PLASTIC FISH
09.星空は見えず(7/15)
「――――」
めくって、凍りついた。
数ミリの狂いもない、見事に貼られた写真たち。数年前どころか、これは十年経っていてもおかしくないのではないだろうか。
全てが。
その、全てに、イヴの顔をした誰かがいた。しかし、京を凍りつかせた理由は他にある。
「い……ッ!?」
それは、塗りつぶされている。子どものいたずらのようで、しかしそれにしては悪意を持って、相手を消したいという殺気をも抱いて。
イヴに似た誰かと、樹以外の顔が、全て油性らしきペンで真っ黒に塗りつぶされている。丁寧に塗られている時もあれば、走り書きのように汚いものもあった。
怒りに任せて、憎しみから出でた呪いをふりまくかのように。
アルバムの中に広がる箱庭世界は二人きりだった。
二人以外、誰もいらなかったのだ。
目をそらしてもなお続く、昨晩のフラッシュバック。
樹が見せた、人間としての狂気の片鱗。
耳を塞ぎ、感覚全てを遮断しようとした京。だが、皮肉にもそれを行ったせいで相手に先の一手を許すことになる。
鍵の回される音のあとに、ばたりと玄関が開いて――そして、閉じた。改めて内側から施錠される音を、京は聞けたのかどうか――。
作品名:PLASTIC FISH 作家名:桜沢 小鈴