こんにちは、エミィです
彼らとこの世界で巡り会う #2
2.
――と、思ったのですが……。
私は再び、広場に逆戻りしていました。
もちろん、一度は出て行きました。
出て行ったのですけれど、思いがけずすぐに突き当たったのです。曲がって曲がって曲がって曲がって曲がって曲がれば、もしかすると到着したかも知れませんけれど、この道は違うという予感と、戻れなくなる恐怖のほうが勝ちました。
公園に戻って、私は改めて周囲を見渡して、驚きました。
出口が沢山あるのです。
何も考えていませんでしたわ……。
カンカンがいれば、本当に簡単ですのに。
くじけそうです。
くじけたく、ないのですけれど。
カンカンは本当に戻らないかもしれません。私に愛想を尽かしたとか、そういった理由ならまだ可愛いものです。けれどももし、大変な事態に巻き込まれているとしたら……。
私は自分の考えに身ぶるいしました。
カンカンは、大きな魔力を感じ取って消えてしまった。
その身に何か、よろしくないことが降りかかっていなければ良いのですが……。
とても心配でなりません。
ネックレスを使えば良いのです。自力で出来ないときは、素直に何かに頼れば良いのです。何を、出し惜しみしているのかしら。
カバンからネックレスを取り出して、飾りを下へ垂らします。
息を潜めて、集中――。
(この紋章の場所へ――)
……。
……。
……。……。……。
どうしましょう、無反応ではないですか。本当に、頼るものが無くなってしまった。人に聞けば良いのでしょうか。でも、「南の出口」って、どう言えばいいのかしら? 気持ちが焦っているのを自覚します。たまらずに膝を抱え込みました。
帰りたい。
カンカンと一緒に帰らなくても、もう構わない。
この紋章のところに辿り着いたとして、そこに旦那さまがいるとも思えませんし。一度帰って、体制を立て直して来れば良いのです。占い師の方にもっときちんと占ってもらってから、出て来れば良いのです。
住むところをきちんと決めて、
お金の心配もしないようにして、
飴だって、たくさん持って。
そうすれば良いのです。
カンカンだって、占い師の方に頼めばすぐに見つけて貰えるでしょう。
どうして気付かなかったのかしら。
早く鏡のところへ行て、道が開く準備をしなくては。
そう思って顔を上げて、私は驚きました。
人だかりが出来ていたのです。
考え事をしていたので、すっかり周囲の音が耳に入っていませんでしたけれど、そう、彼らは口々に何かを言っていました。
アキさんに連れられて行った学校のときと同じ。
彼らは私を知っているようでした。
誰かが手を打ち始めます。
それはさざ波のように広がって、ばらばらだったのですけど、次第にまとまっていきました。
(あ……おばあさま……)
最前列に、あのおばあさまがいました。
お風呂で私に、また歌を聞かせてと言った、おばあさまが。
でも――
私はもう、こちらの言葉が分からないのです。
何を歌えば良いのでしょう。何も知らずに、するすると言葉が出て来たあのときとは違います。
私がじっとしていても、彼らは手を止めません。
あおるような声も聞こえます。
「エミィ!」
「エミィ――!」
何度も何度も、私の名を呼んで……。
どうしてそんなに名前を呼ぶのでしょう。
何も出来ない無力な小娘ですのに。
魔法も使えず、言葉も分からず、観光に来たのですよ、何の準備もせずに。
勝手に来て、道に迷って、泣いて……勝手に、帰りたがって。
でも……その手拍子が、とても暖かいものに聞こえました。まるで私の鼓動のように感じられました。勝手な解釈でしょうか。私の耳が、おかしいのでしょうか?
私は、立ち上がりました。
作品名:こんにちは、エミィです 作家名:damo