こんにちは、エミィです
彼らとこの世界で巡り会う #1
1.
あれから地図と睨めっこして歩き回ったのですけど、結局、印の場所を見つけることは出来ませんでした。
大きな通りに佇み、手に持った紙を見せながら道行く方々に話しかけている人をお見かけして、私も真似で道を伺おうとしたのですけど、なかなか話を聞いてもらえません。
話を聞いてもらえたとしても、地図がどこを示すものなのか、分からないようです。
道に詳しい人……と言えば、警察の方ですけれど。
警察の方は、もうコリゴリ、なのですわ。
そうやって半日を潰し、また路上で眠って――今度はカバンがあるので、ずいぶん気持ちが楽でした――また朝から、歩いています。
どなたか知り合いを見つけることが出来たら良いのですけれど。
あの短いトンネルにも、未逆さまらいらっしゃる公園も、私は自力で辿り着くことが出来ませんでした。
ネックレスを使ったら……
そんな誘惑が働いて、けれども首を横に振って払います。
自分でなんとかするって決めたのですから!
地図を、よくよく見てみます。
現在地すら分からないのですけれど、地図の中には私が知っている目印がいくつかありました。学校、病院、警察、広場。全て、私の世界の地図記号です。
これを送って下さったのは、私の世界をご存じの方なのかしら。
それとも、私の世界から送られたものなのかしら。
色々と想像は広がりますが、どれも不確かなことには違いありません。
言葉が出来なくとも、買い物は何とかなりました。
すでに方法を知っていた、ということが大きいかもしれませんね。コンビニは色んなところにありますし、自分で品物を選んでお店の人に渡すだけですから、簡単です。公衆おトイレもそこでお借り出来ます。
(あら、これってもしかして?)
先ほど買ったパンを食べながら、地図を眺めていると、私はあることに気付きました。
先日、アキさんに連れて行って貰った公衆お風呂。あそこで見かけたマークが、そこにあったのです。
あの通りなら覚えています。
とても広く、大きかったので。
パンを食べて、私はそこへと向かいました。
あった、広い道。
ここを奥へ入ると、そう、アキさんと出会った公園があって、こちらに進むとお酒が沢山置いてあるお店にたどり着けます。
な〜んだ、簡単ですわ。
見慣れない記号だったから、見逃していたのですね。
お金が無くなる前に気付けて良かった。
私はうきうきとした気持ちで公衆お風呂の建物を探しました。
けれども、探しても、探しても、ありません。
同じところを行ったり来たり。
一軒一軒、じっくりと観察しましたが、やはり違います。おかしいですわ、確かにここだと思いましたのに……。
もしかして、通りを一本間違えたのでしょうか?
細い路地に足を踏み込みます。
途中で違うような気がしたのですけれど、どちらにせよ、あの通りは違うのですから、新しい場所へ行ったほうがいいに決まっています。
そうして抜けた場所は、大きな広場でした。奥まっていて、たくさんの人が、思い思いに過ごしています。
身覚えのある光景。
ここは、私が警察の方の目を盗んで、歌っていた場所ではありませんか!
そう、この、四人掛けの椅子。
ここでいっくんに、うぉーくまんの音楽を聞かせて頂いたのです。
そう、あの、大きな木。
あの下で、私は歌ったのですわ。
たった二日来ていなかっただけですのに、なんだかとても懐かしく思えます。
私は地図を取り出しました。
現在地が分かれば、きっと、地図だって分かります。
地図の中に、広場は4つ、ありました。
中でもひときわ大きい広場が、きっとここですわ。でしたらもしかして、こちらの広場は未逆さまがいらっしゃったところかしら。だとすれば、あまり遠くないではありませんか。家の紋章は、ここから南に行って、突き当って、曲がって曲がって曲がって曲がって曲がって曲がったところにあります。
私は出口を探して出て行きました。
なんだ、簡単。とっても簡単ですわ!
作品名:こんにちは、エミィです 作家名:damo