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こんにちは、エミィです

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目配せのガールズトーク #1


1.

 連れて行かれた場所は、沢山お酒が並んだ場所でした。

 女性は常連なのでしょうか、とても気安くお店の方と話して、奥のテーブルに座ります。私も促されるままに彼女の前に座りました。飲み物が運ばれて来て、一口だけ飲みました。

 彼女は辛抱強く私の言葉に耳を傾けて下さいました。
 と言っても、理解しているふうではありません。けれどもその中で、私が今、こちらの言葉がまったく分からない状況であることを、察してくださったようです。

 それから名前を交換しました。

 アキ、と、その方はいいました。もっと長い名前だったのですが、その部分を繰り返されたので、そう呼べということなのでしょう。私もエミィと呼んでもらうことになりました。

「エミィ」

「アキ」

 名前を何度も確認し合って、私たちは、今度は微笑みを交わしました。

 それからアルコールをまた少し飲んで、私はやっと、リラックスした気分になって来たのです。

 お風呂に行く前とは打って変わって、声での会話はほとんど消えました。代わりにお店の方に頼んで、ペンと紙を用意してもらい、絵を描いて色々と意思表示をしました。
 私は絵が下手なので、あまり複雑な話は出来ませんけれど、とても静かで楽しい時間でした。

 アキさんは数字を羅列して――カレンダーの配列だと分かるのに、少しかかりました――明日は時間があるというようなことを教えてくれました。買い物に行こう、と誘ってくれているようなので、頷いて、了解しました。

 他にも「良い」と言いたいときは拳を作って親指を立てること、背が高いから服が無くて困ってること、店を出て、一晩中開いていて、食事が出来るところを教えてもらいました。

 そして手を振って、別れました。

 大きな背中を見送りながら、私はどこかほっとした気持ちになりました。
 もしも朝まで付き合ってくれるようなら、それこそ疑わなければいけなくなってしまう。親切を疑うなど大変心苦しいのですが、あまりに過度なものは、疑わなくてはなりません。

 一晩中開いているお店には、入りませんでした。
 最初の夜と同じ。適当な壁――どうして近くに壁がないと、落ち着けないのでしょう――の近くに腰を下ろし、一晩を明かすことにします。

 もちろん、身の危険を案じればお店に入るほうが得策でしょう。
 けれどもそれでは、カンカンが私を見つけられないかもしれません。それだけは、どうしても避けなければ。

 堅い壁に身体を預けて、次に目が覚めたのは、朝でした。
 アルコールのせいでしょうか、すぐに眠ってしまったようです。

 カンカンが戻って来た気配はありません。
 私は立ち上がって、歩き出しました。
 コンビニがあったので入って、パンを購入して食べました。
 公衆おトイレに入って、用を足しました。

 そしてアキさんと待ち合わせの場所へ向かいました。昨晩からあまり動いていないので、場所はすぐに分かりました。
 アキさんが私を見つけてくれて、合流しました。

 しばらくお店を回ってお洋服を見て周って、アキさんは不思議な形をしたお洋服を、私は帽子を買いました。
 こちらの日差しは本当に強くて、実は少々参っていたのです。
 けれどもどこで買えばいいか分からなかったのですけれど、その日、アキさんと一緒にいて、色々な所を見て、色々なことを教えて頂きました。

 少し落ち込んでいましたけれど……。
 もちろん、近い未来が分からないことに対する不安はまだまだあります。でも、楽しい。私、まともに話せないけれど、アキさんと一緒にいて、とても楽しかったのです。


作品名:こんにちは、エミィです 作家名:damo