 それは暗黒天帝には自分が解析した聖獣達のデータや火力発電所の怨霊を取り込み強力になった。
「推測だが麒麟が復活しても勝てる見込みは0に等しい、それでもやるのか?」
「何度も言わせんな!」
 俺は上手く言葉が出る方じゃ無い、
 それは一番俺が知ってる。だが俺はあえて言う、
「世の中にはな、理由なんかなくても戦わなきゃならない時があるんだよ。それが例え万に1つの勝ち目がなくてもな」
 正直な所は自分でも分からなかった。
 だけど美和さんや桐生さん、香穂ちゃんに拓朗や加奈葉に他の仲間の顔が浮かぶといても立ってもいられなくなる、勿論その中には学も入ってる。
「まぁ、何とかなるんじゃねぇのかな? 今までもそうだったしな」
 俺が休んでる美和さん達を見ると美和さん達も笑って頷いてくれた。
「まぁ、そう言う事だ。学、お前はここで加奈葉と一緒にいるんだ。そして暗黒天帝の事は忘れろ、いいな」
 俺が言うと学は顔を曇らせた。さてと、そろそろ良いだろう。
「みんな行こうぜ。最後の戦いにな!」
 すると皆立ち上がる、体力も法力も回復して準備は万全だ。
「じゃあ早速……」
「待ってくれ」
「何だ?」
 学が叫んだ。
 どうしても俺達に話したい事があると言う、それは暗黒天帝についてだった。
「……正直な所あまり自信がない、だけど暗黒天帝を倒す方法が一つだけある」
「ほ、本当か?」
「ああ」
 こりゃめっけもんだ。
 もしそれが本当ならありがたい。
「だけど本当に自信が無いんだ。それでもいいか?」
「それでもいい、教えてくれ」
 今の学には邪心が無い、今なら信じてもよさそうだ。
 学も頷くと口を開いた。
「暗黒天帝が集めた陰の気を吸収している時だ」
 暗黒天帝は鬼を使って入手、そして陰の気は自分が住み着いているパソコンに吸収されるのだが、その時に眉間に亀裂のような物が見えたと言う、
「眉間?」
「ああ、最初はタダの模様かと思った。けどよく見るとそれは何か刃物のような物で斬られた跡だった」
「そんな物無かったぞ。もう治ったんじゃないのか?」
「本当なんだよ、気になって一度聞いたんだけど、この傷は治りにくいって忌々しそうに話してた。しかも陰の気を吸収する間はずっと眉間に傷が現れていたんだ」
「あっ……」
 すると美和さんが言った。
 それは美和さんがまだ平安時代で暗黒天帝と戦っている時だった。
「暗黒天帝は前回の戦いで体を四つに切り裂かれました。その後精神だけの存在になったのですが、その時に暗黒天帝は眉間に鬼斬り丸で一太刀浴びせられました」
「美和さんがやったのか?」
「あ、いえ…… その」
 美和さんが口ごもると麒麟と朱雀が喋った。
『俺の前の契約者だ』
『そして、美和の想い人だった者……』
「あ」
 皆の表情が固まった。
 そう言えば忘れてた。美和さんには想ってる人がいたんだった…… ん? でも気になる事を言ったぞ、想い人『だった』?
『でも、その者は暗黒天帝の手にかかって、還らぬ人に……』
「……亡くなったの?」
 加奈葉が尋ねると美和さんは悲しそうに頷いた。
「もしかしたら、その人の攻撃がまだ生きてるのかもしれない」
「どう言う意味だよ?」
「つまり暗黒天帝に傷をつけた人の陽の気が何らかの理由で暗黒天帝に残っているんだ、それは確かだ……」
 分かりきった事だけど暗黒天帝の力の源は陰の気、攻撃を加えるには陽の気を用いた攻撃しかない、その攻撃がまだ生きてるならそこにもう一度攻撃を加えられれば……
「勝てる見込みがあるって言うのか?」
「その代りチャンスは一度だけだ」
「……分かった」
 俺は鬼斬り丸をベルトに差した。
 ちなみに折れた刀身は麒麟の宝玉の力で元通りに復元している。
「じゃあ行ってくるよ」
「みんな、気をつけてね」
 加奈葉が言うと俺達は頷いて手を繋いだ。
 そして左手で持っている麒麟の宝玉、美和さんが持っている朱雀の宝玉を交互に見る。
「2人供、頼むぜ」
『分かった』
『武、美和と始めて会った場所を思い浮かべて』
 俺は頷いて目を閉じるとその場所を心に思い浮かべた。
 そして俺達の周りを温かい光が包み込むとそこで一瞬意識が途切れた。

 気がつくと俺達は美和さんと始めて出会ったコンクリートの橋の上にいた。
 本当にワープできたんだと思った。 
「ここが君が美和さんと会った場所か?」
「ええ、そのはずです。暗黒天帝とは会いませんでしたけど……」
 それが心配だった。
 正直あの時俺は美和さんが怪我をしてたから慌てだったけど、空の裂け目はまだ開いてたかどうかは覚えて無い、一晩明けたら空は元通りだったけど……
「どうやら正解みたいですね……」
 美和さんが身を構える、
 すると目線の先にいたのはどす黒く揺らめく物、つまり暗黒天帝だった。今奴は空に浮かんでいる。
「暗黒天帝っ!」
 俺が叫ぶと奴は振り向いた。
『……わざわざ死ににきたのか?』
「それはこっちのセリフだ。テメェの悪事はこれまでだ!」
 俺が叫ぶと暗黒天帝は鼻で笑った。
『フン、もう遅いわ!』
 すると暗黒天帝が見下ろした先にはトラックがあった。
 橋を渡って200メートルはあるだろうそこの場所では数人の科学者風の男達がなにやら作業をしていた。
 中にはホームページで見た学の親父さんの姿もある。
『タイムマシンは完成した。後は起動させるだけだ』
 屋根が開いたトラックの荷台から巨大なレーザー砲みたいな物が頭を出して空に向けられていた。あれがタイムマシン?
『あれに今まで集めた陰の気と貴様達から得た聖獣の力を放って時空に裂け目をつくり我がそこに飛び込めば平安京に戻る事が出来るのだ!』
「そんな事させるか!」
「ここで私達が倒すっ!」
 拓朗も香穂ちゃんも前に出る、
『もう遅い、後は起動させるだけだ!』
 暗黒天帝の目が怪しく輝くと暗黒天帝から幾つもの黒い球体が飛び出した。
 最初はピンポン玉くらいの大きさだったがやがて人間大くらいに膨れ上がると粉々に砕け散った。
 そして中から鬼達が現れた。
「くっ」
 現れたのは額から一本の角が生えた箒を逆さまにしたような頭に赤い一つ目の人型の鬼だった。
 こいつら全員一式の鬼みたいだが数が問題だった。
『時間が来るまでそいつ等に相手をして貰え!』
 野郎は高みの見物か、だけど俺達が『はい、そうですか』なんて言うと思うか!
「どきやがれっ!」
 俺達は鬼達を攻撃して行った。
 しかし鬼達は攻撃を受けると2体に数を増やした。
「何だこいつら?」
「このっ!」
 拓朗も攻撃をすると鬼の上半身と下半身が千切れて破損した部分が再生、2体になってしまった。
「こいつら、攻撃すればするほど数が増えるんだ!」